新型車は「10秒で」盗まれる、「キーレス」に脆弱性=英自動車専門誌

What Car? security test breaking into an Audi TT RS Image copyright What Car?

イギリスで最も人気のある新型車の一部が、10秒ほどで盗まれてしまう可能性があることが、英専門誌が行なった実験で明らかになった。近年、鍵を鍵穴に差し込むことなく施錠・解錠できる「キーレス(keyless)」機能を悪用した、盗難事件が増加しているという。

「キーレス」とは、運転手がポケットから鍵を出すことなく、ドアロックを解錠したり、エンジンをかけたりできる機能のこと。

英自動車専門誌「ワット・カー?(What Car?)」のセキュリティー専門家は、窃盗犯が用いるものと同じ専門技術を使い、「キーレス」機能を搭載する7つの車種のロックを解錠し、盗む実験を行なった。

ロックを解錠し、車で走り去るまでの時間を計ったところ、DSオートモビルズのコンパクトSUV「DS 3クロスバック」と、アウディの四輪駆動車「TT RS」は10秒で、ランドローバーのSUV「ディスカバリー・スポーツTD4 180 HSE」は30秒で、それぞれ「盗まれて」しまった。

イングランドとウェールズで起きる車の盗難事件の件数は、2018年に10万6000台を超え、過去8年間の最悪を記録した。

Image caption 「キーレス」搭載車の盗難実験の結果。「DS 3クロスバック」は10秒で、「ランドローバー・ディスカバリー・スポーツTD4 180 HSE」は30秒で盗まれてしまった。その他は、解錠できたものの、エンジンがかからない、あるいは一定の条件が揃わないと車を持ち出すことはできなかった。 出典:ワット・カー?

2019年初頭の自動車盗難保険の請求額は、過去7年間で最高に達した。

英国保険協会によると、今年1月から3月(2018年第4四半期)までの間に請求された額は、2012年以降では、いち四半期あたりの請求額で最も高かったという。

同協会は、原因の一端は「キーレス」搭載車の増加にあるとしたものの、「キーレス」車種への保険請求の割合を示す統計はないという。

アウディの親会社、独フォルクスワーゲン(VW)は、セキュリティ対策向上への「継続的な」取り組みの一貫として、警察や保険会社と連携しているとしている。

DSオートモビルズの親会社、仏PSAグループは、「ワット・カー?」に対し、同社は、考え得る安全対策における脆弱性に対処しており、「窃盗の手口を分析」するために警察と緊密に連携していると述べた。

また、新型車種については、所有者の要望に応じて、ディーラー側が「キーレス」機能を無効にすることも可能だという。

英ジャガーランドローバー(JLR)は、「実験に使用されたディスカバリー・スポーツのモデルは、製造中止になっている。現在製造されているディスカバリー・スポーツは、リレー・アタック(スマート機能を悪用した窃盗手口)を防止する技術を備えている。我が社のすべての車には、InControlという車追跡機能がついており、これまでに8割以上の車が所有者の元へ戻っている」と述べた。

どうやって「キーレス」搭載車を盗むのか

窃盗犯は通常、ペアで行動し、屋外に駐車してある車を狙う。

1人が、住宅の近くで特殊な装置を持ち、「キーレス」解錠用の電波を傍受する。もう1人は、別の装置を車に近づける。特殊装置を使って電波を中継(リレー)することで、車のロックを解錠する仕組みだ。

警察によると、盗まれた車は、細かく部品ごとに解体されるという。

自動車メーカーは、こうした「キーレス」機能を悪用した盗難を防止するため、動作感知技術などの新技術の導入を始めている。

「ワット・カー?」の実験では、動作感知技術が備わった車には侵入することはできなかった。

しかし、こうした安全対策技術は、自動車市場全体で導入されているわけではない。

キーは玄関から遠い場所に

昨年11月にロンドン北部の自宅前からキーレスの「メルセデスc220」を盗まれたアンドリューさんは、キーは玄関から遠くはなれた家の後方の3階に置いてあったとBBCに話す。

車はまだ発見されず、メルセデス・ベンツを製造販売するダイムラーは、なぜアンドリューさんの車が盗まれてしまったのか説明できずにいるという。

「キーレスで車は前より安全だというメーカーの言い分は、利用者に誤解を与えていると思う。保険会社によると、私と同じ郵便番号のロンドン市内だけで同じ11月の間に10台もキーレスの車が盗まれているそうだ」

もう少しで休暇が台無しに

ウェールズ・ニューポート出身のスティーヴン・サヴィガーさん(59)は、妻や友人2人と一緒に、ヒースロー国際空港へ向かう途中、「キーレス」盗難の被害に遭った。

サヴィガー夫妻は、妻と友人の60歳の誕生日をクルーズ船で祝うため、シンガポールへと出発する予定だった。

トイレ休憩のためパーキングエリアに立ち寄った際、窃盗被害に遭った。

幸い、サヴィガーさんのフォード・モンデオは盗まれずに済んだものの、その場で休暇を中止する羽目になりかねなかった。

「私たちが建物の中にいる間に、窃盗犯は車のロックを解錠した。私と妻のパスポート、めがねやiPadが入った旅行かばんを盗まれた」

Image copyright S Savigar
Image caption スティーヴンさんと妻のキムさんは、パスポートやiPadを盗まれたものの、シンガポールでクルーズ旅行をすることができた

「私たちは搭乗できなかったが、友人たちは空港まで送り届けた。本当に災難で、妻は気を失ってしまった」

2人は帰宅してからパスポート再発行の手続きをとり、その次の日にヒースロー空港へ戻った。当初とは別の航空会社の航空券を購入し、シンガポールへと飛び、客船の出航にぎりぎり間に合った。

それから5カ月たった今でも、サヴィガーさんは、当時の話をすると不愉快になるという。

「本当にぞっとするような経験だった。あの旅行を2年もかけて計画していたのに。恐ろしい犯罪だ」

(英語記事 New cars 'can be broken into in 10 seconds'

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