米アップル、「iTunes」を終了 ログインを匿名化するプライバシー対策も発表

ゾーイ・クラインマンメアリー=アン・ラッソンBBCニュース・テクノロジー記者

Tim Cook at WWDC 2019

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新型「Mac Pro」を発表した米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)

米アップルは3日、2001年にサービスを開始した「iTunes」について、今秋に提供する最新のOS(基本ソフト)には搭載しないと発表した。「iTunes」の機能は今後、「Apple Music」や「Apple Podcasts」、「Apple TV」の3アプリに分割する。

カリフォルニア州・サンノゼで開かれた同社の年次イベント、世界開発者会議(WWDC)では、複数の新しい個人情報保護対策も明らかになった。

新たなログイン方法では、ログインで使用するユーザー個人のメールアドレスや個人情報を匿名化して保護するという。

米マイクロソフトのOS「Windows」への「iTunes」の提供については、変更はないという。

プライバシー保護対策

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ログインを匿名化する機能「サイン・イン・ウィズ・アップル(Sign In With Apple)」では、個人のメールアドレスを隠したまま利用できる

同社ソフトウェアチーフ、クレイグ・フェデリーニ氏は「プライバシーは、基本的人権だ」と述べた。

フェデリーニ氏によると、位置情報を要求するアプリに対し、その都度、アクセスを許可するかどうかを選択できるほか、Wi-FiやBluetooth信号の識別などを防ぐという。

ログインを匿名化する機能、「サイン・イン・ウィズ・アップル(Sign In With Apple)」についても発表された。この機能では、アップルがランダムなアドレス発行し、そこから転送してくれるため、ユーザーは個人のメールアドレスを隠したまま情報を受け取ることができる。

国際コンサルティング会社CCSインサイトのベン・ウッド氏は、「『Sign In With Apple』の公表は、ライバル企業、特にウェブ業界大手の気をもむことなるだろう」と指摘する。

「既存のサインインサービスは、簡潔な方法でウェブ上のシングルサインイン(一度のユーザ認証処理でサービスにアクセスできる)を可能にしている。プライバシー面はアップルにとって、フェイスブックやグーグルと比べて、非常に重要視されるであろう差別化要因であり、アップルのより大掛かりなプライバシー対策のための優れたマーケティング手段を象徴している」と述べた。

新OS「iOS 13」の特徴

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アプリの背景を暗い色調に変更できる新しい「ダークモード」が搭載される

今秋に提供される新しいOS「iOS 13」では、アプリの背景を暗い色調に変更できる新しい「ダークモード」が搭載されるほか、「Apple Maps」にグーグルマップのストリートビューのようなバーチャル・ツアー機能が追加される。

その他には、非通知の着信音をオフにしたり、メールアプリ内で送信者をブロックするオプションや、メッセージ内の検索機能とバッテリーの持続時間の改善も含まれる。

さらに予測入力機能も改善され、新たにアラビア語、ヒンディー語、タイ語、ヴェトナム語およびインドの22の指定言語に対応できるという。

アップルウォッチ

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様々な見た目のアップルウォッチが登場する

アップルウォッチには独自のアプリストアが設けられ、iPhoneからより切り離されたものになるという。

独自アプリには、妊娠可能期間の予測ができる月経周期トラッカーや、聴覚に影響を及ぼす恐れのある騒音レベルに達した際に利用者に知らせるアラート機能などが含まれる。アップルは、騒音データの記録あるいは保存はしないとしている。

Mac Pro

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新型「Mac Pro」

最大28コアのインテル・ジーオン・プロセッサが搭載可能で、Retinaの6Kモニタを備えたMac Proもお披露目された。今秋に発売開始の予定で、最低価格は5999ドル(スタンドとモニタは含まれない)。すでに所有しているiPadを追加のモニタとして使用できるようになるという。

米調査会社「ガートナー」の上級主席アナリスト、トゥオン・ニューエン氏は、今年のWWDCはこれまでと違った印象だったと述べた。アップルは昨年、同社をハードウェア企業からサービスプロバイダへと転換するとうたっていた。

「通常WWDCは、デバイスの使用方法やアプリとの相互作用など、興味深い話から始まっていたが、今回は映画の予告編のようなビデオで始まった。昨年の発表はすべて、サービスやその内容に関するものだった。これがアップルが自らを差別化するための新たな方法なのかもしれない」