トランプ政権は通話隠ぺいか トランプ氏は内部告発者を「スパイ」と

US President Donald Trump and Ukrainian President Volodymyr Zelensky meet in New York on September 25, 2019, Image copyright AFP

ドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の電話会談について、ホワイトハウスの法務顧問たちは、内容に国家機密を含まないにもかかわらず、国家機密専用のデータベースに保存するという異例の対応をとっていた――。大統領の通話内容について情報当局者が書いた書簡には、こうした内容が含まれていたことが明らかになった。複数のメディアによると、この内部告発者は米中央情報局(CIA)の職員だという。トランプ氏はこの内部告発者を「スパイに等しい」と呼び、かつてアメリカがスパイを処刑していた時代に言及するなど、強く非難している。

米連邦議会は26日、情報当局者が国家情報長官代行や上下両院の情報委員長に送った手紙を公表した。トランプ氏が今年7月の電話会談でウクライナの大統領に話した内容について、情報機関の内部告発者が監察総監や国家情報長官代行などにあてた手紙には、トランプ氏が「大統領権限を利用し、2020年米大統領選で外国の介入を得ようとしている」ことを、複数の政府担当者が懸念していると書かれている。その上でこの内部告発者は、大統領の行動が「深刻もしくは甚だしい問題」で、「法律に抵触もしくは違反した」と指摘している。

米紙ニューヨーク・タイムズ米紙ワシントン・ポスト、ならびにロイター通信は、この内部告発者はホワイトハウス勤務の経験があるCIA職員だと伝えている。トランプ氏は内部告発者について「スパイのようなもの」だと、その正体追及を強く求めている。かつてアメリカが、スパイ活動や国家反逆罪に死刑を適用していたことにも言及したと報道されている

内部告発者の担当弁護士は、告発者が誰か特定しようとすれば、その人を「危険にさらす」ことになりかねないと警告した。また、トランプ氏のこの発言には下院の民主党幹部も非難声明を発表した。

アメリカでは大統領がホワイトハウスから外国首脳と電話で会話する際、首席補佐官や国防総省、国防省、国家安全保障会議などのスタッフが、通話内容を聞いているのが慣例となっている。大統領執務室で大統領に同席しているとは限らない。また、ホワイトハウスのシチュエーション・ルーム(危機管理室)でのやりとりは、安全保障政策に経験のある党派性のない専門職員がモニターしている。

7月25日の電話の場合、内部告発者の手紙によると、「慣例どおり、政策担当やシチュエーション・ルームの当番など、10数人のホワイトハウス職員が電話の内容を聞いていた」という。トランプ氏と共に大統領執務室にいたかは、明らかになっていない。

重要機密用のコンピューターに

機密扱いを解除して議会が公表した、内部告発者の書簡によると、ホワイトハウスの法務顧問たちは、通話内容に国家機密が含まれていなかったにもかかわらず、特にデリケートな国家機密を保管するためにある通常とは異なる電子データベースに、この電話の通話記録を保存するよう、ホワイトハウス職員に指示した。また、こういう対応は過去にも何度か行われていたという。

さらに手紙を書いた情報当局者によると、トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と直接あるいは電話で会談するかどうかは、ウクライナ側に自分たちの要求に「協力するつもりがある」か、ウクライナ大統領が「どう行動するか」次第だと、複数の米政府関係者が認識していた。また、7月25日にウクライナの大統領と電話会談する以前に、ウクライナへの軍事援助を停止するよう、大統領が自ら行政管理予算局に指示したという。

26日には民主党が多数を占める下院の情報委員会で公聴会が開かれ、ジョーセフ・マグワイヤ国家情報長官代行が宣誓証言。その中で長官代行は、内部告発者は「誠実に行動」し、「正しいことをした」と述べた。今回のウクライナ疑惑が浮上して以来、トランプ氏をはじめホワイトハウスは、内部告発者は党利党略のために動く民主党支持者だと反論していた。

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トランプ氏は「就任の誓いと憲法と安全保障を裏切った」 ペロシ下院議長

この電話会談を理由に、トランプ氏に対する正式な弾劾調査の開始を発表した民主党幹部のナンシー・ペロシ議長は、トランプ氏が2020年大統領選で戦うことになる可能性のある民主党のジョー・バイデン前副大統領の評判を汚そうとして外国の手助けを求め、その交渉材料として軍事援助を利用したと非難している。

トランプ氏は、確かにゼレンスキー大統領と電話で話す数日前に、4億ドル分の軍事援助を自ら停止したと認めたものの、バイデン親子への捜査をウクライナに働きかけるための圧力ではなかったと説明している。

内部告発者の手紙公表と下院情報委公聴会の後、ホワイトハウスで記者団を前にしたトランプ氏は、弾劾手続きは「またしてもでたらめな魔女狩り」で、「許されてはならない」と反発した。

「民主党がこの国にしていることはみっともない話で、許されてはならない(中略)裁判所で法的手段を使うなどして、阻止する方法があるべきだ」とトランプ氏は述べた。

トランプ氏が国連総会のため訪れているニューヨークのアメリカ代表部で25日に、内部告発者に情報提供した者は「ほとんどスパイに等しい」と職員に話す録音音声を、米紙ロサンゼルス・タイムズが伝えた。

トランプ氏は「この国では以前は、みんな賢かったころには、どうしたか知ってるだろう? そうだろう? スパイとか国家反逆罪とか、昔は今とは違う対応をしたものだ」と述べている。この発言は、米政府が過去にスパイに対して死刑を適用したことへの言及とみられている。

トランプ氏のこの発言について、下院の外交委員会、情報委員会、監督・政府改革委員会の委員長3人(いずれも民主党)は連名で、「我々は大統領による攻撃を非難するし、共和党の同僚議員たちにも同じように非難するよう呼びかける。連邦議会はこの内部告発者と、全ての内部告発者を守るため、全力を尽くさなくてはならない。この国の指導者がこのように暴力を使うと脅すことで、内部告発プロセスそのものを萎縮(いしゅく)させる恐れがある。それは、この国の民主主義と国家安全保障に深刻な悪影響をもたらす」と声明を発表した。

内部告発者は手紙で何と

情報当局者は7月25日の電話会談について、複数の政府関係者から聞いた話として、逐語の通話記録をはじめとする内容の記録を一切外部に漏らさないよう、ホワイトハウス幹部が対応したと書いている。

「このことから、ホワイトハウス関係者は電話の内容がいかに深刻なものか理解していたと、私は強く感じた」と、告発した情報当局者は書いた。

ホワイトハウスの法律顧問たちは通話の記録を、「秘密作戦など暗号で保護されるレベルの重要機密を保管するためにある、他のネットワークにつながっていないコンピューター」に保存するという異例の措置を、職員に指示したという。

告発者によると、トランプ政権では国家安全保障に関わる機密ではない内容でも、政治的にデリケートな内容の記録を、こうして機密用のデータベースに保存することが、以前から行われていたという。

告発者は手紙の冒頭で、自分は一連の出来事を「直接目撃したわけではない」と明記しつつ、複数の政府職員が話す内容は「ほとんど常に一致していた」ため、自分が聞いた話は信頼できると判断したと書いている。

議会公聴会では何が

下院情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党)は、この日の公聴会冒頭で、トランプ大統領がウクライナの大統領相手に「まさに組織犯罪に典型的な、ゆすりをかけた」と非難した。

これに対してトランプ氏を支持する共和党のデヴィン・ヌネス筆頭委員はこれに反発し、「大統領に対してまたしも情報戦争を仕掛けけて、またしても主要メディアの協力を獲得するに至った見事な才能について、民主党におめでとうと言いたい」と皮肉った。

公聴会に出席したマグワイヤ国家情報長官代行に対してシフ委員長は、内部告発者の手紙を公表する前になぜホワイトハウスの助言を求めたのか問いただした。

これに対してマグワイヤ氏は、告発内容に大統領特権で保護されるべき内容はあるか確認したかったのだと説明。さらに、「本件に関する何もかも、まったく前例がないことだと思う」と述べた。

バイデン氏については

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バイデン氏とウクライナをめぐる疑惑とは何なのか? BBC特派員が説明

告発者の手紙によると、就任間もないゼレンスキー大統領との電話でトランプ氏は、2016年にウクライナのヴィクトル・ショーキン検事総長が解任された件について話し合った。

トランプ氏は、バイデン前副大統領の息子でウクライナのガス会社ブリスマの取締役だった息子のハンター・バイデン氏について触れ、副大統領だったバイデン氏がショーキン氏の解任をウクライナに働きかけることで、ハンター氏の訴追を回避したのではないかと述べた。

トランプ氏はさらにゼレンスキー大統領に、ウィリアム・バー米司法長官や自分個人の顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏と連携しながら、この件を調べるよう働きかけた。

ウクライナのショーキン前検事総長は、ブリスマの所有者ミコラ・ズロチェフスキー氏による不正取引や資金洗浄の疑いを捜査していた。

バイデン氏は副大統領として、複数の欧州首脳と共に、ショーキン検事総長は汚職摘発に及び腰だと批判し、解任を求めていた。ショーキン氏の後任はその後、10カ月にわたりブリスマ社を調べたが、捜査はそこで終わった。

ハンター・バイデン氏のブリスマ役員としての任期は、今年4月に満了している。

バイデン氏側に不正行為があったという証拠は明らかになっていない。

米司法省は25日、トランプ氏はバー司法長官に対して、ウクライナ政府にバイデン親子を捜査させるという内容を話していないし、バー長官はウクライナ政府と接触していないとコメントした。

(英語記事 White House 'tried to cover up details of Trump-Ukraine call' / Trump, Ukraine and impeachment

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