英下院、解散総選挙に一歩近づく 労働党が同意

総選挙が必要だと主張するジョンソン首相(29 日、英下院) Image copyright AFP Photo/ PRU
Image caption 総選挙が必要だと主張するジョンソン首相(29 日、英下院)

欧州連合(EU)離脱をめぐり紛糾が続いてきた英下院(定数650)は29日、12月中の解散総選挙の実施について審議を開始した。これまで選挙の前倒しに反対してきた最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首が、総選挙に応じる方針を示したため、総選挙が決まる可能性が出たものの、労働党内には総選挙に反対する声が根強い。

ボリス・ジョンソン英首相は同日、12月12日を総選挙の投票日とする法案を下院に提出した。同日午後2時前に審議を開始した下院は、同日夕(日本時間30日未明)から採決に入る見通し。

下院審議の冒頭で、労働党のステラ・クリーシー議員による、政府法案に対する議員修正案の提出を認めるという提案が、312対295で可決された。

これに続いてジョンソン首相は、自分の離脱案に反対してきた議員たちはブレグジット(イギリスのEU離脱)を果てしなく延期して時間稼ぎをしたいだけだと激しく非難。これまでの不透明な状態が続くことは国益を損い、政治への信頼を侵食しているため、議会の膠着(こうちゃく)状態を打破するには、もはや総選挙しかないと強調した。

続いてコービン党首は、ジョンソン首相が「民主主義を窒息させようとしている」と非難すると共に、国民を傷つける合意なし離脱の可能性が排除されたため解散総選挙に応じることにしたと説明した。すると、労働党やスコットランド国民党(SNP)から、総選挙に反対する発言が続いた。

コービン党首はこれまで、離脱条件についてEUと合意のないブレグジット(イギリスのEU離脱)の可能性がなくならない限り、総選挙の前倒しには応じないという立場だった。しかし、EUが離脱期限の延期に応じ、合意なし離脱の可能性はなくなったとEU加盟各国から確約を得たため、総選挙に応じると姿勢を変更した。ただし、党内には総選挙に反対する声もある。

政府法案への修正が認められたことを受け、労働党は政府法案について16歳と17歳のイギリス人と、イギリスに定住しているEU加盟国市民にも投票権を与えるという修正案を提出した。スコットランドやウェールズの議会は、16歳と17歳に投票権を認めている。この修正案が可決された場合、実現のための制度整備にはかなりの時間がかかることが予想される。

「先鋭的な選挙戦」と労働党

Image caption 「総選挙に臨む準備はできている」と表明した野党・労働党のコービン党首(29日、ロンドン)

審議開始に先立ち、コービン党首はロンドンの労働党本部で、総選挙に応じると発表した。コービン氏の周りに並んだ党幹部は、その発表に歓声をあげた。

コービン氏は、「我々は選挙の準備が出来ていると、私は一貫して言い続けた。選挙を支持するかどうかは、合意なしブレグジットの可能性が排除されるか次第だとも、ずっと言い続けてきた」と強調した。

「(加盟国の離脱条件を定めるリスボン条約)第50条を1月31日まで確かに延期すると、EUからただいま連絡があった。加盟する全28カ国から、合意なしブレグジットの可能性はなくなったと保証された。今後3カ月は合意なし離脱が排除されるという、我々の条件が満たされた」とコービン氏は述べた。

その上で、「この国が今まで見たこともないような、最も野心的で先鋭的な選挙戦を、今から開始する」と強調した。

イギリスでは首相に議会解散権はなく、下院の同意が必要。少数与党・保守党を率いるジョンソン首相は9月初めからこれまで3回にわたり総選挙を下院に提案したものの、そのたびに必要な3分の2以上の支持を得られずにいた。

クリスマス前に総選挙か

ジョンソン政権は12月12日の投票日を提案している。これまでの解散総選挙の動議は、2011年議会任期固定法にもとづき、可決には3分の2以上の賛成を必要としたため、3回にわたり否決されてきた。このためジョンソン首相は、単純過半数で総選挙の実施が可能になる法案を4度目の正直で提出した。

しかし、野党のSNPと自由民主党は、12月9日の選挙を支持。ジョンソン首相が離脱協定案を強引に議会通過させようとするのを避けるには、12月9日の投票日の方が好ましいとしている。SNPも自由民主党も、ブレグジットの完全中止を掲げて総選挙を戦う方針。

自由民主党のジョー・スウィンソン党首は、「(ブレグジットの是非を問う2度目の国民投票が)実現しないなら、議会がそれを支持しないなら、実現するための別の方法を検討する必要があり、現時点ではそれは総選挙だ」と話している。

一方で、首相官邸筋はBBCに対して、野党各党の支持を取り付けるため、12月11日の投票日でも受け入れ可能だと述べた。さらに、ジョンソン首相がEUとまとめた離脱協定案を法制化するための協定法案は、いったん棚上げする用意があるという。

労働党のリチャード・バーゴン影の法相は、労働党としてはジョンソン首相を「クリスマス前に追い出したい」のだと話した。

ジョンソン首相が提出する法案には、下院議員による修正案の提出が認められている。このためバーゴン氏は、「ブレグジット選挙」となる選挙について、16歳や17歳の若者やイギリス定住資格を得ているEU加盟国の国民にも投票権が与えられるようにしたいと話した。

総選挙に反対の声も

しかし、労働党の中には依然として総選挙に反対する声も根強い。ベン・ブラッドショー議員は、総選挙の実施は「ひどい間違い」で、むしろブレグジットの是非を再び国民に問う国民投票を実施すべきだと述べた。

労働党のバリー・シアマン議員はツイッターで、「ボリス・ジョンソンの提案」に沿って12月に選挙を行うなど、「まったく狂っている」と書いた。

「変化のための独立グループ」の議員5人と、ウェールズの地域政党プライド・カムリの議員4人は、総選挙に反対し、ブレグジットについて「国民の投票」、あるいは2度目の国民投票を求める方針を表明している。

ジョンソン首相が推し進めようとした合意なし離脱に反対したため、保守党から除名されたフィリップ・ハモンド前財務相は、離脱協定案の成立に「貴重な時間」を使うのでなく、総選挙に時間を割くなど「正直言って愕然とする」と批判した。

(英語記事 Labour to back early general election

この話題についてさらに読む