司法長官を「議会侮辱罪」で訴追すべき 米下院司法委が決議

Attorney General William Barr Image copyright Getty Images
Image caption ウィリアム・バー米司法長官

米連邦議会の下院司法委員会は8日、ウィリアム・バー司法長官を議会侮辱罪で訴追すべきとの決議案を賛成24票、反対16票で可決した。今後、本会議で採決される。

決議案は民主党議員が提出。2016年米大統領選のロシア介入疑惑解明にあたり、バー氏が下院決議に背いて、ロバート・ムラー特別検察官の報告書をそのまま公開しなかったことが、議会に対する侮辱に当たるとしている。

下院は3月、報告書の全文公開を求める決議を全会一致で可決していた。

報告書を黒塗りで公開

全448ページの報告書は先月、部分的に黒塗りされて公開された。黒塗り部分は、機密事項や捜査継続中の内容などと説明されている。

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60秒でわかるムラー報告書 時間のないあなたが知っておくべきこと

下院は民主党が多数を占めており、決議案が本会議で可決されれば司法省に送られる。しかし、同省が実際に長官を訴追する可能性は低く、この日の決議案可決は、下院としての意思を示す象徴的な意味合いが大きい。

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司法長官を議会侮辱罪に問う動きは、オバマ政権でエリック・ホルダー司法長官が問われた2012年以来。

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Image caption トランプ政権は議事妨害をしていると批判している米下院司法委員会のジェロルド・ナドラー委員長(民主党)

大統領権限で全文公開を阻止

ムラー氏の報告書は、大統領選でロシアとトランプ氏側との間に、犯罪に該当する謀略があったとは結論づけていないが、トランプ氏が検察の捜査を妨害した疑いのある10の事例を挙げている。

全文公開を求める下院決議を受けてバー氏は、黒塗りのない報告書が公開されないよう、ドナルド・トランプ大統領に大統領権限の行使を正式に要請していた。

トランプ氏はこの日、全文公開を阻止するために大統領権限を行使する考えを示した。政権の意思決定に関わる機密情報の流出防止を目的とする場合は、大統領権限を行使できる。

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特別検察官、トランプ氏を司法妨害で訴追せず 理由は

民主党が報告書の全文公開を求めるのは、トランプ氏の司法妨害の疑いを調査する上で必要との理由からだ。

下院司法委員会のジェロルド・ナドラー委員長(民主党)は、この日の採決後、「重大で大切な一歩」だと記者団に述べた。

ナドラー氏はまた、トランプ政権が全文公開を拒んでいることに対して、「この国の民主主義の真髄に対する攻撃だ」と批判。「我々は長い間、憲政の危機が迫っていると話してきたが、今まさにその危機の渦中にある」と話した。

一方、ダグ・コリンズ筆頭委員(共和党)は、民主党について、「立法上の有効な理由なしに」怒りと恐怖に基づいて行動していると非難した。

ムラー氏は証言するのか

ロシア疑惑と大統領の司法妨害に関するムラー特別検察官の捜査報告書について、下院司法委はムラー氏に正式に公聴会での証言を要請した。期日は決まっていない。

ムラー氏は今も司法省職員のため、司法長官が証言しないよう命令することはできる。

バー司法長官はこれまでに、ムラー氏の議会証言を問題視するつもりはないと述べているが、トランプ大統領は、特別検察官は議会の前に立つべきではないと発言している。

ムラー特別検察官が3月末に捜査報告書を司法省に提出した際、検察官事務所の報道官は、ムラー氏が数日中に司法省を退職する方針だと述べていた。

ムラー氏は退職すれば一般市民となるため、司法省の意向に関わらず、議会証言できるようになる。

<解説>さらに深まった政権と議会の対立――アンソニー・ザーカー北米担当記者

大統領と議会野党側が事を構えるのは、そう珍しいことではない。バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの各大統領も全員、大統領権限を使って議会の証人喚問に対応してきた。オバマ政権時、共和党が多数を占めていた下院は、当時の司法長官に対して侮辱罪に当たると決議すらしている。この前例は間もなく繰り返されるだろう。

ただし、今回の対立が抱えている危険性は過去最高レベルだ。双方のとげとげしさも、これまでになかったほどだ。

問題となっているのは、ムラー報告書の全文公開だけではない。トランプ氏のビジネス組織の動きや金銭的なつながりなどを含め、トランプ政権について議会のチェックが機能していないことも問われているのだ。

トランプ氏は議会の喚問には一切応じないと明言している。議会は法的措置を検討中で、非難や弾劾の決議も視野に入れている。議員の中には、非協力的な政府関係者に対して高額の罰金を課したり、めったに使われない「暗黙の侮辱」という概念を当てはめたりすることを主張する人もいる。この概念を使用すれば、下院の守衛が司法長官を逮捕し、投獄することもあり得る。

非現実的に思えるだろうが、現在の行政府と立法府の関係はそれほど悪い。そしてどちらも、一歩も引きそうにない。

(英語記事 US attorney general faces House contempt vote

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