トランプ氏、妊娠中絶禁止法の論争に沈黙破る

US President Donald J. Trump speaks to the National Association of Realtors Legislative Meeting and Trade Expo at the Washington Marriott Wardman Park in Washington, DC, USA, 17 May 2019 Image copyright EPA

アメリカでドナルド・トランプ大統領の支持者の多い南部など複数の州が、妊娠の人工中絶を全面禁止したり厳しく制限したりする州法を成立させる中、トランプ氏は自分は中絶反対派だが例外はあるとツイートし、一部の州法の内容は支持しない姿勢を示した。かつては中絶容認の立場だったトランプ氏は、近年になり反対派に転じている。

南部アラバマ州などが、妊娠の原因が強姦や近親相姦でも人工中絶を認めない州法を成立させている状況で、トランプ氏は18日に初めてツイッターでこの問題について言及し、「自分は強固にプロ・ライフ(訳注:生命支持、アメリカでは『中絶反対』の意味)だが、例外は3つある。強姦、近親相姦、母親の生命を守るためだ。ロナルド・レーガンと同じ立場だ。」と書いた。

大統領はその上で、「過去2年間で、素晴らしい新しい連邦判事105人(もっと増える)と2人の最高の新しい最高裁判事、メキシコシティの条例、生命権についてまったく新しい前向きな態度のおかげで、大いに前進した。極左は妊娠後期の中絶(もっとひどいことも)を推進して自滅しつつある。みんな団結して、2020年には生命のために勝たなくてはならない。馬鹿な真似をして、ひとつにまとまるのをやめてしまったら、生命のためにせっかくがんばって獲得してきたことが、たちまち消えてなくなる!」とツイート。自らの政権における国内の裁判所の保守化を成果として強調した上で、2020年米大統領選に向けて、人工中絶に反対する保守層の団結を呼びかけた。

中絶反対派は、アラバマ州などの中絶禁止州法がたとえ下級審で違憲と判断されても、連邦最高裁まで争う構えだ。連邦最高裁が人工中絶を女性の権利として認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆すことを、最終的な目的としている。

ドナルド・トランプ大統領による最高裁判事2人の指名によって、連邦最高裁の構成は保守派優勢に傾いている。そのため中絶反対派はこの機を捉えて、人工中絶を全米で違法にする最高裁判決を求めていく見通し。

中絶を全面禁止したアラバマ州のほか、他に16州の州議会が様々な形で、強姦や近親相姦が妊娠の原因でも中絶を制限する州法の制定に向け動いている。

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米アラバマ州、厳格な中絶禁止法案を可決

米世論と妊娠中絶

妊娠の人工中絶はアメリカで長年にわたり、常に激しい議論や運動の対象になってきた。特に、保守派の福音主義キリスト教徒が中心となり、人工中絶の全面的禁止や制限の厳格化を求めてきた。

米ピュー研究所の2018年世論調査によると、アメリカの成人回答者のうち、中絶は「すべての場合において合法であるべき」と答えた人は25%、「ほとんどの場合において合法であるべき」と答えた人は34%と、賛成派は計59%。「すべての場合において違法であるべき」と答えた人は22%、「ほとんどの場合において違法であるべき」と答えた人は15%と、反対派は計37%だった。

トランプ氏自身は、この問題について立場を変え続けており、1999年には「自分はとてもプロ・チョイス(訳注:選択権支持、アメリカでは『中絶支持』を意味する)だ。自分は中絶の概念そのものが大嫌いだ。大嫌いだ。それが意味するすべてのことが大嫌いだ。この問題を人が議論しているのを聞くと、ぞっとする。ただしそうは言っても……自分は選択する権利を信じているだけだ」と、中絶容認の姿勢だった。

それが2016年3月には、自分の立場は「例外ありでプロ・ライフ(中絶反対)だ」と発言していた。

トランプ氏が「2020年(大統領選)で命のために勝つ」には、与党・共和党の一致団結が必要だとツイートした一方、野党・民主党からも、この中絶問題が次の大統領選の主要課題になるという意見が出ている。

民主党から出馬を表明しているエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)は、アラバマ州の禁止法成立を「非常に危険で無類に残酷だ。提案者たちは、ロー対ウェード判例を覆そうとしている」と批判。さらに、「私は(中絶が違法だった時代の)アメリカで暮らしたことがあり、その上であえて申し上げます。私たちは絶対に後戻りしないと。今も、二度と。私たちはこの動きに対抗して戦い、そして勝ちます」と呼びかけた。

アメリカで人工中絶手術は受けられるのか

1973年に連邦最高裁が中絶手術を合法と認めて以来、国内の中絶クリニックの数は減り続けた。2017年には州内に中絶手術が受けられる施設が1カ所しかない州は、6州に上るとされた。

昨年から今年にかけて、アラバマ州のほか、ジョージア、アイオワ、ケンタッキー、ミシシッピー、オハイオ各州の知事が、胎児の心拍が検知できるようになった時点で人工中絶を禁止するという州法に署名した(アイオワの州法は州最高裁が違法判断)。ルイジアナとミズーリの州議会は同様の州法を可決し、知事の署名を待っている状態。ほかに、9州の州議会が同様の法案を検討している(そのうちペンシルベニア州では委員会で否決)。

生殖の権利について活動する市民団体、グットマッハー研究所によると、中絶を禁止する州法はいずれもまだ施行されていないが、各地の支持者は連邦最高裁まで争う構えだという。

その一方でこれら以外の州では、女性が中絶する権利を守ろうと対抗策を導入する動きが進んでいる。ニューヨーク州は今年1月、場合によっては妊娠24週以降も中絶する権利を守る州法を成立させた。

(英語記事 Trump breaks silence amid Alabama abortion ban row

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