サウジ空爆、「イランが中東揺るがしている」=NATO事務総長

Fire at Saudi oil facility Image copyright Reuters
Image caption ドローン攻撃を受け炎上する、サウジアラビアの石油関連施設

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は16日、サウジアラビアの世界最大の石油処理施設が空爆されたことについて、地域の緊張が高まることを「非常に懸念している」と述べ、イランを責めた。

ストルテンベルグ事務総長はまた、イランが「中東地域全体を揺るがしている」と述べた。

米が被害写真を公開

これに先立ち、イランが空爆に関与したと主張するアメリカは、「未曽有の」空爆被害を捉えた衛星写真を公開した。

Image copyright US government / Digital Globe
Image caption 米政府が公表した衛星写真では、アブカイクにある世界最大の石油処理施設が損傷していることがわかる

一方、イランのハッサン・ロウハニ大統領は、空爆はイエメン人による対抗措置だとし、関与を否定している。

イランが後押しするイエメンの反政府武装組織フーシ派が、空爆を実行したと声明を出している。

イランは首脳会談を否定

イランは、今月下旬の国連総会にあわせて、ロウハニ大統領とトランプ大統領が会談する可能性を否定した。

これまでは、イラン情勢をめぐる緊張緩和のため、両首脳の会談が取りざたされていた。

フーシ派関与、米は懐疑的

アメリカ側は、フーシ派に今回ほどの規模や精度の空爆を、なんらかの援助なしに行う能力はないと見ている。

イエメンのフーシ派拠点を空爆しているサウジアラビア主導の有志連合軍は、イランが武器を提供したと考えている。

ストルテンベルグ事務総長はAFP通信のインタビューで、「われわれは、すべての関係国に対し、中東地域全体に負の影響をもたらす可能性のある、このような攻撃が再び起こらないよう求める。われわれはまた、緊張悪化を非常に懸念している」と述べた。

空爆は異例だったのか

フーシ派は過去にも、サウジアラビアの石油パイプラインや人口密集地を標的に、ロケット弾やミサイル、ドローンを発射している。これまでに少なくとも民間人4人が死亡した。

しかし今回は、アブカイクにある世界最大の石油処理施設とクライス油田を空爆するという、これまでよりずっと大規模な攻撃だった。

空爆を受けた石油施設は炎上し、日量570万バレルの生産が停止した。これは、世界供給量の約5%に相当する。15日には原油価格が急騰し、約4カ月ぶりの高値水準となった。

複数の専門家によると、石油施設の全面再開には数週間かかる見通し。

アメリカの主張

ドナルド・トランプ米大統領は16日、イランが今回の空爆に関与しているようだとしつつ、「われわれは絶対に誰の仕業かを突き止めたい」と述べた。

トランプ氏はまた、アメリカは「どこよりも」紛争への「用意ができている」が、そうなることは避けたいと述べた。

マーク・エスパー米国防長官は、立て続けにツイート。「アメリカ軍はわれわれ政府機関と共に、この未曽有の攻撃に対処するため、そしてイランによって弱体化されつつある国際的規則に基づく秩序を守るため、友好国と連携している」と述べた。

ドローンと巡航ミサイルの可能性

米当局者によると、攻撃された石油施設では、弾着点が19箇所確認された。ドローン(小型無人飛行機)と巡航ミサイルを使った可能性があるという。

イランあるいはイラクが関与か

この当局者は複数報道機関に対し、石油関連施設から南西に位置するイエメン国内のフーシ派支配地域からではなく、施設から北あるいは北西方向から攻撃があったと証言した。

つまり、発射地点はペルシャ湾の北にあるイランあるいはイラクである可能性を示すものだが、確証は示されなかった。

イラク側は、イラク領内からの空爆を否定している。アデル・アブドゥル・マフディ首相は16日、マイク・ポンペオ国務長官と15日に電話会談し、米国はイラク側の主張を支持すると伝えられたと明かした。

Image caption 空爆されたアブカイク(Abqaiq)の石油処理施設と、首都リヤド(Riyadh)近郊のクライス油田(Khurais oil field)。石油処理施設から立ち上る黒煙が確認できる  出典:米環境保護庁(EPA)/米航空宇宙局(NASA)

各国の反応

イエメン内戦の仲介を担当するマーティン・グリフィス国連特使は16日、今回の空爆に誰が関与しているのかは「完全には明らかになっていない」が、この攻撃によって、地域紛争が勃発する可能性が高まったと述べた。

イギリスのドミニク・ラーブ外相もまた、誰が空爆に関与しているのかについては確信はないとしている。一方で、この空爆は「むちゃくちゃな国際法違反」だと述べた。

中国や欧州連合(EU)はそれぞれ、当事者に対し自制するよう求めた。

Image caption 青色の地域は親サウジアラビア(サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、バーレーン)、オレンジ色は親イラン(イラン、イラク)、灰色は国内で立場が割れている(シリア、レバノン、イエメン)、緑色は中立(イスラエル)

石油市場への影響

15日夜の原油価格は一時20%高と、1日の上昇としては1991年の湾岸戦争以来28年ぶりの大きさを記録した。

ブレント原油先物は、前週末より1バレル11.73ドル(19%)上昇し、71.95ドル。ウェスト・テキサス・インターミディエイトは15%上昇の63.34ドルだった。

ただし、ドナルド・トランプ米大統領が必要ならアメリカの備蓄放出を認めるとツイートしたことで、上昇が抑制された。

トランプ氏は、市場への影響を軽くみせようと努めた。

リック・ペリー米エネルギー長官はビジネス専門チャンネルの米CNBCに対し、備蓄放出が必要かどうか判断するには時期尚早だと述べた。

イラン情勢をめぐる緊張がさらに悪化した場合、原油価格が高騰するのではとの懸念が浮上している。

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
イエメン内戦 隠された現実

イエメンでは、2015年にフーシ派が首都サナアを占拠し、アブドルラッボ・マンスール・ハーディ暫定大統領が首都を脱出して以降、内戦が続いている。ハーディ政権を支援するサウジアラビアは、反政府勢力に対抗するため、周辺アラブ諸国の連合軍を主導している。

国連によると、こうした紛争で犠牲になったイエメンの民間人は、少なくとも7290人に上る。また、人口2400万人の約8割が、人道的支援や保護を必要としている。その中には、食糧支援で命をつないでいる約1000万人も含まれる。

<解説>なぜサウジアラビアとイランは辛辣な敵対関係にあるのか――ジョナサン・マーカス、BBC防衛外交担当編集委員

サウジアラビアとイランは地域支配をめぐる壮絶な争いでこう着状態にある。

数十年におよぶ確執は、信仰の違いによって悪化している。両国はそれぞれ、イスラム教の2大宗派を信仰している。イラン人の大部分はシーア派で、サウジアラビアではスンニ派が多数を占める。

両国は直接的な争いはしていないものの、同地域における様々な代理戦争に関与している。

(英語記事 Nato chief 'extremely concerned' after Saudi attack

この話題についてさらに読む