合意なし離脱、公的債務が「過去50年で最高に」=英シンクタンク

Shoppers on Oxford Street, London Image copyright Reuters

イギリスのシンクタンク、財政研究所(IFS)は7日、イギリスが欧州連合(EU)との合意なくEUを離脱した場合、「比較的穏やかな」シナリオであっても公的債務が1960年代以降で最高の水準まで跳ね上がるとの予測を発表した。

それによると、イギリス政府の公的部門純借入額(PSNB)は1000億ポンド(約13兆2000億円)まで増加し、歳入の9割に達する可能性が高い。つまり、その年にイギリスが国家として得た収入とほぼ同額を政府が借金として抱えることになる。

IFSのポール・ジョンソン所長は、「政府はいま、効果的な財政の錨(いかり)がない状態で漂っている」と指摘した。

「経済と財政が直面している非常に高い水準の先行き不透明感とリスクを考えれば、政府は今後の予算で恒久的な追加減税を提案すべきではない」

「しかし合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)となった場合は、慎重に的を絞った一時的な減税と支出拡大を行い、経済を支援する必要があるだろう」

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とは言うものの、合意なし離脱のコストを織り込むより先に、政府は財政支出に関する自分たちのルールを破るつもりでいると、IFSは指摘した。

IFSの予測では、来年のイギリス政府の借り入れは国内総生産(GDP)の2.3%に当たる500億ポンドを超える見通しだ。現在の歳出ルールでは、政府の借金は歳入の2%までしか認められない。

さらにIFSによると、日々の歳出は、最大野党・労働党の2017年に公約した水準に達する可能性が高いという。労働党の公約は、当時の保守党が示していた財政計画よりも高い負担が納税者にかかると予想されていた。

財務省報道官はIFSの指摘を受け、「9月に発表した2020年度財政支出レビューは、従来の説明の通り、既存の財政ルールに沿った形で、医療と教育と警察という国民にとっての優先事項に重点的に支出を振り分けた。それ以外では、財務相がすでに明らかにしたように、緊縮財政のページをめくり次の段階へ進むにあたり、財政枠組みを見直すことになる。その中では、財政の長期的な持続可能性を視野に入れた判断を続けるため、公的支出について財政の錨を維持するつもりだ」とコメントした。

経済成長にとっては「EU残留が最善」

IFSの報告書に参加したシティ・グループのイギリス担当主任エコノミストを務めるクリスチャン・シュルツ氏は、EU離脱を決めた2016年の国民投票以来、イギリス経済はすでに約600億ポンド縮小していると話した。

「企業投資は、EU残留に決まった場合と比べて最大20%下がっており、生産性と賃金の伸びを妨げている」

一方でシュルツ氏は、ブレグジットがこれ以上遅れれば先行き不透明感は高まり、投資が伸び悩むほか、経済成長も年間1%ほどにとどまるだろうと分析した。

「成長の観点から言えば、EU離脱協定がまとまれば成長率は1.5%と少しだけ改善する。しかしそうなれば、離脱回避のチャンスはなくなってしまう」

「合意なしブレグジットでは、相当の景気刺激策があったとしても、向こう2年は成長がゼロになる可能性がある。今後数年の経済成長にとっては、EU残留が最善のシナリオだ」

(英語記事 No-deal Brexit 'would push UK debt to 50-year high'

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