世界の難民・避難民、7000万人を突破 国連調べで過去最多

画像提供, Reuters
国連によると、ヴェネズエラの危機で国外に逃れた人たちが部分的にしか報告に反映されていないため、実際の人数はもっと多いとみられる
戦争や迫害、紛争から逃れた難民・避難民は昨年、世界中で7000万人を超えた。国連が19日、発表した。約70年前に国連が統計を取り始めてから最多となった。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告書「グローバル・トレンド」によると、強制的に住む場所を追われた人は昨年より230万人増えて約7080万人に上った。この20年間でほぼ2倍に増えた。
毎日3万7000人の新たな難民・避難民が生まれていることになる。
UNHCRのフィリッポ・グランディ難民高等弁務官は、「この数字から、戦争や紛争、迫害から逃れて安全を必要としている人たちの数が長期的な増加傾向にあることが改めて分かる」と説明した。
「難民や移民をめぐっては分断を引き起こすような表現が使われがちだが、多くの難民を受け入れているコミュニティーでは特に、思いやりと連帯があふれかえるように示されている」

画像提供, AFP
ヴェネズエラを脱出してUNHCRのテントに集まった人たち

実際はもっと多い
世界の総人口比でみても難民・避難民は急増している。1951年の統計開始以来、ピークは1992年の1000人当たり3.7人だった。しかし昨年はそのピークの2倍以上となる、1000人当たり9.3人に達した。
経済危機と政情混乱が続く南米ヴェネズエラからは約400万人が脱出したとされるが、今回の統計にはその一部しか反映されていない。そのため、実際の人数はさらに多いと、国連は説明する。
困窮するヴェネズエラ国民、髪を売る女性も
3つのグループ
報告書では、難民の3大グループを挙げている。
1つ目は、紛争や戦争、迫害から逃れるために国外へと脱出した難民だ。昨年は2590万人で、うちパレスチナ難民が550万人を占める。このグループは前年より50万人増えた。
2つ目は亡命申請者で350万人に上る。祖国を出て国際的な保護を受けているが、難民の資格をまだ得ていない人々を指す。
3つ目は、国内で地元を逃れている避難民だ。全世界で4130万人いるとされる。
<関連記事>
再定住はわずか7%
シリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアの5カ国の難民で、総数の3分の2以上を占める。シリアが670万人で最も多く、アフガニスタンが270万人で続く。
受け入れ国で再定住できた難民は、わずか9万2400人だった。これは再定住を希望している難民の7%に満たない。
シリア内戦で急増
住む場所を強制的に追われる人の数が、2009年の4330万人から急増した大きな要因が、シリア難民の増加だ。特に内戦が激しかった2012~2015年に、多くの国民が国外へと逃れた。
シリア以外での紛争も、住む場所を追われる人の数を押し上げている。イラク、イエメン、コンゴ民主共和国、南スーダンなどが特に多い。2017年終わりには、バングラデシュで大量のロヒンギャ難民が発生した。
昨年1年間で新たな難民・避難民が最も多く出たのはエチオピアだった。おもに部族間の衝突により、前年の2倍以上の150万人が移動を余儀なくされた。うち98%は国内で避難民となった。