ジョナサン・アイヴ氏がアップルを退職 iPhoneなど設計

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米アップルで20年にわたり製品設計を手掛け、資産価値が最も高い企業への道を助けたイギリス人のサー・ジョナサン・アイヴが、自身の会社を立ち上げるため年内にアップルを離れると発表した。

アイヴ氏はiMacやiPod、iPhoneなどの設計を手掛けた。退職については、「この変化には今が自然でおだやかなタイミングだと思った」と話した。

新会社「LoveFrom」は最初の顧客としてアップルを迎えるという。

アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はアイヴ氏が「アップルの復興で担った役割はどんなに強調してもしすぎることはない」と語った。

アップルでは今年4月に小売担当上級副社長だったアンジェラ・アーレンツ氏が退職。投資家はiPhoneの売り上げ低迷を懸念しており、こうした変化の中での発表だった。

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Image caption アイヴ氏が1998年に手掛けたiMac

アイヴ氏は声明で、「30年近くにわたって数え切れないほどのプロジェクトに携わり、他に類を見ないアップルの設計チームやプロセス、文化を作るためにやってきた持続的な仕事を大変誇りに思っている」と語った。

新会社については詳細は明らかになっていないが、米カリフォルニアに拠点を構え、ウェアラブル技術に専念すると報じられている。

アイヴ氏のアップル退職は、フィナンシャル・タイムズが独占取材で報じた。これによると、アイヴ氏の同僚のマーク・ニューソン氏もLoveFromに入社するという。また、設計以外のさまざまな分野から「クリエイティブな人材を集める」としている。

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Image caption iPhoneは史上最も利益を上げた製品となった

アイヴ氏は1996年にアップルの設計部門のトップになった。当時、アップルの経営は傾いており、人員整理を行っていた。

転機となったのは1998年にアイヴ氏が設計したiMacと、2001年のiPodだった。そのほか、アイヴ氏が関わった製品は以下の通り。

  • 2004年:iPod Mini
  • 2007年:iPhone
  • 2008年:MacBook Air
  • 2010年:iPad
  • 2015年:Apple Watch
  • 2016年:AirPods

2011年に亡くなったアップルの創業者スティーヴ・ジョブズ氏はかつて、アイヴ氏について「アップルに精神的なパートナーがいるとしたらそれはジョニーだ」と話していた。

アイヴ氏が最近関わったプロジェクトの中には、アップルの新本社Apple Parkの設計がある。アップルはこの建物の設計を、英建設大手フォスター・アンド・パートナーズと行った。

市場調査会社クリエイティヴ・ストラテジーズのアナリスト、ベン・バジャリン氏は、「ジョブズ氏の下での成長物語の中核となった人物の最も重要な旅立ち」だと説明している。

アイヴ氏は2012年にエリザベス英女王からナイトの称号を授けられている。

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Image caption Apple Watchは2015年に発売された

アイヴ氏は2012年以降、それまで別の人物が担当していたハードウエアとソフトウエアの設計チームの統括を一任している。後任は現時点では決まっていない。

アップルは27日、今後はハードとソフトで責任者を再び分けると発表。また、設計部門のエヴァンズ・ハンキー氏が工業設計担当副社長に、アラン・ダイ氏がヒューマン・インターフェース設計担当副社長に就任する。

<分析>ローリー・ケスラン=ジョーンズ、テクノロジー担当編集委員

スティーヴ・ジョブズ氏とジョナサン・アイヴ氏は、アップルにおけるレノンとマッカートニーだった。近年の企業史において最もクリエイティブな2人のパートナーシップなくして、今日のアップルはなかった。

ジョブズ氏がアップルに復帰した際、アイヴ氏は主要な立場にはいなかった。ジョブズ氏はそんなイギリス出身の設計者を、製品の見た目と雰囲気は中身の技術と同じくらい大事だというアイデアを共有できる身内として引き上げた。

2人の最初のヒット作はiMacだ。パソコン市場を席巻していたベージュの箱とたもとを分かち、パソコンが美しいデザイン性のあるものになると知らしめた。

ヒットはiPod、iPhoneそしてiPadと続き、それぞれがプロダクトデザインに新しい基準を示し、競合企業はこぞってそれを真似した。

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Image caption 初期iPod。競合企業はこぞってアイヴ氏のデザインを真似した

ジョブズ氏の死後、アイヴ氏がいつかCEOになるのではという憶測が流れた。しかしその可能性は常に薄く、アイヴ氏はアップルのデザインの教祖であり続けた。クックCEOが利益を生み出し続けるアップルの経営にまい進する一方で、アイヴ氏はアップルの製品発表動画に出演し、その声はたびたび、パロディーに使われた。

しかしここ数年、アイヴ氏のデザインマジックを垣間見ることはどんどん難しくなった。Airpodsはまたひとつ新しい伝統を生み出したが、999ドル(約10万円)するMac Proのモニタースタンドなどは、アップルがファンを軽視していることの象徴のように見える。

しかし、トイレや歯ブラシから設計の仕事を始めた男は、史上最も利益を生み出す製品を世に送り出した。アイヴ氏の名前は間違いなく歴史に刻まれるだろう。

(英語記事 iPhone designer Jony Ive to leave Apple

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