大学の課題、白紙で出して満点 忍者の授業で三重大・羽賀さん

羽賀英美さんは三重大の「忍者部」に所属。手裏剣を投げる練習などをしているという
大学のリポートを白紙で出したのに満点――。三重大学(津市)で、教育のあり方を根底から覆すような珍事が起きた。
人文学部1年の羽賀英美(えいみ)さん(19)は今年5月のある日、長い時間をかけて水に漬けた大豆をつぶし、インクをつくった。
忍者の「あぶり出し」を使って、課題のリポートを書くためだ。
「あぶり出しは、小さいころに本で読んで知っていました」と羽賀さんはBBCの取材で説明した。
「どうか同じことをする人がいませんように、と願っていました」
創作点があると聞いて
羽賀さんが忍者に興味をもったのは、幼稚園のころテレビで、アニメ「忍たま乱太郎」を見たのがきっかけだった。
今春、三重大に入学後、山田雄司教授(日本古代・中世信仰史)の「忍者の歴史」の授業をとった。伊賀流忍者博物館(三重県伊賀市)を訪ね、感想をリポートにまとめて提出する課題が出された。
「創作性も点数に入れるという先生の話を聞いて、他の人とかぶらない面白いものをつくろうと決意しました」と羽賀さんは言う。
「しばらく考えているうちに、あぶり出しを思いついたんです」
羽賀さんのあぶり出しのリポート。左側はまだあぶられていない。「紙をあぶってお読み下さい」と書いた紙(右)を添えて提出した(羽賀さん提供)
羽賀さんは近所のスーパーで大豆を買って来ると、水にひと晩漬け、ミキサーでつぶし、布で搾った。
その大豆汁に水を足してインクをつくった。あぶり出しに適当な濃度にするのに、10回ほど試行錯誤を重ね2時間近くかかった。できたインクと小筆を使い、和紙にリポートをしたためた。
和紙の上の文字は、乾くとやがて見えなくなった。教授が白紙のリポートを見てゴミ箱に捨ててしまわないようにと、小さな紙にふつうのペンで「あぶってお読み下さい」と書き、リポートに添えた。
「迷わず満点」
リポートを最初に見たとき、「驚きました」と山田教授は語る。
「暗号で書くなどしたリポートは以前もありましたが、あぶり出しは初めてでした」
「最初は、本当に文字が出てくるんだろうかとちょっと疑いました。でも、自宅のガスコンロで実際にあぶってみたら、文字がしっかり出てきた。『上出来だ!』と思いました」
「迷わず満点をつけました。ただ実は、全部は読んでないんです。もったいなくて最後まであぶれませんでした。メディアがこの話を聞きつけて、写真を撮りたいと言ってくることも考えられましたので」
今回のリポートでは、中身より手法を重視したと、羽賀さんは言う。
「少なくとも、独創的なリポートにする努力は認めてもらえるんじゃないかと思っていました」
「だからそんなに悪い点にはならないだろうと。内容は特別すごいものではありませんでしたが」