トランプ氏、対中追加関税を一部12月に先送り スマホなど

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米政府は13日、中国への追加関税について携帯電話など一部品目への発動を12月15日まで遅らせると発表した。「健康、安全、国家安全保障、その他の要因」を理由に挙げている。対象品目には携帯電話のほか、ラップトップ、ビデオゲーム、玩具、コンピューターのモニター、靴や衣類などが含まれる。
米通商代表部(USTR)の予想外の発表を受けて、関連銘柄の株価は急反発した。
ドナルド・トランプ米大統領は報道陣に対し、今年のクリスマス商戦でアメリカの消費者に打撃を与えるためでもあると、延期の理由を説明した。
中国商務省は13日夜、劉鶴副首相がUSTRのロバート・ライトハイザー代表やスティーヴン・ムニューシン米財務長官らと電話協議したと発表した。USTRはこの発表の直後に、発動延期を発表した。
中国国営・新華社通信は、9月1日に発動予定の制裁関税に対して中国政府は「厳粛な抗議」をアメリカ側に伝えたと報じた。ライトハイザー代表と劉副首相は2週間後に再び電話会談する予定という。
ハイテク関連の投資家はUSTRの発表を歓迎し、半導体株が上昇した。小売や工業系の株も伸び、ゼネラル・エレクトリックは4.4%上がった。
米株式市場では、3つの主要指標がいずれも一時2%以上、上昇した。ダウ工業株30種とS&P総合500種の終値は1.4%高をつけ、ハイテク銘柄が中心のナスダックは1.9%高だった。特にアップルは4%高をつけた。
ロンドンの株式市場でも世界貿易に関わる銘柄が上昇し、 スイスの資源大手グレンコアは終値が2.3%高だった。
トランプ氏は今月1日、中国からの輸入品3000億ドル分(約32兆円)を対象とする追加関税を9月1日に発動するとツイッターで表明。中国が米農産品の輸入拡大という約束を守らなかったと批判し、スマートフォンから衣類までほぼ全ての輸入品に、10%の関税を上乗せする方針を示した。
さらに、 アメリカで乱用が問題視されている医療用麻薬「フェンタニル」について「友人の習近平国家主席が、中国からアメリカへの販売をやめさせると言ったのに、実現しなかった。おかげで大勢のアメリカ人が死に続けている!」とツイートした。
しかし13日のツイートでは調子を変え、何かを中国側から期待していると示唆。「いつものように中国は、アメリカの偉大な農家から『大いに』買うと言った。いまのところ言ったことを実行していない。今回は違うかもしれない!」と書いた。

米中の対立に伴う世界的な経済停滞への懸念が高まる中での、米政府の発表となった。USTRの発表に先駆けて米投資銀行ゴールドマン・サックスは11日、米中貿易戦争が景気後退(リセッション)を引き起こす不安が高まっていると警告していた。
今回の制裁発動延期が貿易戦争の終息を意味するものではないという、アナリストの見方もある。信用格付け会社ムーディーズのエレナ・ダガー氏は、「緊張緩和に見える今回の措置は一時的な猶予かもしれない。(中略)世界の二大経済大国は、ときおり妥協しながら対立を続けるだろう」と評した。