クルド人組織、シリア政府が支援で合意 トルコの進攻で

Mourners attend a funeral, for Kurdish political leader Hevrin Khalaf and others in the Kurdish town of Derik on 13 October 2019. Image copyright AFP

シリアのクルド人民兵組織は13日、トルコ軍の進攻を受けている北部への部隊派遣にシリア政府が合意したと発表した。シリアの国営メディアは、すでに政府が北部に部隊を派遣したと伝えている。

トルコは9日から進攻を開始。週末の間に、シリア民主軍(SDF)の勢力下にある地域を空爆し、国境近くの2つの町を制圧した。

この攻撃で、トルコ側とシリア側の市民と戦闘員に多数の死者が出ている。

クルドの高官はまた、トルコの攻撃の最中に、北部アイン・イッサのキャンプから過激派勢力「イスラム国」(IS)の外国人戦闘員の親族800人近くが逃亡したと発表している。

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トルコは、テロリストに指定しているクルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」を、国境地域から完全に排除して「安全地帯」を確保したい考え。

YPGはSDFの大部分を占めており、SDFはIS掃討作戦でアメリカ軍と協力していた。

しかし、アメリカのドナルド・トランプ大統領は6日、シリア北東部からの米軍撤退を突然発表。トルコによるクルド人部隊への軍事作戦に関与しないとした。

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クルド人とは なぜトルコが攻撃しているのか

そのため、トルコの進攻とアメリカの撤退には国際社会から非難の声があがっている。

トルコはまた、シリア内戦などでトルコ領内に避難してきたシリア難民360万人のうち、最大200万人をこの安全地帯に移住させたいとしている。難民のほとんどはクルド人ではないという。

トルコの一連の行動については、クルド人に対する民族浄化だとの批判も上がっている。

シリア政府とクルド人組織が合意

シリア北部のクルド人当局とシリア軍は合意の一環として、トルコとの国境全域に派兵する。

声明によると、派遣されたシリア軍部隊は「今回の進攻に対抗し、トルコ軍と外国人部隊が侵入した地域を解放する」ためにSDFを支援するという。

さらに「アフリンのようなトルコ軍に占拠されたシリアの都市を解放する道につながる」とも述べている。

トルコ軍と親トルコ派のシリア反政府組織は2018年、2カ月にわたって北部アフリンを攻撃し、制圧している。

Image caption シリア国内の勢力図。青色がシリア政府、緑色がクルド人組織が制圧している場所。北西部の赤い地域にトルコ軍と親トルコ派の反シリア政府組織が進攻している。トルコは国境沿いの斜線部分に「安全地帯」の設置を要請している。また、オレンジ色の地域にはイスラム過激派が、黄色い場所には反シリア政府組織がいる。

アメリカの支援を失ったクルド人側にとって、シリア軍との合意は大きな助力を得たことになる。SDFは米軍の撤退を「背後から刺されたようだ」と非難している。

これまでにシリア軍がどのような支援を行ったかは明らかになっていない。

しかし、SDFのマズローム・アブディ氏は、シリアのアサド政権および同盟国のロシアとの合意には「痛みを伴う妥協」があるだろうと認めている。

「彼らの約束を信じていない。正直に言えば、誰を信じるべきかを判断するのは難しい。しかし妥協とクルド人の虐殺のどちらかを選ぶ必要があるなら、間違いなくクルド人の命を選ぶ」

アメリカ軍はシリア北部から撤退

アメリカのマーク・エスパー国防長官によると、トルコの進攻が予想よりも進んでいること受け、アメリカ軍は最大1000人をシリア北部から撤退させている。

エスパー氏は現在の状況は「容認できない」と説明した一方、SDFがトルコの進攻に対してシリア政府およびロシアと「協定を結ぼうとしている」と話し、米軍が「2つの敵対勢力」に板ばさみになると述べた。

エスパー氏のこの発言から数時間後、シリアは「トルコの進攻に立ち向かう」ため軍を北部に派遣したと発表した。具体的な場所は明らかにされていない。

トランプ大統領は13日、中東の紛争に関わるのは間違いで、「たまには」戦いに関わらないことが「非常に賢明」なことだとツイートした。

トルコの侵攻状況は?

トルコ軍は現在も、シリア北部に深く入り込んで進攻を続けている。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は13日、すでに21カ所の村落を含む109平方キロメートルを制圧したと発表した。

また、国境近くの町ラス・アルアインを制圧したと話したが、SDF側は、トルコ軍を町の外側まで押し返したと述べている。

エルドアン氏は、ラス・アルアインから120キロほど離れたタル・アブヤドも制圧したと発表。イギリスを拠点とするシリア人権監視団(SOHR)も、トルコ軍がこの地域をほぼ勢力下に治めていると話している。

ラス・アルアインとタル・アブヤドは共に、トルコのSDFに対する進攻で目標とされていた要衝。

トルコ軍はさらに、協力する親トルコ派のシリア組織が、国境から30~35キロ離れたところにある主要道路「M4」を制圧したとしている。

犠牲者数が拡大

国境付近では、トルコとシリア双方の市民に犠牲者が出ており、その数は拡大している。

  • SOHRによると、シリア北東部では市民50人以上と100人以上のクルド人戦闘員が殺された
  • SDFはクルド人部隊の死者数は56人としているが、トルコは死者440人と発表している
  • トルコの報道によると、トルコ南部では市民18人が殺された
  • トルコ側は、トルコ兵4人と親トルコ派のシリア戦闘員16人がシリアで殺害されたと発表した

国連の人道問題調整事務所(OCHA)は、最大16万人の市民が避難を余儀なくされており、この数は今後も増えるとみている。また、国連職員の安全にも懸念があるとしている。

IS捕虜はどうなった

一連の戦闘は、ISの捕虜が収容されているキャンプがある地域で行われている。

アイン・イッサのキャンプからISの外国人戦闘員の親族800人近くが逃亡したとの発表を受け、クルド人がIS捕虜をとどめて置けないのではないかとの懸念が高まっている。

SOHRは、逃亡したのは100人だとしているが、逃亡先は分かっていない。

アイン・イッサのキャンプには1万2000人ほどの難民がおり、その中にはISとのつながりがあった外国人の女性や子どもなど1000人近くも含まれていた。

SDFは現在、7カ所の刑務所にISメンバーと思われる戦闘員1万2000人以上を収容している。このうち、少なくとも4000人が外国籍だという。

ISは12日に起きた自動車爆発について犯行声明を出し、シリアで新たな作戦を開始したと発表している。

一方、トルコは進攻中に発見するIS捕虜について責任を負うとしている。

(英語記事 Kurds strike deal with Syria army to resist Turkey

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