墜落事故死のサラ選手、遺体から「致死レベル」の一酸化炭素

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Image caption サラ選手は、事故の2日前にナントからカーディフへの移籍が発表されたばかりで、移籍金は1500万ポンド(約21億3000万円)と伝えられていた

今年1月に、英仏海峡で起きた飛行機の墜落事故で死亡した、サッカーの英イングランド・プレミアムリーグ、カーディフ・シティのFWエミリアノ・サラ選手(28)の遺体から、高濃度の一酸化炭素が検出されたことが分かった。14日付の英航空事故調査局 (AAIB)の報告書で明らかになった。

サラ選手とパイロットのデイヴィッド・イボットソン氏(59)は、1月21日、フランス北部ナントから移籍先の英カーディフへ向かう途中に英仏海峡で消息を絶った。

AAIBがサラ選手の遺体を毒物検査したところ、血中の一酸化炭素濃度が、意識障害や心臓発作などを引き起こすほど高かったという。

Image caption サラ選手を乗せた飛行機は英仏海峡上空で消息を絶った(Flight disappears off radar)。仏ナント空港(Nantes airport)から英カーディフ空港(Cardiff airport)に向かう予定だった

報告書で明らかになったこと

AAIBによると、サラ選手の血液中から検出されたカルボキシヘモグロビン(COHb、赤血球内のヘモグロビンと一酸化炭素が結合したもの)の濃度は58%だった。これは、意識障害や心臓発作などを引き起こす恐れのある高い値だ。

「健康な人でもCOHbの血中濃度が50%を超えると、一般的に死に至る可能性がある」

イボットソン氏が、一酸化炭素中毒になっていた可能性もある。

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Image caption エミリアノ・サラ選手(左)とパイロットのデイヴィッド・イボットソン氏(右)

墜落した民間機「パイパー・マリブN264DB」などピストン・エンジンを搭載した航空機は、高濃度の一酸化炭素を排出する。

通常は排気装置を介して機体の外へと出される。しかし、機体にできた隙間あるいは暖房換気システム内へと漏れ出し、機内に充満した可能性も考えられる。

パイロットや乗客に対し、一酸化炭素の発生を知らせる装置はあるが、機体への導入は義務付けられてはいない。

専門家の見解

元パイロットで航空安全評論家のテリー・トーザー氏は、この検査結果は「驚き」だと述べた。

「つまり、事故調査官が問題の核心に迫らない限り、事故原因が何だったのか知ることはできないということだ。どのように、なぜ、一酸化炭素が機内へ流れ込んだのか。恐らく、排気システムを介して(中略)煙が換気システムに流れ込んだのだろう」

トーザー氏は、このような事態には遭遇したことがないとした上で、航空機において、一酸化炭素中毒が大きなリスクとなりうるとは思いもしなかったと述べた。

「車のように窓を開けられるわけではない。ゆっくりと、じわじわと忍び寄ってくるのだろう。臭いがないため、感知装置が搭載されていなければ、吸い込んでいることにも気がつかないだろう」

トーザー氏は、事故機の残骸を回収して調べることが、一酸化炭素が漏れ出た原因を突き止める唯一の方法だと主張する、サラ選手の遺族と同じ考えだという。

「航空機事故は通常、いくつもの要因が重なって起こるものだ。だから、我々はパイロットが適切な資格を持っていなかったことから調査を開始する。それから、出発が遅れて夜間の飛行になり、パイロットがプレッシャーを感じたかもしれないということ。天候に恵まれなかったこと、そして極めつけは一酸化炭素中毒になり、制御不能に陥った可能性を調査する」

「事故機の詳しい調査」を

サラ選手の遺族は代理人を通じて、事故機について詳しい調査を行なうよう求めた。

「遺族も、市民も、どうやって一酸化炭素が機内へと流れ込んだのかを知る必要がある。航空安全の未来は、この事故の原因についてできるだけ多く知ることができるかにかかっている」

いまも遺体が見つかっていない、英ノースリンカンシャー・クラウル出身のイボットソン氏の妻ノラ氏も、スカイニュースに対し、事故機の回収が原因究明につながると主張した。

ノラ氏は、高濃度の一酸化炭素が検出されたことについて、「とてつもないショック。臭いもしないし、目にも見えない。気づくことができないなんて致命的だ」と述べた。

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Image caption AAIBが公表した、事故機の残骸の画像

遺族の求めに対し、AAIBは声明で、事故機が発見された今年2月に、現場で実質的証拠となる映像は撮影したとし、「当時は残骸の回収は不可能だった」と主張した。

「我々は、残骸の回収を実際に行えるのか、そうするべき価値はあるのかを慎重に検討した。今回は、残骸の回収が、事故調査に大きな影響を与えることはないと考えている。別の方法で、安全性における問題点を突き止めるだろう」

さらに、海へ墜落する際の「激しい衝撃」により、事故原因につながる決定的なものは残骸からは得られないかもしれないとした上で、サラ選手とイボットソン氏の遺族に対し、事故機の回収を行わない理由について説明済みだと述べた。

Image caption サラ選手は、カーディフ・シティでプレーすることなく、生涯を終えた。スタジアム周辺では、ファンらが花を手向け、サラ選手をしのんだ

(英語記事 Sala and plane pilot 'exposed to carbon monoxide'

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