ペロシ米下院議長、司法長官が議会に偽証したと非難 ムラー報告書めぐり

Attorney General William Barr and US Speaker Nancy Pelosi Image copyright EPA/Reuters
Image caption ペロシ米下院議長(右)は、バー司法長官(左)が議会に偽証したと非難した

米野党・民主党幹部のナンシー・ペロシ米下院議長は2日、ウィリアム・バー司法長官について「連邦議会に偽証した。ほかの誰かがそのようなことをしたら、犯罪とみなされる」と非難した。司法省や与党・共和党は強く反発している。

バー司法長官は1日、2016年米大統領選でのロシア介入疑惑などについて捜査したロバート・ムラー特別検察官の報告書をめぐり、上院司法委員会の公聴会に出席した。公聴会では、ドナルド・トランプ大統領による司法妨害はなかったと判断したことや、ムラー氏が長官に批判的な書簡を送っていたことについて、民主党に厳しく追及された。2日の下院司法委員会の公聴会への出席を拒否した。連邦議会の上院は与党・共和党が多数党だが、下院は民主党が多数を占める。

下院司法委での証言を拒否したことから、バー長官は議会侮辱罪に問われる可能性が出てきた。

こうした状況でペロシ議長は2日午前に記者会見し、バー長官について「連邦議会に偽証した。ほかの誰かがそのようなことをしたら、犯罪とみなされる」と非難。さらに、「法の上に立つ者などいない」と苦言した。

ペロシ議長はさらに、「誰だろうと法の上に立つ者はいない。ましてや、司法長官ならばなおさらだ。バー司法長官が連邦議会にうそをついたのは、きわめて深刻だ」とツイートした。

民主党の追及

ムラー特別検察官の捜査報告を受けて、バー長官はトランプ大統領による司法妨害はなかったと結論した。しかし、ムラー特別検察官は「犯罪行為はなかったと決定的に断定することができない」と判断を保留し、議会の判断にゆだねていた。さらにムラー氏は3月末、司法長官が議会に報告し公表した内容が、自分たちの捜査内容と結論を「十分に伝えていない」ことや、そのせいで「捜査の重要な部分について今では、世間が混乱している」と指摘する、きわめて異例の手紙を司法長官に送っていた

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
60秒でわかるムラー報告書 時間のないあなたが知っておくべきこと

特別検察官の批判的手紙について1日の上院司法委で民主党から追及されると、バー長官はムラー氏が不満を抱いたのは自分の結論ではなく、マスコミ報道の混乱を正すために追加資料の公表を求めたまでで、それは4月に全文を公表したことで対応済みだと主張した。長官はさらに、トランプ氏が違法に捜査を妨害しようとした事実はないという自分の判断に「絶対的」な自信を抱いていると証言した。

こうしたバー長官の発言に民主党は強く反発し、一部議員は辞任を求めている。検事出身のカマラ・ハリス上院議員がバー長官を追及する様子のビデオは、ネット上で400万回以上再生された。

ペロシ議長は記者団に、「細かい技術的な問題の指摘ではなかった」と述べ、「アメリカ合衆国の司法長官が、アメリカ合衆国の連邦議会に真実を語らなかった。それは犯罪だ」と非難した。

ハリス上院議員をはじめ、2020年大統領選に民主党から出馬を表明しているジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン上院議員、キルステン・ジリブランド上院議員、ベト・オローク前下院議員など、多くの民主党関係者がバー長官の辞任を求めている。

下院司法委員会のジェロルド・ナドラー委員長(民主党)は、バー長官が下院司法委に出席せず、黒塗りのないムラー捜査報告書も委員会の要求どおりに提出しなかったことを受け、議会侮辱罪の適用を検討する方針を示した。

2日の下院司法委ではさらに、民主党のスティーヴ・コーエン下院議員がわざわざ、バーレル入りのフライドチキンを持ち込み委員会室内で食べた上、バー長官が座るはずだった空席にチキンのフィギュアを置いて、笑いを誘った。英語の俗語表現で「チキン」は「臆病者」を意味する。

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
特別検察官、トランプ氏を司法妨害で訴追せず 理由は

司法省は反論

これに対して、司法省のケリー・クーペック報道官は「司法長官に対する根拠のない攻撃は無謀で無責任で間違っている」と反論した。

共和党からも反発が相次ぎ、リンジー・グレアム上院司法委委員長は、ペロシ議長は「不快な発言」を謝罪すべきだと批判した。

「ビル(ウィリアム)・バーの人となりを表すというよりむしろ、彼女の人となりを表す発言だ」とグレアム氏は述べた。

<解説> 民主党は司法長官を処罰できるのか――アンソニー・ザーカー北米担当記者

ペロシ下院議長は、バー司法長官の行為は犯罪にあたると非難した。

民主党はどうするつもりなのだろう。ペロシ氏は「手続き」というあいまいな表現しか使わなかったが、司法長官を罰するつもりなら民主党にはいくつかの選択肢がある。

連邦議会に偽証する犯罪行為があったと、バー長官が率いる司法省に刑事告発することができる。

あるいは、バー長官を議会偽証罪で司法省に告発することもできる。

下院はバー長官に対する問責決議を採決することもできる。民主党が多数を占める下院で問責決議が可決されれば、バー長官の経歴にとってマイナスにはなるが、それ以上の意味合いはない。

さもなければ、民主党は司法長官の罷免を求めて弾劾手続きを発動することもできる。この手続きは大統領に対する弾劾手続きと似て、弾劾決議を下院が過半数で可決した場合、上院が弾劾裁判で審理し、出席議員の3分の2以上が有罪に賛成すれば罷免される。

過去に弾劾手続きの対象となった米閣僚は、ユリシス・グラント政権のウィリアム・ベルクナップ戦争長官のみだが、1876年に収賄罪で弾劾裁判にかけられ辞任したものの、上院は有罪を認めなかった。

(英語記事 Speaker Nancy Pelosi accuses Attorney General Barr of lying to Congress

関連トピックス

この話題についてさらに読む