ドイツ銀行、1.8万人整理へ 第2四半期は赤字に

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ドイツ銀行は経営建て直しに向け、向こう3年で1万8000人を整理すると発表した。併せて、第2四半期(2019年4~9月)は28億ユーロ(約3400億円)の赤字になると明らかにした。
再建計画では投資銀行部門を大きく縮小するもよう。また、どの部門で人員整理に踏み切るかは明らかにしていないが、ロンドンとニューヨークで主に行っている株式取引事業から完全に撤退する予定だとしている。
ロンドンでは現在8000人が働いており、同行最大の取引事業拠点となっている。
さらに、2022年までに全世界の従業員を7万4000人にまで削減する。全体のリストラ費用は向こう3年で74億ユーロとなる見通しだ。
クリスティアン・ゼーヴィング最高経営責任者(CEO)は、「私たちはきょう、ここ数十年で最大の根本的な改革を発表する」と述べた。
「これはドイツ銀行の再出発だ。(中略)顧客に焦点を当て直すことで原点に、私たちを世界をリードする銀行にしてくれた場所に立ち返る」
再建計画により、ドイツ銀は2022年までに170億円のコスト削減を達成できるとしている。また、切り離す事業が持つ740億ユーロ相当の資産を管理する新たな部門を設置するという。
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クリスティアン・ゼーヴィング氏
ドイツ銀をめぐっては、今年4月に競合するコメルツ銀行との経営統合に向けた交渉が決裂。その後、再建計画を打ち出した。
この経営統合にはドイツ政府も賛意を示していたものの、両行は統合にかかるコストが利益を上回るリスクがあるとして交渉を打ち切った。
ドイツ銀は近年、投資銀行部門の低迷に苦しんでおり、これまでにも何度か再建のための試みを行っている。
今回発表された再建計画はその中でも最も野心的なもので、5日にはこれを受けて投資銀行部門のトップ、ガース・リッチー氏の辞任が発表された。
<分析> サイモン・ジャックBBCビジネス編集長
ドイツ銀行にとっての悲報は、イギリスの大手銀行バークレイズにとっての朗報だ。
かつて国際投資銀行として名を馳せていたドイツ銀の撤退により、バークレイズは、アメリカの大手ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーなどが割拠する国際投資事業に残った唯一の欧州系銀行となる。
BBCの取材にあるバークレイズの関係者はこう話している。
「ドイツ銀の現状は、5~10年前のバークレイズと同じだ。違いといえば、我々は順調なリテール(小口金融)事業によって困難な時期を乗り越えられたが、ドイツ銀にはそれがない」
大手行が住宅ローンやクレジットカードといったリテール事業も担うイギリスとは異なり、ドイツの金融市場では小さな地方銀行がといったほとんどのリテール顧客を握っている。
バークレイズはここ1年で、ドイツ銀をはじめとする欧州各行から市場シェアを奪ってきた。今回のドイツ銀の撤退も、さらなる事業拡大の好機とみるだろう。
だがバークレイズが事業を拡大する中、ドイツ銀行の凋落(ちょうらく)による現実の勝者はアメリカの金融機関だ。彼らは、国際投資銀行のいわゆる「バルジ・ブラケット(一流金融機関)」に食い込もうとしていたドイツ銀行やロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)、スイスUBSといった欧州各行が失敗した後に力を伸ばした。
ウォール・ストリートは、これまでになく力をつけている。