チリ大統領、COP25とAPEC開催を断念 反政府デモ受け

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ピニェラ大統領(中央)は「公共の秩序の回復を優先」する必要があると述べた。
チリのセバスティアン・ピニェラ大統領は30日、首都サンティアゴで予定されていた、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)など2つの主要国際会議の開催を断念すると発表した。大規模な反政府デモが続いていることを受けたもの。
ピニェラ氏は、開催断念は「心痛」をともなうが、政府として「公共の秩序の回復を優先」する必要があると述べた。
先週末のサンティアゴでのデモには、推定100万人以上が参加したとされる。主催者側は、1990年の同国の民主化以降で最大の抗議行動だとしている。
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首都サンティアゴの大統領府の周辺では30日もデモが開かれ、多数の人々で通りが埋まった
COP25とAPEC
開催をやめたのは、12月2~13日に予定していたCOP25と、11月15~17日に予定していたアジア太平洋経済協力会議(APEC)。
COP25については、主催する国連が別の開催地を探しているとしている。開催日がこれほど迫ってから、同会議が開催できなくなったのは初めて。
パトリシア・エスピノーサ国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局長は声明を出し、「チリ政府から今日、国内での困難な状況を理由に、COP25を開催しないとの決定について連絡を受けた」と明らかにした。
環境問題に影響か
COP25では、世界各国の指導者たちが、パリ協定の運用などについて話し合う予定だった。
気候変動をめぐっては、スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)が9月、1週間にわたるストライキを呼びかけるなど、さまざまな抗議行動が世界各地で起きている。
今回のCOP25の開催断念が報じられる間にも、米本拠のCrimateCentralは、気候変動が原因の海面上昇によって洪水のリスクが高まっていると発表。22世紀の間に、これまでの予測より何千万人も多くの人々が洪水に見舞われる恐れがあるとした。
BBCのデイヴィッド・シュクマン科学編集長は、COP25の開催断念は気候変動の取り組みにおいて、大きな打撃となるとしている。
開発途上国は、この会議で海面上昇の危機に関して開発国の支援を訴える予定もあったことから、影響が特に大きいとしている。
米中貿易問題にも
一方、APECでは、対立が深まる米中の貿易問題について、両国の首脳が会談し、改善策を話し合う予定だった。
米政府は声明で、会場が変更となった後も、中国との間で初期段階の貿易協定の締結ができると期待していると表明した。
見えない鎮静化
サンティアゴの反政府デモは、地下鉄運賃の値上げ(現在は凍結)がきっかけだった。
その後、格差の是正や医療費上昇への対策などへと要求が広がり、デモが続いている。
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先週末のサンティアゴのデモには100万人以上が参加したとされる
多くのデモは暴力的ではないが、放火や略奪、デモ参加者と治安部隊の衝突も散発。これまでに少なくとも20人が死亡した。逮捕者は7000人を超えている。
ピニェラ大統領は改善策を発表しているが、デモが鎮静化に向かう様子はない。
大統領は国内主要都市の多くを対象に、非常事態宣言と夜間外出禁止令を発令。しかし、デモ参加者を刺激する結果となった。

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