米上院、ムラー捜査報告書めぐり司法長官を追及 ムラー氏も批判的書簡

Attorney General William Barr Image copyright Getty Images
Image caption 米上院司法委員会の公聴会に出席したバー司法長官(1日、ワシントン)

2016年米大統領選でのロシア介入疑惑などについて捜査したロバート・ムラー特別検察官の報告書をめぐり、ウィリアム・バー司法長官が1日、米連邦議会上院で厳しく追及された。バー長官による捜査報告書の扱いについては、ムラー特別検察官自身が批判的書簡を送っていたことが明らかになり、連邦下院も司法長官の証言を求めているが、長官は証言を拒否した。このため、司法長官が議会侮辱罪に問われる可能性が出てきた。

バー司法長官による捜査報告書の発表内容について、ムラー特別検察官が3月末の時点で、司法長官が議会に報告し公表した内容が、自分たちの捜査内容と結論を「十分に伝えていない」ことや、そのせいで「捜査の重要な部分について今では、世間が混乱している」と指摘する、きわめて異例の手紙を司法長官に送っていたことが、下院司法委員会の民主党議員団によって1日に明らかになった。

その上でバー長官は同日、与党・共和党が多数の上院司法委員会で公聴会に出席し、自分の対応の正当性を強調した。一方で、野党・民主党の委員たちは、長官が捜査結果を曲げて大統領を守ったと非難。司法長官が「議会にうそをついた」と、辞任を求める声も出た。

民主党が多数を占める連邦下院の司法委員会は2日の公聴会に、バー長官の出席と証言を求めていたが、長官は出席を拒否した。同委員会はさらに、黒塗りのないムラー捜査報告書の全文提出と、捜査資料の提出を司法省に求めていたが、司法省はこれに応じない姿勢を示した。

下院司法委のジェロルド・ナドラー委員長(民主党)は、バー長官が公聴会証言を拒否したのは、「これまであまりにうそをつき続けてきた」ので、宣誓証言するのが怖いからだろうと非難。「もし自ら出席しないなら、召喚する予定だ。逃げることはできるが、隠れられはしない」、「司法長官は一晩かけて再考し、明日は出席することを期待するし、そうなると思う」と述べた。

一方で、ムラー特別検察官は今月後半にも議会証言する見通し。

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なぜバー司法長官が批判されているのか

ムラー特別検察官は、2016年大統領選でトランプ陣営がロシア当局と結託した疑いや、ドナルド・トランプ大統領が捜査を妨害したかについて2年近くにわたって捜査した。その結果、「ロシア政府とトランプ陣営に関係する複数の個人との間に複数のつながりがあることが捜査によって特定されたが、刑事訴追の根拠として十分な証拠ではなかった」、「ロシアの選挙介入行動において、トランプ陣営の関係者がロシア政府と共謀もしくは連携したという事実を確定しなかった」と結論する一方で、大統領による司法妨害については、「大統領の行動と意図について得た証拠から我々は、犯罪行為はなかったと決定的に断定することができない」と判断を保留した。

その上でムラー氏は、現職大統領を起訴することはできないという司法省方針を認めた上で、三権分立の原則に則り連邦議会が大統領を捜査し、場合によっては弾劾することは可能だと報告書で指摘した。

これに対して、トランプ氏に指名され着任したバー司法長官は今年3月に報告書の要旨を議会に報告した際、「特別検察官の捜査で得られた証拠は、大統領が司法妨害の罪を犯したと断定するには不十分だと結論」したと発表。さらに、4月18日にも記者会見で、ロシアによる選挙介入はあったもののトランプ陣営との結託を裏づける証拠はなく、司法妨害についてムラー検察官は判断を避けたものの、自分が司法長官として訴追に相当しないと判断したと説明した。

一方で、その直後に司法省が発表した実際の報告書全文(一部の内容を黒塗り)では、トランプ氏がムラー氏の捜査が自分の大統領政権に壊滅的な打撃を与えると恐れ、ムラー検察官の解任を命令するなど、ロシア疑惑捜査に繰り返し介入しようとした様子が書かれていた。

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このため、1日の上院司法委では複数の民主党委員が次々とバー長官を強く非難したが、長官は、トランプ氏が違法に捜査を妨害しようとした事実はないという自分の判断に「絶対的」な自信を抱いていると証言した。

長官はさらに、大統領の司法妨害についてムラー検察官が結論を下さなかったことは「正直言って意外だった」と司法委に述べ、「従来の検察判断をするべきでないと(ムラー氏が)思ったなら、そもそも捜査すべきではなかったと思う」と発言した。

ムラー検察官は司法長官の要約に不満

上院司法委員会に先立ち、下院司法委員会の民主党議員たちが公表したムラー特別検察官の書簡は、バー司法長官への不満をあらわにした異例の内容だった。

バー長官が3月24日に、ムラー捜査報告書の要旨を発表した3日後の日付で、自分たちが用意した捜査要旨を長官が公表せず、それとは別に長官が議会に報告し公表した内容は、自分たちの捜査の「文脈、性質、内容を十全に捉えたものではない」と指摘した。ムラー氏はその上で、長官の説明によって「我々の捜査の重要な側面について世間が混乱している」と書いた。

これについて上院司法委で問われたバー長官は、「私が議会にあてた書簡で、捜査内容を正確に書いたかどうかを(ムラー氏は)懸念しているのではないと、私は理解している。(ムラー氏は)自分の論理展開となぜ司法妨害について結論に至らなかったかを説明するため、もっと追加材料を公表して欲しかったのだと思う」と答えた。

バー長官は、ムラー特別検察官のこうした抗議は、報告書そのものの公表で無効になったはずだと主張し、自分の要約内容について議論が噴出したことや、議会公聴会が開催されている事態は「まったく信じられない奇妙な展開だ」と述べた。

「私は当初から、報告書をできる限り公表すると明確にしたし、それには3週間かもしくは4週間かかるというのは明らかだった」と、バー長官は自分の対応を弁護した。

(英語記事 Attorney General refuses House testimony on Mueller report

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