【ラグビーW杯】 「日本人はNZが大好き、我々にプレッシャーはない」 イングランド監督
トム・フォーダイス、BBCチーフスポーツライター

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の26日の準決勝を前に、イングランドのエディ・ジョウンズ監督は、プレッシャーを感じるのは自分たちではなく対戦相手のニュージーランドだと述べた。
ジョウンズ氏はまた、22日の練習を偵察する者がいたと話した。練習場を見下ろす高層住宅から、誰かが注視しているのを発見したという。ただ、誰だと思うかについては、言明しなかった。
「誰かがマンションから撮影していたのは間違いない。ただし、日本人ファンかもしれない」とジョウンズ氏は述べた。
「最初から分かっていたことだ。それで何か変わるわけでもない。楽しむだけだ」
オーストラリア人のジョウンズ氏は、「(自分も)以前はやっていた」が2001年以降はしていないと発言。イングランドもオールブラックス(ニュージーランド代表)の練習を盗撮するため、人を送り込んだと冗談を言った。
監督就任からの4年間で最大の試合に向けチームが準備を進めるなか、この日のジョウンズ氏は快活な様子を見せた。過去3回、世界王者に輝いているニュージーランドに対し、慎重に計算された皮肉を連発。同時に、イングランドへの期待は振り払おうとした。
「誰も我々が勝つと思っていない。ニュージーランドは、プレッシャーに向かって進むという言い方をするが、プレッシャーは今週、ニュージーランドを追いかけて行くはずだ」
「東京で今週もっとも忙しい男は、彼らのメンタルスキルのコーチ、ギルバート・イノウカだろう」
「向こうはW杯3連覇への期待というプレッシャーと向き合わないといけない。あちらの偉大な監督と主将にとっては最後の試合かもしれないし、そういったことについてもいろいろ考えるだろう」
「そうした考えが頭の中を行き交う。W杯の連覇はいつだって大変だ。向こうはそういうことも考えるだろうし、だからこそプレッシャーになる」
「ニュージーランド選手も人間だ」
イングランドは拠点を、東京都心から東京湾岸地域に移した。東京ディズニーリゾートの隣で、サポーターの多くが滞在している場所から1時間はかかる。
寒い雨の日の東京で、ジョウンズ氏は長年のライバルについて新しい話をするのを楽しんでいた。
彼が監督になってから、イングランドがオールブラックスと対戦したのは1回だ。フランカーのサム・アンダーヒルが勝利を決定づけるトライを決めたはずだったが、のちに取り消され、16-15で負けた去年の試合だ。
イングランドは2012年11月以来、ニュージーランドに勝利していない。だが、そのときの勝利を経験した選手が、今大会のチームには8人いる。その試合では、マヌ・トゥイランギが1トライを奪い、オウエン・ファレルがキックで14点を挙げた。
ジョウンズ氏はオーストラリア監督だった2003年、W杯準決勝のニュージーランド戦で衝撃的な勝利を収めている。加えて、2年前にブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズ(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの代表から選ばれたチーム)が、スティーヴ・ハンセン監督率いるニュージーランドと引き分けたときは、イングランドから15人がライオンズに選ばれていた。
「我々の選手はその試合を経験している。ニュージーランドへ行き、相手の庭でプレーした」、「ニュージーランドの選手も人間だと、うちの選手たちは承知している。他の選手と同様、血を流し、ボールを落とし、タックルを失敗するんだと分かっている」と、ジョウンズ氏は強調した。
「時間と場所を奪って、彼らにプレッシャーをかけるのが我々の仕事だ」
「ピッチに出て行って試合をするだけだ。うまくプレーできれば勝つし、うまくいかなくてもベストを尽くす」
「日本人はみなオールブラックスを応援」
両チームの過去16回の対戦でイングランドが勝ったのは、7年前にトゥイッケナム(ロンドン南西部)で勝利したときだけだ。
一方、オールブラックスは、先週の準々決勝でアイルランドから7トライを奪って46-14で圧勝し、1次リーグではスプリングボックス(南アフリカ代表)に23-13で勝利。W杯3連覇の可能性は高まっている。
ジョウンズ氏は、「日本には、2番目に応援しているチームはオールブラックスだという人が1億2000万人いる」と話す。
「オールブラックスのジャージーを着ている人をあちこちで目にする。私の妻さえもだ。彼らを応援するのはやめてくれと言わなくちゃならない」
「日本人は彼らが大好きだ。侍は日本の歴史で神秘的な存在だが、オールブラックスについても同じことが言える」
「日本人はハカ(ニュージーランド代表の試合前の踊り)と、それにまつわる色々なことが大好きだ。ニュージーランドは日本人にとって、日本の次に好きなチームなんだ」
「だから我々にプレッシャーはない。素晴らしい週にして、それを楽しんで、リラックスする。激しい練習をして、手にしたこの大きなチャンスを楽しむだけだ」
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