英のEU離脱、残留に比べ「年約10兆円の経済損失」=英研究所

UK and EU flags

画像提供, AFP

イギリスの国立経済社会研究所(NIESR)は29日、ボリス・ジョンソン英首相が欧州連合(EU)とまとめたEU離脱協定案に従ってイギリスがEUを離脱した場合、離脱しない場合に比べて年間700億ポンド(約9兆8000億円)の経済損失が見込まれるとする報告書を発表した。

新たな離脱協定案による経済への影響を予測したこの報告書では、10年後の経済成長は、EUに残留しなかった場合と比べ3.5%低くなるとみている。

これに対し財務省の報道官は、「我々はEUと包括的自由貿易協定を結ぶ交渉を行うつもりだ。これはNIESRが予測の基盤にした通常の自由貿易協定よりもさらに野心的なものだ」と説明した。

<関連記事>

1938年発足のNIESRはイギリス最古の独立した調査研究所で、政党から独立している。

NIESRは、ジョンソン首相の離脱協定案を承認することで「無秩序な結果になるリスクを低めるものの、EUとより緊密な通商関係を結べる可能性が排除される」と指摘した。

また、離脱協定によってブレグジット(イギリスのEU離脱)の不透明感は払拭されるが、税関や規制上の障壁が生じることで「大陸とのモノやサービスの貿易が阻害され、イギリス全土の経済状況がEUに残留した場合よりも悪化するだろう」と予測している。

「長期的には、イギリス経済はEUに加盟し続けた場合と比べて3.5%縮小するとみている」

画像提供, Getty Images

報告書ではさらに、現在示されているEUとの自由貿易協定案は、テリーザ・メイ前首相が取りまとめた離脱協定案よりも経済に対する悪影響が強いと分析している。

中央銀行・イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は10月初め、「経済全体に良い影響を与える」として新たなブレグジット協定案を歓迎した。

しかし一方で、EUと交渉し、将来的に「異なる」関係を結ぶということは、イギリス経済にとってジョンソン氏の協定がメイ氏のものほど良いものなのかを「今後も注視していく必要がある」と話している。

サジド・ジャヴィド財務相は先に、離脱協定は「国益にかなうように作られている」として、経済的影響についての財務省の評価を再計算しないと述べた。

需要の停滞

NIESRの調査では、EU離脱のさまざまなシナリオと、イギリスがEUに留まった場合のベースラインを比べている。

それによると、EUとの合意なく離脱した場合には、経済は5.6%縮小する見通し。一方、ブレグジット後にEUとの通商条件が変わらないとしても、「長年の不透明感」が作用して、国内総生産(GDP)は2%下がるとみている。

「大きな経済的・政治的先行き不透明感によって、経済見通しは暗い。また、ブレグジット後のイギリスの通商関係に大きく影響を受けるだろう」

「また、世界的な需要の停滞が国内経済の弱体化をさらに加速させるだろう」

NIESRは、EU離脱の動きのイギリス経済への影響はすでに出始めているという。

「イギリス経済は現在、2016年の国民投票でEU残留が決まっていた場合と比べ、2.5%縮小していると推測される」