英外相、離脱協定案の可決に「十分な自信」 10月末の離脱断念せず

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Image caption 英下院は19日、離脱に関する法整備を終えるまでは離脱協定案を採決しないという議員案を賛成多数で可決した

イギリスのドミニク・ラーブ外相は20日、BBC番組「アンドリュー・マー・ショー」に出演し、今月31日に迫るブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)の離脱期限までにブレグジットを実現する「自信が十分ある」と述べた。

ブレグジットをめぐり英下院は19日、離脱に関する法整備を終えるまでは離脱協定案を採決しないという議員案を322対306で可決した。イギリスは10月31日にEUを離脱することになっているが、これによりボリス・ジョンソン首相は19日中にEUに離脱延期を要請することが義務付けられ、首相はEUに書簡を送った

しかしドミニク・ラーブ外相は、今週中に下院で協定案が可決され、期限までにブレグジットが実現するという自信が十分あると述べた。

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ラーブ外相は20日、BBC番組「アンドリュー・マー・ショー」に出演し、「議会がしかけるドタバタはあるものの、我々は今では離脱協定案の可決に必要な票数が獲得できたようだ」と述べた。

ラーブ氏は、ブレグジットの再延期を「ひどく不安に」思う「人がEUに大勢」いるとした上で、下院議員に対し離脱協定案について「先へ進め、議会を通過させ、実行する」よう求めた。

英政府は「離脱協定法案(WAB)」を成立させ、期限までにブレグジットを実現させるとしている。

一方、最大野党・労働党は2回目の国民投票実施を支持する姿勢を示している。

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なぜ下院はまた延期を求めたのか

英政府とEUは17日午前、ブレグジット条件を定めた新しい離脱協定案に合意した。

英議会は19日、37年ぶりに土曜日に審議を実施した。首相とEUが合意した離脱協定案について採決するのが週末審議の目的だったものの、離脱延期につながる議員提出の修正案を、下院(定数650)が322対306で可決したため、政府は離脱法案を週明けに提出する方針を示した。

元保守党のサー・オリヴァー・レトウィン議員が提出したこの修正案(レトウィン案)は、合意なし離脱は認めないと定めた「ベン法」にジョンソン首相を従わせるためのものだった。

レトウィン案の可決を受けて、ブレグジット実現に必要な離脱条件の採決「意味ある投票」は、21日か22日までに延期されることになった。

レトウィン氏本人は20日、BBCのアンドリュー・マー氏に対し、レトウィン修正は合意なし離脱を避けるための「保険」で、それが可決した以上、自分は今後はジョンソン氏の協定案を全面的に支持すると述べた。

「意味ある投票」が行われるかは、ジョン・バーコウ下院議長次第だ。ジョン・ピーナーBBC政治副編集長によると、バーコウ氏が投票を認める可能性はないと議会関係者は見ている。

ピーナー氏は、バーコウ氏は以前、「負ける人間が、負けるのは嫌だからといって」議論を繰り返す理由にはならないと明白に述べていることから、「激しい応酬が期待」されると付け加えた。

ジョンソン首相は19日、欧州理事会のドナルド・トゥスク議長(EU大統領に相当)宛てに、離脱期限の延期を求める手紙を送ったものの、署名しなかった。その一方で、「親愛なるドナルド」と同時に送った手紙では、延期は間違いだと書き、こちらには署名している。

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ランカスター公領相のマイケル・ゴーヴ氏は、レトウィン案に賛成票を投じた議員が「離脱プロセスを台無しにし、長引かせようとしているのは明らか」だと述べた。

ゴーヴ氏は英スカイ・ニュースのソフィ・リッジ氏に対し、10月31日の「離脱実現のための協定案がすでにある」ものの、EUが離脱延期要請を承諾するか保証がない今、英政府は、合意なき離脱が現実となった場合の緊急時計画「オペレーション・イエローハンマー」を発動すると述べた。

労働党の主張

労働党は、ジョンソン氏の協定案は経済や雇用、労働者の権利や環境問題といったほかの分野に悪影響を及ぼすとして、反対の姿勢だ。

サー・キア・スターマー影のEU離脱担当相は、ジョンソン氏が「ベン法」に従ってトゥスク議長に宛てた手紙に加え、真逆の内容のもう1通を送ったのは「子供じみている」と非難した。

スターマー氏は、BBCのアンドリュー・マー氏に対し、労働党は、合意内容に英国全体を含む関税同盟や、単一市場との連携などを含めたい考えだと述べた。

さらに、労働党は「2020年末の合意なし離脱への抜け道」ができないよう方法を探るという。ジョンソン氏の協定案をめぐっては、離脱移行期間の終わる2020年12月末までに、EU側と新たな自由貿易協定(FTA)を締結できなかった場合に合意なし離脱を避けるための規定がないと不安視する声が上がっている。

マンチェスター・セントラル選出のルーシー・パウエル下院議員(労働党)はスカイニュースに対し、「2回目の国民投票を求める人たちも、票数が足りないのは分かっている」として、ジョンソン氏の協定案は「今では成立する可能性が高い」と述べた。さらに、今後数日から数週間が「我々にとってブレグジットをまとめるための最後のチャンスだ」と付け加えた。

EUの対応

英政府から離脱期限延期の要請を受けたEUのトゥスク議長は、「どのように応じるか」加盟国首脳と相談する方針だとしている。

加盟27カ国の常駐代表は20日朝、15分ほど会談を行い、EU側のブレグジット合意を批准するための法的手続きを継続したという。EU側のブレグジット首席交渉官、ミシェル・バルニエ氏は常駐代表に対し、レトウィン修正が成立したからといって、英下院が離脱協定を否決したわけではないと説明したという。

離脱期限の延長には、EUの全加盟国の合意が必要となる。フランスのエマニュエル・マクロン大統領はすでに、新たな延期は誰の得にもならないとの考えを示唆している。

<解説>またしても下院議長次第に――ジェシカ・パーカーBBC政治担当編集委員

またしてもジョン・バーコウ下院議長に注目が集まっている。

離脱協定案について政府が求める採決、いわゆる「意味ある投票」を認めるかどうかは、下院議長次第だからだ。

一方で政権には、離脱協定の実施に必要な関連法の制定作業を進めたい考えもある。10月31日までに作業を終えて期限どおりにEUを離脱するため、必要な票数は得ていると閣僚たちは言う。しかし、多くの下院議員は様々な修正案を提出するつもりで、目前に迫った締め切りには縛られたくないという意見だ。

その一方で、EU側が、延期など認めないと言うことだってあり得る(可能性としては低そうだが)。それだけに英首相官邸としては、EUにはなるべく黙っていて欲しいと思っていることだろう。EUが延期を認めるかどうかはっきりしない間は、政府としては「さもなければ合意なし離脱になってしまう。だから離脱協定案に賛成した方がいいのだ」と議員たちに圧力をかけられるからだ。

(英語記事 PM has numbers to pass Brexit deal, says Raab

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