香港デモ、警察が実弾や放水砲を使用 デモ参加者との衝突激化で

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地元メディアによると、警察はデモ参加者への警告として実弾を発砲したと説明している。また、この衝突で複数の警官が病院に運ばれたという
香港で25日、政府に抗議する市民を前に警察が発砲した。6月にデモが始まって以来、警察が実弾を撃つのは初めて。
また棒などを持ったデモ参加者に追われる中、警官が参加者に銃を向けている様子も撮影されている。警察はこのほか、新たに放水砲を導入した。
犯罪容疑者の中国本土引渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案をめぐって始まった一連のデモは10週にわたって続いており、鎮静化の兆しが見えていない。
先週末には平和的なデモ行進が行われ、主催者発表で170万人が参加したものの、今週に入って再び事態が悪化した。
香港抗議で警察が初めて実弾発砲の瞬間 デモ開始以来初めて
25日の抗議活動は香港の荃湾(ツェンワン)区で始まり、その後、尖沙咀(チムサーチョイ)地区まで広がった。
地元メディアによると、警察はデモ参加者への警告として実弾を発砲したと説明している。また、この衝突で複数の警官が病院に運ばれたという。
一方で警察幹部は、どこへ向かって発砲したのかは言明しなかった。
混乱の中、警察に撃たないでくれとひざまずいて頼む男性の姿が目撃されている。
衝突の直前、黒い服に身を包んだデモ参加者たちは、レンガや火炎瓶などを警察に投げつけていた。
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警察は、「大規模な暴動」があった時のみ放水砲を導入すると説明している
警察は実弾に加え、ゴム弾と催涙ガスを使用してデモに応戦したほか、放水車を導入してバリケードを撤去し、デモ参加者を排除した。
カナダ紙グローブ・アンド・メールのネイサン・ヴァンダークリップ記者は、荃湾区で放水車がバリケードに向かって放水する様子をソーシャルメディアに投稿した。
車両には監視カメラと複数の放水ノズルが設置されているという。警察は、「大規模な暴動」があった時のみこの車両を導入すると説明している。
人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは8月初め、放水砲の導入は深刻なけが人が出る可能性があり、さらに緊張が高まる可能性があると指摘していた。
25日には平和的なデモ行進も計画され、数百人が参加した。参加者には警官の家族もおり、危機に対する政治的解決を求めていた。
香港デモ、激化の変遷
- 4月3日:香港政府が犯罪容疑者の中国本土引渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案を提出した
- 6月9日:改定案に反対する市民が政府機関へデモ行進を行った。約100万人が参加したとみられている
- 6月12日:警察が初めて、デモ参加者にゴム弾や催涙ガスを使用した
- 6月16日:改定案の完全撤回を求め、約200万人がデモに参加。香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官はこの前日、改定案の審議棚上げを発表していた
- 7月21日:白いTシャツを着た集団が、地下鉄で通勤途中の市民を襲撃。この日、一部のデモ参加者が香港にある中国政府の出先機関「香港連絡弁公室」を攻撃した
- 8月3日:デモ参加者が催涙ガスやゴム弾、ビーンバッグ弾に備え、マスクや防護服を用意するようになる
- 8月11日:警察が地下鉄駅構内でデモ参加者と衝突し、閉鎖された空間で催涙ガスを使用
- 8月12日:香港国際空港で座り込みデモが行われる。警察はこの日、前日に起きた衝突でデモ参加者に扮装した警察官を動員していたことを認めた
- 8月25日: 警察が放水砲を初めて使用。また、警告射撃として実弾が発砲される。デモ参加者は火炎ビンなどで応戦した
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黒い服に身を包んだデモ参加者たちは、レンガや火炎ビンなどを警察に投げつけていた
香港政府は「逃亡犯条例」改定案の審議を棚上げしているものの、デモ参加者は条例の完全撤回に加え、デモに対する警察の暴力的な対応への捜査も求めている。
ここ数週間はデモ参加者と警察の衝突が続き、警察は催涙ガスやゴム弾を使って対応している。8月上旬にはデモ参加者が香港国際空港を占拠し、数百便が欠航となった。
こうした中、香港の地下鉄MTRは週末に主要なデモが行われた地域の駅を閉鎖したとして非難を浴びている。MTRはかねて、デモ参加者「専用」の交通機関になっていると中国から批判されていた。
また、香港の基本法起草委員会の譚恵珠副委員長は、中国の軍隊は香港の社会不安に介入できるとの見方を示した。
譚氏は中国で開かれたセミナーで、「香港に駐留している兵士は、駐屯地にいるだけのかかしではない。『一国二制度』の重要な一部分だ」と語った。