トランプ氏弾劾調査、電話会談同席の幹部「懸念覚えた」と証言

National Security Council Director for European Affairs Alexander Vindman arrives for a closed-door deposition at the US Capitol in Washington, DC on October 29, 2019 Image copyright Getty Images
Image caption 委員会で証言したヴィンドマン陸軍中佐は、ウクライナとロシアの米大使館での勤務経験がある

ドナルド・トランプ米大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾調査で、トランプ氏とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の電話会談を職務として聞いていた米政府幹部が29日、トランプ氏が政敵の調べを「要求」し、そのことに懸念を覚えたと下院司法委員会で証言した。

この幹部は、米国家安全保障会議(NSC)でウクライナ政策を担当するアレクサンダー・ヴィンドマン陸軍中佐。

両首脳の電話会談を直接耳にした幹部が、弾劾調査で証言するのはこれが初めて。

問題だと2度指摘

ヴィンドマン中佐は、7月25日の電話会談の際、トランプ氏が来年の大統領選で民主党候補になる可能性のあるジョー・バイデン前副大統領について捜査するよう、ウクライナ側に圧力をかけるのを聞いたとし、そのことは問題だと2度指摘したと述べた。

政府は関係者らに、議会から証人として召喚されても応じないよう求めている。現役将校のヴィンドマン氏は、証言することで処罰される可能性もあった。

ヴィンドマン中佐は、この日の委員会証言を前に声明を発表。それによると、7月10日にアメリカとウクライナ両政府の安全保障担当者が会合を開いたときから、事態を懸念するようになったという。

中佐によると、ウクライナがホワイトハウスのために捜査に着手する話題が出ると、当時のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が会合を打ち切った。

ヴィンドマン氏はまた、「ウクライナ側が首脳会談の話を持ち出すまでは、会合は順調に進んでいた」と指摘。ウクライナ側は両大統領が面と向かって会談することは、アメリカの支援継続に「極めて重要」だと考えているように感じたとした。

会合では、ゴードン・ソンドランド駐EU大使が、「トランプ大統領との会談を確実にするには、ウクライナによる特定の捜査の実行」が求められるという趣旨の発言をし、ボルトン氏とヴィンドマン氏が警戒感を覚えたという。

会合後の報告会でも、ソンドンランド大使は再び、「2016年大統領選をめぐる、バイデン家とブリスマ(バイデン氏の息子が取締役だったガス会社)に関する捜査の重要性を強調した」という。

ボルトン氏は9月にホワイトハウスを後にした。トランプ氏は解任したと発表したが、ボルトンウジは自ら辞職したのだと表明した。

「捜査要求は不適切」

中佐はさらに声明で、「ソンドランド大使には、彼の発言が不適切で、バイデン氏と息子の捜査を要求することは国家安全保障と無関係だと伝えた」ことを明らかした。

この会合の後、ヴィンドマン氏はNSCに懸念を伝えたという。また、7月25日の電話会談の後にも、反対意見を報告したという。

中佐は下院司法委への声明で、「外国政府に米国民の捜査を求めるのは適切とは思わなかった」、「ウクライナにアメリカの支援をほのめかしたのはまずいと思った」としている。

ヴィンドマン氏はまた、ウクライナにバイデン家の捜査をさせると、「間違いなく、ウクライナが維持してきた(共和、民主)両党の支援を失う結果となる」とした。

そして、「こうしたことはどれも、アメリカの国家安全保障を損なうことになる」と加えた。

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「反トランプ派の証人だ」とトランプ氏

ヴィンドマン氏の委員会証言が始まるころ、トランプ氏はヴィンドマン氏について、「Never Trumper 派の証人だ」とツイートした。「Never Trumper」とは「トランプを決して認めない」共和党員の意味で、トランプ氏がよく使う表現。

一部の保守派からは、中佐がソ連時代のウクライナ生まれだという点をとらえて、その信頼性を攻撃する声が上がっている。ブッシュ政権の法律顧問だったジョン・ユー氏はフォックス・ニュースで、中佐が堪能なウクライナ語でウクライナ当局者とやりとりしているのは「ウクライナ政府に助言しているのではないか」との司会者発言を受けて、「それをスパイ行為と呼ぶ人もいる」と発言した。

共和党のショーン・ダフィー前下院議員はCNNで繰り返し、ヴィンドマン中佐がウクライナ出身だと強調し、「誰でも出身国に親しみを感じるものだ」と述べた。

一方、共和党のリズ・チェイニー下院議員は、米陸軍の軍人として国のために長年働いてきた人に対するそのような中傷は「恥ずべき」ことだと、同党指導者たちと臨んだ記者会見で述べた。

それでも、複数の共和党議員は大統領を擁護。ケヴィン・マカーシー下院院内総務は、ヴィンドマン氏は「間違っている」と、「あの電話会談で弾劾に相当するものは何もない」と述べた。

ヴィンドマン中佐とは

ソ連時代のウクライナで生まれ、1979年に3歳で家族と共にニューヨークに移住した。

ニューヨーク州立ビンガム大学を1998年に卒業後、米陸軍に入隊し士官訓練を受けた。

韓国、ドイツなどに派遣されたほか、2004年にはイラク戦争でイラクに派兵され、路肩爆弾によって負傷。パープルハート(名誉戦傷)章を与えられた。

2008年以降はユーラシア専門の外交担当武官となり、ウクライナ・キエフやモスクワのアメリカ大使館で勤務した。帰国後は統合参謀本部のロシア担当武官となり、2018年7月からはボルトン大統領補佐官(当時)のもと、国家安全保障会議(NSC)で勤務。

NSCの一員として、今年5月のゼレンスキー大統領の就任式に出席した米使節団に加わった。

正式な権限を付与へ

ヴィンドマン氏の委員会証言が終わった数時間後、下院民主党は、トランプ氏の弾劾調査を担当する下院委員会に正式な権限を付与するという決議案を発表した。

民主党が多数派を占める下院は、31日に本会議で決議案を採決する予定。

この決議案に対し、ステファニー・グリシャム大統領報道官は「違法ないんちき行為」と批判した。

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米大統領を弾劾するには? 法学教授が説明

(英語記事 US officer raised alarm over Trump-Ukraine call

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