性暴力を非難する国連決議、米トランプ政権が中身薄める

Jonathan Cohen, acting U.S. Ambassador to the United Nations, attends a United Nations Security Council meeting at U.N. headquarters, 23 April 2019 in New York City Image copyright Getty Images
Image caption 23日の国連安全保障理事会に出席したアメリカのジョナサン・コーエン国連大使代行

妊娠中絶への反対姿勢を示している米トランプ政権の影響が、国連決議に及んでいる。戦時下における性暴力の絶滅を目指す安全保障理事会決議が23日、内容を薄められて可決された。

この決議は、戦時下でレイプが武器となっていることを非難するとともに、紛争地域における性暴力問題への取り組みが進んでいない状況について、安保理として懸念を示す内容。ドイツが提出した。

当初の決議案では、戦争で性暴力を受けた女性たちが提供されるべき医療サービスとして、「性と生殖に関わるもの、心理社会的なもの、法的なもの、そして生活支援に関するもの」となっていた。

「妊娠中絶を暗示している」

しかしこれは後に、「性暴力を生き延びた人たちを速やかに支援することが重要であり、安保理決議2106に沿って、国連の関連組織や支援者たちに、差別のない包括的な医療サービスを提供するよう求める」に変更された。そして最終的には、この部分が丸ごと決議案から削除された。

これは米政府の意見を取り込んだためで、トランプ政権は「性と生殖に関わる医療」が妊娠中絶を暗示していると、この表現に反対していた。

アメリカ、中国、ロシアが反対

国連安保理事会では、早期の決議案にアメリカと中国、ロシアが反対。拒否権の行使もちらつかせた。最終的に、修正された決議案が賛成13、反対ゼロで可決された(中国とロシアは棄権)。

フランスのフランソワ・ドラトル国連大使は、性に関する医療についての文言が消されたのは女性の尊厳を損なうものだとして怒りをあらわにし、こう述べた。

「紛争において性暴力を受け、明らかに妊娠を望んだわけではない女性や少女は、妊娠を終わらせる権利を持つべきだ。安保理がそのように認められないなど、まったく容認できないし、理解できない」

ノーベル平和賞受賞者たちも支持したが

決議案の草案に対しては、幅広い層から支持する声が出ていた。

人権弁護士のアマル・クルーニー氏は23日の安保理事会に出席。「これが皆さんのニュルンベルク裁判(ナチス・ドイツによる戦争犯罪を裁いた国際軍事裁判)の瞬間だ」、「歴史において正しい側に立つ機会だ」と訴え、理事国に賛成票を投じるよう求めていた。

2018年にノーベル平和賞を受けたコンゴの産婦人科医デニ・ムクウェゲ医師と、イスラム国(IS)兵士たちに強姦されたイラクのヤジディ教徒ナディア・ムラド氏も、安保理に出席し、決議案への支持を表明していた。

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Image caption コンゴの産婦人科医デニ・ムクウェゲ医師(右)と、イラクのヤジディ教徒ナディア・ムラド氏

さらに、ドイツのハイコ・マース外相と米女優・活動家のアンジェリーナ・ジョリー氏は連名で、4月22日付の米紙ワシントン・ポストに、決議を支持する意見記事を寄稿していた。

イギリスの最大野党・労働党のエミリー・ソーンベリー影の外相は、「戦争でレイプを武器とすることに反対する国連決議に対し、ドナルド・トランプ米大統領が拒否権を発動すると脅したのと同じ日に、トランプ氏をイギリスに迎えて賞賛する計画をテリーザ・メイ英首相が進めているのは信じられない」と批判した。

(英語記事 US dilutes UN rape-in-conflict resolution

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