イギリスの極右著名人、法廷侮辱罪で有罪 ムスリムやアジア人を標的に

Tommy Robinson arrives at court Image copyright Getty Images

英ロンドンの中央刑事裁判所(刑事法院)は11日、極右政治団体「イングランド防衛同盟(EDL)」の元リーダー、トミー・ロビンソン(本名スティーヴン・ヤクスリー=レノン)被告に対し、法廷侮辱罪で禁錮9カ月の実刑判決を言い渡した。

被告は2018年5月、未成年に性的加害行為を行った集団に対する北部リーズでの公判で、被告の様子などをフェイスブックで配信した。刑事法院はこれが「自警団的な行為」を助長し、公判を妨害したとして、5日に有罪を言い渡していた。

ロビンソン被告名義のSNSアカウントは、今回の判決を「ひどい茶番」だと批判し、抗議の時だと述べている。裁判所の前では支持者たちが警察に、缶やびんを投げつけて抗議した。判決が出た後にブーイングや「トミーを解放しろ」などの合唱があり、被告を乗せた護送車が刑事法院から出発する際には、「トミー、愛してるよ」などと応援の声をあげる支持者もいた。

イギリス議会の外の広場コレッジ・グリーンでは、支持者たちが報道陣に暴言を吐き、身体的に脅し、取材用の機材を破損した。

BBCのニュース番組も、抗議者が生放送を妨害したため、コレッジ・グリーンからの中継を短縮した。

警察は、ロビンソン被告の支持者たちによる11日の抗議行動ではまだ誰も逮捕していないという。ただし、有罪評決が出た5日に、裁判所前で起きた騒ぎについては、計8人が逮捕された。

トミー・ロビンソンとは

ロビンソン被告は2009年に、「イスラム過激主義に対抗する」ことを目的にEDLを立ち上げ、デモや抗議行動を展開。人種差別に抗議する様々な団体と衝突を繰り返した。2013年には、もはやELD内の過激分子を自分は抑制できないなどの理由で、EDLを離れた。

その後も、アメリカ、ドイツ、カナダなど各地の反イスラム団体や極右団体と連携し、警察や主要メディアがムスリムやアジア人による犯罪を見逃していると批判を繰り返している。国内各地の都市中心部が「イスラム過激主義者に汚染されている」とBBCに発言したこともある。

労働者の代弁者をもって自認し、イスラム教やイスラム教徒を敵視する本を自費出版。フェイスブックなどで支持者に販売するほか、募金を募っていたが、2018年末までには、ヘイトスピーチに関する規約違反を理由にYouTubeを初め、ほとんどのソーシャルメディアから追放された。電子決済サービスのペイパルも使用を禁止された。本人はこの影響で収入が7割落ち込んだと明らかにしている。

イギリスの欧州連合(EU)離脱を推進するイギリス独立党(UKIP)はロビンソン被告を顧問として登用。同様にブレグジット党も、同被告を支援する姿勢をたびたび示した。

被告自身は今年5月の欧州議会選に、無所属候補として英北西部から出馬したが、得票率2.2%で落選し、供託金5000ポンドを没収された。

英東部ベッドフォードシャーの自宅に寝室が4つあり、庭にはテレビ付きジャクージが備わり、正面の車寄せにはレンジローバーが停まっていることも、話題になった。この家は現在、90万ポンド(約1億2200万円)で売りに出されている。

Image caption 被告は自宅を90万ポンド(約1億2200万円)で売りに出している
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Image caption 議会前に集まったロビンソン被告の支持者
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Image caption 刑事法院前でも抗議行動があった。中には「イスラムの法律に反対」、「トミー・ロビンソンは政治犯として投獄された」という看板を掲げた支持者もいた

2018年にリーズで行われた問題の裁判では、未成年に集団で性的加害行為を行ったとして29人が起訴された。この時、一連の裁判が終わるまでは被告に関する詳細な情報を発表しないよう、報道規制が出されていた。

しかし、ロビンソン被告は同年5月25日、2回目の裁判で陪審員が評決を評議する間、裁判所の外からフェイスブックで動画をストリーミング配信した。配信は1時間半に及び、25万人が視聴した。

判事のデイム・ヴィクトリア・シャープは判決文の中で、ロビンソン被告は「メディアの行いを糾弾」するために配信を行ったと主張していると説明した。

しかし、実際には「被告を探し出し、家に押しかけ、付きまとい、監視する」よう人々をたきつけたと述べ、被告の行いによって「司法が妨害されかねない現実のリスクが生まれた」と結論付けた。

ロビンソン被告は同年5月に13カ月の禁錮刑を言い渡されていたが、同年8月に控訴裁が一審判決の技術的な問題点を指摘し、差し戻したため、被告は釈放された。

その後、今年3月にジェフリー・フォックス司法長官がこの件に言及し、再審が公共の利益に適うと発表。今回の判決に至った。

ロビンソン被告の弁護士は、今回の判決に控訴する可能性もあるとしている。

フォックス司法長官は今回の判決について、イギリス司法がいかに法廷侮辱罪を深刻に捉えているかの表れだと述べた。

「自分がソーシャルメディアに投稿する内容が法廷侮辱罪に当たるかどうか、全員、気をつけて考えてもらいたい」

法廷侮辱罪とは?

法廷侮辱罪は、陪審員が法廷で見聞きした証拠以外のものに影響を受けず、誰もが公平な裁判が受けられるよう定められた。

このルールはあらゆる人物に適用され、ジャーナリストから、一般人がソーシャルメディアに投稿するコメント、陪審員自身も対象となる。

誰かが公判を侮辱した際、その公判の被告は釈放されて新たな裁判が開かれる場合もある。

イギリスでは法廷侮辱罪で最大2年の禁錮刑が科せられるほか、上限なしの罰金刑となる場合もある。

侮辱には、「進行中の」刑事捜査・訴訟に深刻な偏見を与えるほどの危険を生むものを発表する行為も含まれる。イギリスでは、容疑者が逮捕された時点で「進行中」となる。

また、写真や映像の撮影、公判での証言を録音する行為、陪審員と事件について話すことなども侮辱に当たる。

(英語記事 Robinson jailed for contempt of court / Tommy Robinson: The rancour, rhetoric and riches of brand Tommy

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