下着ブランド名に「キモノ」、日本文化への侮辱と批判が殺到 米タレント

Women in kimono pose for a photograph in the street of Asakusa during Sanja festival on May 19, 2019 Image copyright Getty Images
Image caption 着物は伝統的な和装で、その歴史は長い

アメリカのタレント、キム・カーダシアン・ウェストさんが25日に発表した自身の矯正下着のブランド名に「キモノ」という名称を使用し、日本の伝統的な着物を侮辱しているとして物議を醸している。

カーダシアン・ウェストさんは、矯正下着「キモノ・インティメーツ」について、「女性の体型や曲線を称え、引き立たせる」としている。

しかしソーシャルメディア上では、矯正下着ブランド名に「キモノ」を使用することは、伝統的な着物を軽視しているとして、多くの日本人が反発している。

サンフランシスコ在住の大石結花さんは、BBCに対し、着物や日本文化への敬意がないと話す。

「私にとって着物とは、子供の成長、婚約・結婚、卒業を祝ったりする時に身に纏う特別なものだが、普段着として着用されている方も多くいる。今回キム・カーダシアンが発表した下着は、日本の着物からインスピレーションを受けたものでもなく、ただ単に自分の名前にかけたダジャレとして使われている。着物や日本文化へのリスペクトがない、自分勝手な行為だが、彼女や彼女のビジネスの影響力を考えると無視できない問題へ発展すると思う」

(カーダシアン・ウェストさんが立ち上げた矯正下着ブランド「キモノ」の公式ツイッター)

カーダシアン・ウェストさんは昨年、ブランド名の「キモノ」の商標登録をしたほか、「キモノ・ボディ」や「キモノ・インティメーツ」、「キモノ・ワールド」についても、すでに商標登録の出願を行なっている。

9つの色を展開する「キモノ」矯正下着について、カーダシアン・ウェストさんはツイッターで、「これまで、自分の肌の色味に合う矯正下着が見つからなかったことが何度もあった。こういった問題への解決策が必要だった」と述べた。

最新の矯正下着はXXSから4XLまでサイズがあり、サイズと多様性のあるブランドだと、大々的に宣伝している。

しかし着物の専門家は、矯正下着に、それとは正反対の特徴を持つ着物と同じ名称を使うことは皮肉だと述べた。

SNSで批判が殺到

着物の原型となるものは15世紀ごろには登場していたとされる。今日では、成人式や結婚式など、特別な行事やお祝い事で着用される。

日本文化において重要な文化的意義を持つ着物という言葉を商標登録したという事実に、多くの人が異議を唱えている。中には、下着ブランドが伝統的な和装と同じ名称だということに憤る人もいる。

ツイッターでは、ハッシュタグ「KimOhNo」(着物と「キム、オーノー=キム、やめて」をもじった言葉)を付けた投稿が増えている。

ヤスさんは、「私たち日本人が知っているものと全く違うものが『Kimono』という名前で使用されていることに悲しさを覚える。着物は日本の伝統服であり、私たちはその歴史と文化にとても誇りを持っている。彼女には申し訳ないが、この名前のチョイスは、それらを無視した無知から来ているように感じてしまう」とツイートした。

kasumiさんは、カーダシアン・ウェストさんに対し、「日本の文化を滅茶苦茶にしてくれてどうもありがとう!」と皮肉った。

「私の文化はあなたのおもちゃではない。あなたはご自身とご家族以外の方には敬意を一切払わないのか?」

中には、自分の祖母の着物の写真を載せ、思い出を投稿する人も。

Ginjiさんは、「この内のいくつかは祖母自身が染め、刺繍をした。私は子供の頃、祖母が刺繍をしているのを眺めているのが大好きだった。一針ずつ美しい刺繍を完成させていく祖母の姿もまた美しく、私はいつも魔法を見ている気分だった」とツイートした。

着物のスタイリストや、着付け教室の先生として活動するさとさんは、BBCに対し、文化を盗まないで欲しいと話す。

「キム・カーダシアンの下着は着物とは全くの無関係で、名称のみを商品に使用する事に関して、着物という日本特有の文化を軽視していると考える。また、日系企業が『Kimono』という名称を使用してビジネスができなくなってしまう事に関しても危惧を抱いている」

さとさんはツイッターに着物を着た写真を投稿し、「私の文化を盗まないで」と訴えた。

大石さんは、世界中の人々が「キモノ」という名称を、日本文化とではなく、カーダシアン・ウェスト氏と結びつけて考えるようになってしまうのではないかと、懸念している。

「キム・カーダシアンは、アメリカだけでなく世界的に影響力が非常に高く、彼女のブランド名としてKimonoという言葉が使われることで、日本の着物ではなく、キム・カーダシアンのKimonoとして認識する人が増えると思う。検索エンジンの結果や、SNSのハッシュタグで上がってくる結果などにも影響が出てもおかしくない。すでに現時点でインスタグラムの #kimono のカバーフォトはキムの下着の写真になっている」

Image copyright Sato Kimono/Twitter
Image caption 着物は肌を露出しない日本の伝統的な衣服だ

十文字学園女子大学のシーラ・クリフ教授は、「着物の美学は優美さ、上品さ、穏やかさにある。肌を露出したり身体の線が出るものではない。着る人を包んで見せないものだ」と指摘する。

「もし私がサリーという名前のブラジャーを作ったら(中略)とても怒る人がいるだろう。非常に無礼なことだし、(中略)着物は日本のアイデンティティー表現だ。キム・カダーシアンに属する言葉ではない」


日本で心配と懸念高まる――加藤祐子、BBCニュース(東京)

日本語で文字通り「着る物」を意味する「kimono」は通常、専門的な職人が技巧を凝らして作る。特別な日に着ることが多いが、ちょっとおめかししておしゃれをしたい時に着るという人もいる。

多くの日本人にとって着物を着るという行為は、自分たちの歴史や文化とつながり、日本人としての自意識を確認する手段になる。西洋化の進む現代の暮らしにおいてはなおさらだ。

キム・カーダシアン・ウェスト氏が下着ブランドを「Kimono」と呼んだりしたら、「kimono」という単語からこの日本語の「着物」の意味が消されてしまうと、大勢が心配した。そんなことになったら、ただでさえ生き残りに苦しむ伝統産業にとって、深刻な打撃になるという声もあった。

欧米ではすでに、体に柔らかい布を巻きつけるガウンのようなものを「kimono」と呼ぶ。もしカーダシアン・ウェスト氏が「Kimono」と命名して発表したのがそうしたガウンだったなら、日本での反応はため息交じりの諦めに似たもので終わったかもしれない。

しかし、着物とは何かという認識は、日本でははっきりしている。それは決して下着ではない。加えて、「着物」のような一般名詞を商標登録しようとする行為は、多くの人を不安がらせた。ソーシャルメディアでは大勢が実際の着物の写真を投稿している。「No, kimono is not underwear (いいえ、着物は下着ではありません)」と強調しながら。

(英語記事 Kim Kardashian West's 'Kimono' range riles Japan

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