米最高裁、中絶法の違憲性めぐる判断を回避 インディアナ州

アンソニー・ザーカー BBC北米担当記者

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【3分解説】 再燃したアメリカの中絶論争 目指すのは何か

米最高裁判所は28日、インディアナ州の人工妊娠中絶関連法をめぐり、性別や人種などを理由とする中絶を禁止できないとする下級裁判所の判断を支持した一方、胎児の遺体の扱いについては同州の法律を支持するという、2通りの判断を下した。この驚きの判断の中に、ドナルド・トランプ大統領に指名された2人を含む9人の最高裁判事が、この先、数年の間、物議を醸しているこの問題をどう評価していくのかを知る手がかりがある。

最高裁の判断は、中絶反対派にとっても賛成派にとっても、評価がまぜこぜになる内容だった。

胎児の遺体の扱いについては、流産か中絶かに関わらず、すべての遺体に埋葬あるいは火葬を義務づける同州の法律を支持した。

中絶反対派はこの規定について、胎児組織が医療廃棄物ではなく、尊厳のある扱いを受けるに値する人間の遺体であると認めることへの1歩だと考えている。

一方、中絶権を支持する団体は、最高裁の判例は胎児を人間とみなしてはいないと反論している。全米家族計画連盟(PPFA)は声明で、インディアナ州法の目的は、中絶を必要とする女性に「恥辱感を与え、汚名を着せる」ことにあると指摘した。

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最高裁判事の過半数は同州法を支持した。埋葬の規定は女性の中絶権に対する「過度な負担」にはならず、胎児の遺体をめぐっては、すべての事情に対処できるよう「完璧に適合して」いないとしても、同州の正当な利益を促進するものだとしている。

もう1つの争点は、深刻な衝突を勃発させる可能性を抱えていたが、実際は起こらなかった。最高裁は、人種や性別、「障害」を理由とする中絶を禁止できないとする下級裁判所の判断の覆しや、見直しさえも退けたのだ。

アメリカ国内で、実際に人種や性別を理由に中絶が行なわれたことを証明するものはほとんどないものの、医師たちは定期的に胎児に異常がないかを検査し、中絶するかどうかの判断を両親たちに提示している。

仮に最高裁がこの法律をめぐり、口頭弁論を経て判決を下すということになっていたら、人工中絶を女性の権利として認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆す手段となっていたかもしれない。

中絶反対派団体「マーチ・フォー・ライフ」のジーン・マンチーニ代表は、「誰一人として、ダウン症や肌の色を理由に命を奪われる筋合いはない」と述べ、この問題への明確な立場を示すことを避けた最高裁を非難した。

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保守派のクラレンス・トーマス判事は今回の判断に賛成しているものの、ゆくゆくは最高裁判事たちは行動を起こさなくてはならなくなるだろうと述べた。

「中絶が優生操作の手段になる可能性を考慮すると、最高裁はインディアナ州のような法律の合憲性にただちに立ち向かう必要があるだろう」

今年に入って、10州ほどで新しい中絶規制や明白な禁止法を成立している。最高裁が中絶するための憲法上の権利があるかどうかを再考する機会は今回限り、ということにはならないだろう。

中絶反対派の活動家や、中絶反対派が多数を占める州議会は、トランプ大統領による追加の判事指名によって、裁判所でようやく過半数が「ロー対ウェイド」判決の心臓部に杭を打ち込むことになったと考えているかもしれない。

28日の最高裁の判断は、一方でほとんど注目されず、事前通告されることもなかった。判事の大多数に、46年前の先例を覆すことへの焦りがないことを示しているのかもしれない。

この中絶問題が米大統領選挙の駆け引きの渦へ引きこまれることは阻止できないだろう、残念ながら。

大統領選の複数の民主党候補は、全米で中絶の権利を守るよう訴えている。中には、以前、中絶を規制しようとする動きがみられた州も含まれる。

一方でトランプ大統領は、レイプや近親相姦、母体への危険が生じた場合以外での、中絶に反対する姿勢を繰り返し主張している。

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米アラバマ州、厳格な中絶禁止法案を可決

ミズーリ州セントルイスにある中絶手術を行なっているクリニックは28日、州政府による医師免許更新が終わっていないとして、31日に予定している中絶手術を強制的に止められる可能性があると発表した。もしそうなれば、ミズーリ州は中絶クリニックが1つもない初めての州となる。ケンタッキー州、ミシシッピ州、ミズーリ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、ウェストバージニア州にはそれぞれ、中絶クリニックが1つしかない。

今回のインディアナ州法をめぐる判断は、最高裁が2020年大統領選挙戦の真っただ中に、中絶政策に干渉したくないということを意味しているのかもしれない。

当分はこの問題を回避するのかもしれないが、「ロー対ウェイド」判決と中絶手術の合法性をめぐる論争の激化を食い止めるには、ほとんど効果はない。

(英語記事 What surprise US court ruling means for abortion

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