金正恩氏、プーチン氏と初会談へ 近くロシアを訪問

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ともに「タフガイ」のイメージを打ち出している金正恩氏(左)とウラジーミル・プーチン氏

北朝鮮の国営メディアは23日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が近くロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン大統領との初会談に臨むと伝えた。

朝鮮中央通信は、日程などの詳細は報じていない。一方、ロシア政府は首脳会談について「4月の第2週に」開かれると明らかにしている。会談場所として、ウラジオストックの名前が取りざたされている。

両国の首脳が会談するのは、2011年にロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領と、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)朝鮮労働党総書記が会談して以来、8年ぶり。

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冷戦時代、北朝鮮とロシアは軍事同盟を結んでいた

2月にヴェトナムで開かれた金正恩氏とアメリカのドナルド・トランプ大統領の首脳会談は物別れに終わっており、北朝鮮がかつての同盟国ロシアとの首脳会談をもつことは、北朝鮮にとって大きな意味があるとみられている。

北朝鮮が欲しいのは?

北朝鮮にとってロシアとの首脳会談は、アメリカ主導の経済制裁に苦しむ中で、北朝鮮が国際的に孤立していないことを示す機会となる。

「世界の主要国がまだ北朝鮮を支えていると示すことができれば、北朝鮮はアメリカやカナダとの交渉で譲歩を迫ることができる」と、オーストラリア・カーティン大学のアレクセイ・ムラヴィエフ准教授は話す。

ムラヴィエフ氏は、「金氏は北朝鮮の経済、および自らの政治権力にとって大きな意味をもつ外交交渉が非常にうまい」と述べる。

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2月の米朝首脳会談は物別れに終わった

ロシアは何を求める?

プーチン氏はずっと、金氏との会談を望んでいたとされる。2月の米朝会談が実を結ばなかったことで、プーチン氏はロシアが再び、北朝鮮に対して影響ある立場につくことを狙っているとみられる。

ロシアもアメリカや中国と同様、北朝鮮の核保有は望ましくないと考えているとされる。しかし、核放棄を求めるアメリカと違い、ロシアは現状維持がよいとの方針だ。ただし、状況安定のための対話を求めており、今回の首脳会談はそのチャンネルを整備するのに役立つとみられる。

北朝鮮と会談することで、北朝鮮への影響力を世界に誇示し、ロシアの威信と評価を高める狙いもあると考えられる。

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ロシアは北朝鮮が核放棄をする可能性は低いとみているとされる

どんな成果が予想される?

ロシアと北朝鮮の首脳会談が、大きな合意や取り引きに結実すると見る向きは少ない。北朝鮮は何より経済支援と経済制裁の緩和を望んでいるが、ロシアからそうした成果を得られる可能性は小さい。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議には、ロシアも従わないとならないからだ。

韓国・国民大学校のアンドレイ・ランコフ教授は、「せいぜい象徴的な支援の約束が結ばれる程度ではないか」とみている。

「(北朝鮮の)経済状況はおもわしくなく、政府は通常の貿易復活のために、制裁緩和をなんとしても確保したい」、「さらに、援助の形で自由に使える資金もほしがっている」とランコフ教授は言う。

しかし、ロシア政府は北朝鮮を信頼できない、思うとおりにできない国とみなしており、北朝鮮に資金をつぎ込むつもりはないと教授は話す。一方で、北朝鮮が何より必要としているのは、資金だ。

経済的なつながりで言うと、ロシアは国連安保理決議に違反するつもりはないので、「ささいな制裁違反にロシアとして目をつぶるというのがせいぜいだろう」とランコフ教授はみている。

北朝鮮の明確な制裁違反をロシア政府が容認したとみられるのは、ロシアにとって見返りは少なく不利なだけだと教授は言う。ロシアにとって北朝鮮は有意義な輸出市場ではないし、北朝鮮にはロシアに有益な主要輸出品がないからだ。

「ロシア自身が国際社会の制裁に苦しんでいる今、非常に信頼できないと思われている国に、ロシア政府として金をつぎ込むことには慎重になっている」とランコフ教授は言う。

そのため、ロシアもまた他の国々と同じように、緊張関係の悪化を控えるよう警告するだけに終わるかもしれない。金委員長としては、プーチン氏と会うことで対米交渉で有利になることを期待するだろうが。