ファーウェイ、5G技術を他社に「販売」 創業者が提案

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中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者、任正非氏
中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者、任正非氏は12日、同社が持つ第5世代移動通信システム(5G)のノウハウを他社に販売する意向を表明した。アメリカなどが指摘しているセキュリティーの懸念を拭い去る狙いがあるとみられる。
任氏は、5G技術のライセンスを取得した企業は「ソフトウエアコードを自由に変更」できると述べた。購入する企業は、ソフトウエアの欠陥や不正アクセスを許す方法をみつけた場合、ファーウェイの関与なしに対処できるようになる。
ファーウェイはかねて、自社製品を通じて中国政府を支援し、他国の通信システムへのスパイや妨害行為に関わっているとの疑惑がかけられている。ファーウェイはこれを否定しており、同社は社員が保有する一般企業だと主張している。
現在、アメリカとオーストラリアがネットワークにおけるファーウェイ機器の使用を禁止している。
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任氏は、英誌エコノミストと米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、5Gノウハウを販売する考えを明らかにした。
ファーウェイの5G関連の特許やライセンス、ソフトウエアコード、技術関連の計画書、 生産工学のノウハウなどを対象にするという。
ニューヨーク・タイムズの取材で任氏は、「アメリカ企業が独自の5G産業を構築できるよう、(ファーウェイは)アメリカ企業と5Gのテクノロジーやテクニックを共有する用意がある」と語った。
「これによって中国とアメリカ、欧州で5Gの開発状況にバランスが生まれるだろう」
一方エコノミストでは、「利益をバランスよく分配することが、ファーウェイの生き残りにつながる」と述べた。
これらの報道について、ファーウェイの広報担当者は、内容が正確だと認めている。
5G開発、アメリカ企業に遅れ
5Gの基地局や関連機器の供給元としては、ファーウェイを除くと現在、ノキア(フィンランド)やエリクソン(スウェーデン)、サムスン電子(韓国)、中興通訊(中国)などの選択肢がある。
アメリカのシスコやデルEMC、ヒューレット・パッカードなども5G関連技術を開発しているものの、インフラ方面の専門家がいないのが現状だ。
米企業がファーウェイの技術を購入・活用した場合、ファーウェイにはライセンス料以外の利点がある。
ファーウェイのメリット
米政府は現在、ファーウェイが米企業の技術を使わないよう制限をかけている。そのため、ファーウェイは自社のスマートフォンに、グーグルアプリをインストールできない状況にある。
しかし5G技術の提供によって、こうした制限が解除される可能性があるという。
また、5Gには2種類のコーディング技術を採用しており、このうちファーウェイは電池寿命の長い「ポーラ符号」を使っている。一方、西側の企業の多くは「低密度パリティ検査(LDPC)符号」を用いている。
ポーラ符号がより広範囲で利用されれば、ファーウェイは機器メーカーからの特許料が増えるという利点もある。
専門家の反応は?
イギリスの東洋アフリカ研究学院(SOAS)のスティーヴ・ツァン教授は、今回のファーウェイの提案は「異例のもの」と話した。
ツァン教授は、「北米や西欧、アジア・太平洋でのファーウェイの活動を最小限にしようというトランプ政権の政策を回避できないと考えての動きかもしれない」と語った。
「しかし、ノキアやエリクソンが興味を示すとは考えにくい。アメリカ企業が、これがアメリカ最高のテクノロジーだと、トランプ政権をどうやって説得するのかも想像し難い」
「もし説得できなければ、すぐに時代遅れになってしまうような技術に数百億ドルをかけようとは思わないだろう」
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一方、シンクタンクの欧州国際政治経済研究所のホスク・リー=マキヤマ氏は任氏の提案は失敗するとの見方を示している。
BBCの取材に対しリー=マキヤマ氏は、「ファーウェイは何が問題なのかを履き違えている」と説明した。
「問題はヴェンダーとしてのファーウェイの信用度ではなく、中国政府がファーウェイに課している法的責任だ」
「中国の国家情報法では、中国国民や企業に対してあらゆるデータや『通信機器』の引き渡しを定めている。拒否すれば厳しい罰則・制裁が待っている。ファーウェイがアメリカ企業にライセンス貸与した機器やソフトウエアもこの法の対象になる。また、ライセンスを買った企業や情報機関が、侵入路を見つけるために何百万ものコードを監視するのは不可能だ」
しかしそれでも、この提案は「賢い動きだ」とツァン教授は指摘する。
もしこの提案が拒否されても、ファーウェイは西側の信用を得るため、相当な努力をしていると示せるからだという。