ブラックホールの撮影に初成功 世界の8望遠鏡が連携

パラブ・ゴーシュ、BBCニュース科学担当編集委員

Black hole Image copyright EHT
Image caption 初めて撮影されたブラックホール。非常に明るい「炎の輪」があり、その内側に真っ黒のきれいな円形の穴が見られる

天文学者たちのチームが「ブラックホール」の撮影に初めて成功した。このブラックホールは、地球のはるかかなたの銀河に位置する。

撮影したブラックホールは直径約400億キロメートル。地球の直径の約300万倍という巨大さで、科学者たちからは「モンスター」と呼ばれている。

地球からは約5億キロメートル離れている。世界の8つの望遠鏡が連携し、撮影に成功した。

詳細は、10日発行の米専門誌アストロフィジカル・ジャーナル・レターズに掲載された。

撮影は、「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」と名付けられた、8つの望遠鏡の連携によって実現した。

今回の撮影を提案したオランダ・ラドバウド大学のハイノ・ファルケ教授はBBCに、ブラックホールはM87と名付けられた銀河で発見されたと述べた。

「大きさは太陽系全体を上回る」とファルケ教授は話す。

「重力は太陽の65億倍あり、存在すると思われるブラックホールの中でも最も重い部類だ。まさにモンスターで、全宇宙のブラックホールのヘヴィーウェイト級チャンピオンだ」

撮影された画像は、非常に明るい「炎の輪」があり、その内側に真っ黒のきれいな円形の穴が見られる。光の輪は超高温のガスがブラックホールに吸い込まれるときに現れる。光の明るさは、この銀河に何十億とあるすべての星の明るさを合わせたものよりさらに明るい。そのため、遠く離れた地球からも確認が可能だという。

黒い円の端が、ガスがブラックホールに吸い込まれる場所だ。ブラックホールは重力が極めて強く、すべての物質を吸い込み、光すら外に出ることはできない。

Image copyright DR JEAN LORRE/SCIENCE PHOTO LIBRARY
Image caption M87銀河の中央部には超巨大なブラックホールがあると天文学者たちは考えている(画像は見やすいように着色してある)。中心の暗い部分はブラックホールではなく、星が凝縮され早い速度で動いていることを示している

今回の画像は、理論天文学者やハリウッドの監督たちのブラックホールのイメージと一致すると、EHTのメンバーであるユニヴァーシティ・コレッジ・ロンドン(UCL)のジリ・ユンシ博士は話す。

「ブラックホールは比較的シンプルだが、空間や時間、究極的には私たちの存在とは何かという最も複雑な問いかけをするものだ」とユンシ博士は言う。

「驚いたことに、私たちが目にしている画像は、理論上の計算で導き出したものとそっくりだ。これまでのところ、アインシュタインはまた正しかったようだ」

撮影に初めて成功したことで、ブラックホールの研究がさらに進む可能性がある。物理学で説明できない部分をどう考えたらいいのか。周囲の光の輪はどのように生まれるのかは誰にも分かっていない。さらに興味深い問いは、吸い込まれた物質はどうなるのかということだ。

ブラックホールとは?

  • 光を含むすべての物質が脱出できない空間
  • 名前と異なり、空間には何もないわけではなく、狭い場所に莫大な量の物質が極めて高密度で詰まっていて、非常に大きな重力で物質を吸い込む
  • 「事象の地平線」と呼ばれる境界があり、そこを越えると重力の影響でどんな物質も脱出できなくなる

ファルケ教授は博士課程の学生だった1993年に今回のプロジェクトを思いついたが、当時は誰も実現可能だとは思わなかった。だが教授は、ブラックホールの周囲である種の電波が生じている可能性を発見。それを地球上の望遠鏡で捕らえられるのではないかと考えた。

また、1973年に読んだ科学論文に、ブラックホールは重力が極めて大きいため実際の大きさより2.5倍大きく見えると記されていたことも頭にあったという。

これら2つの要素が合わさり、不可能が可能に近づいた。ファルケ教授が20年間アピールし続けた結果、欧州研究会議が今回のプロジェクト資金を拠出。アメリカの国立科学財団と東アジアの複数の機関もプロジェクトの支援に乗り出し、総額4000万ポンド(約58億円)を超す資金が集まった。

Image caption 8つの望遠鏡が連携した「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」

各機関の投資は、今回の画像の公表により報われた。ファルケ教授は現在の気持ちを、「ミッション完了だ」と表現した。

「長い旅路だったが、これこそ自分の目で見たかったものだ。これが本当なのか、知りたかったんだ」

今回のブラックホールの撮影は、望遠鏡1つでは無理だ。そこで、ハーヴァード・スミスソニアン天体物理学センターのシェパード・ドールマン教授は、世界の8つの電波望遠鏡を連携させる過去最大規模のプロジェクトを開始。地球サイズの望遠鏡EHTを作り出した。

Image copyright Katie Bouman
Image caption 観測データはあまりに大量でインターネットで送信ができないため、何百ものハードディスクに保存され、処理センターへと運ばれた
Image copyright Jason Gallicchio

今回使用した望遠鏡は、ハワイやメキシコの火山の上や、米アリゾナ州、スペインのシエラネバダ山脈、チリのアタカマ砂漠、南極に設置されているもの。

さまざまな国の天文学者たち約200人が1つのチームとなり、望遠鏡をM87銀河に向けて10日間観測した。観測データはあまりに量が大きく、インターネットで送ることができないため、何百ものハードディスクに保存して米ボストンとドイツ・ボンの処理センターに集約した。

ドールマン教授はこの取り組みを「並外れた科学的偉業」と表現。「わずか1世代前までは不可能と思われていたことを実現させた」と述べ、こう続けた。

「テクノロジーの飛躍、世界で最高の電波観測所の連携、画期的な計算方法がそろったことで、ブラックホールに向けた全く新しい窓が開いた」

今回のチームは、私たちの天の川銀河の中心部にある超巨大なブラックホールの撮影にも取り組んでいる。

奇妙に聞こるかもしれないが、これは5500万光年離れた銀河を撮影するよりも難しい。何らかの理由により、天の川銀河のブラックホールは「炎の輪」が小さく、暗めだからだ。

(英語記事 First ever black hole image released

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