TikTokのまつ毛動画、実は中国非難 米17歳の投稿が話題に
リオ・ケリオン、テクノロジー担当編集長

アメリカの10代の少女が中国を非難する動画が、中国系動画サイトTikTok(ティックトック)で大きな注目を集めた。イスラム教徒を「強制収容所」で虐待しているとする内容だったが、動画は一見、政治とは無縁に見えるものだった。
長さ40秒の動画は、17歳のフェローザ・アジズさんが、まつ毛を長く見せるコツを紹介すると述べるところから始まる。
ところがまもなく、「新たなホロコースト」が起きていると説明。そのことに関心をもつよう、動画を見ている人に訴えている。
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動画投稿が不可能に
動画は急速に拡散された。しかしこの動画を投稿したことで、TikTokに新たな動画が投稿できなくなったと、アジズさんはツイートした。
TikTokはこれを否定している。
同社広報担当は、「TikTokは政治的に繊細という観点で内容を管理することはしない」とBBCに話した。
ただし、政治的な検閲も受けているTikTok中国版の抖音(Douyin)では、アジズさんの投稿は見ることができなかった。
「中国関連の投稿とは無関係」
TikTokは今月15日、アジズさんの古いTikTokアカウントを永久に停止。中国批判とは関係のない、テロリズムに関する同社規則に違反した動画を投稿したためとした。
また、追加措置として、同25日にはアジズさんのスマートフォンをブロック。ただ、それについても、中国に関する投稿は無関係とした。
広報担当は、「彼女の新たなアカウントと、まつ毛に関する問題の動画を含めたすべての動画に影響はなかったし、引き続き見ることができる」と述べた。
また、イスラム教徒のウイグル人が中国の強制収容所で虐待を受けているとする、他の利用者の動画もTikTokにあるが、それらはそのまま残っているとした。
ただ、それらの動画がアジズさんのものほど注目を集めることは珍しい。
ツイッターに動画のコピー
アジズさんは24日から翌日にかけ、ウイグル人に対する中国の扱いに関する動画を3本投稿した。
1本目は140万回以上再生され、「いいね」は50万近くに上った。
動画のコピーがTikTok利用者たちによってツイッターにアップされており、これまでにさらに500万回近く再生されている。
ある人は、「冗談抜きにこのレッスンはすごく役立った。ぜひ見て」との言葉とともに、アジズさんの動画をツイッターに投稿した。
YouTubeとインスタグラムでも、動画のコピーがアップされている。
アジズさんの動画が関心を呼んでいるのは、TikTokを所有する中国企業バイトダンスが実施しているとされる検閲の裏をかこうと、意図的に努めたものと見受けられるのも理由だ。
まつ毛を長く見せる方法を語る中で、ところどころに批判の言葉を交えている。
「TikTokが私の動画を削除しないため」と、アジズさんは動画の1つで説明している。
「認識を広めれば効果ある」
中国は、イスラム教徒のウイグル人は自主的に収容所に入っていると説明。収容所の目的は過激派対策としている。
しかしBBCパノラマは、流出した中国の公文書をもとに、何十万人ものイスラム教徒が中国西部の新疆ウイグル自治区で洗脳されている状況を報じた。
アジズさんの動画は、そのBBCパノラマの報道があったのと同じ週に投稿された。
「認識を広めることは驚くほど効果がある」とアジズさんは言う。
「世界中の何百万人にも訴えかけられるし、この問題で何かをできる人にも訴えることができる」
アジズさんはツイッターで、TikTokから1カ月の利用停止を通告されたと説明。「中国はその(収容所についての)ニュースが広がるのを恐れている」とした。