【英総選挙2019】  保守党と労働党に宗教・人種差別の批判相次ぐ

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Image caption イギリスのユダヤ教正統派を束ねる首席ラビ、エフライム・ミルヴィス師は、「良心に従って投票」するよう呼びかけた

12月12日の英総選挙を前に、政党や大物政治家による宗教・人種差別に批判が相次いでいる。

イギリス・ムスリム評議会(MCB)は与党・保守党に対し、反イスラム主義をめぐる問題を「否定し、放棄し、隠している」と非難した。

また、イギリスのユダヤ教正統派を束ねる首席ラビ(ユダヤ教の聖職者)エフライム・ミルヴィス師は、労働党が党内にはびこる反ユダヤ主義の根絶に全力を尽くしていないと批判した。

ミルヴィス師は、有権者に「良心に従って投票」するよう呼びかけている。

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MCBは、イギリスのモスク(イスラム教礼拝所)やイスラム教の学校、慈善団体などを統括する団体。

MCBは今回、保守党には「この種類の人種差別について死角がある」と述べるとともに、差別根絶への対応にも失敗していると指摘した。

また、過去には保守党内の反イスラム主義について、国内の平等および人権委員会(EHRC)で調査すべきだと訴えていた。EHRCは現在、労働党内の反ユダヤ主義疑惑を調査している。

「郵便ポスト」

MCBの批判に対しボリス・ジョンソン英首相は、「保守党内で反イスラム主義やその他の偏見や差別を行う人物がいれば、ただちにアウトになる」と話した。

しかしジョンソン首相自身も、過去にムスリムの女性が着用する全身を覆う「ブルカ」を「郵便ポストのようだ」と表現し、反イスラム主義だと批判された経緯がある。

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保守党は年末までに反イスラム主義を含む偏見について、党内調査を約束している。今月初めには、匿名のツイッターユーザーが作成し、英紙ガーディアンが保守党に提供した資料に基づき、ソーシャルメディアに反イスラム主義的な投稿をした疑いのある党員25人を追放処分した。

9月にも、保守党員が反イスラム主義的なコンテンツをインターネットに投稿するなどしていた実態を20件取り上げたことを受け、追放処分を下している。

「不安に押し潰されている」

一方、ユダヤ教のミルヴィス師は英紙タイムズへの寄稿で、労働党では「新しい毒が、その最高指導者に容認された形で、党内にしっかり根を下してしまった」と指摘。12月12日の総選挙で労働党が勝つかもしれないと、「イギリスのユダヤ教徒の圧倒的多数が不安に押しつぶされている」と語った。

「党内のユダヤ人差別に対する労働党幹部の対応は、全ての人の尊厳を認めて敬うという、実に誇らしいイギリスの価値観に見合わない」

さらに、「どう投票すべきだなどと、他人に言う立場に私はない」とした上で、「良心に従って投票する」よう国民に呼びかけた。

コービン党首は謝罪を拒否

労働党内の反ユダヤ主義問題は3年以上にわたり、取りざたされてきた。ケン・リヴィングストン氏など大物議員が相次いで追放処分を受けたほか、EHRCによる前例のない調査を受けている。今年2月、欧州連合(EU)離脱や反ユダヤ主義に反対した議員が複数、離党している

また、ジェレミー・コービン党首が反ユダヤ主義的な表現を容認したのではないかという批判もある。コービン氏は先に、民放ITVで行われた総選挙をめぐる党首討論番組で、党に寄せられた差別の申し立ては「すべて調査済み」だと述べ、ユダヤ教団体から非難された。

ミルヴィス師もこの件を取り上げ、「未調査の申し立ては少なくとも130件」あるという、党内のユダヤ教団体の資料を引用した。

一方で、労働党は先に、選挙に向けて「人種と信仰のマニフェスト」を発表。その際にコービン氏は、あらゆる形の反ユダヤ主義は「悪質で間違って」おり、「この社会内における悪」だと強調。「いかなる形の反ユダヤ主義も、現代のイギリスにあってはならない。労働党政権は、いかなる反ユダヤ主義も容認しない」と述べていた。

さらにコービン氏は、労働党が政権をとった暁には「あらゆる信仰の指導者たちを歓迎する」と話した。

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Image caption コービン党首は26日、BBCのインタビューに応じた際にミルヴィス師への謝罪を拒否した

しかし、コービン党首は26日、BBCのインタビューに応じた際にミルヴィス師への謝罪を拒否した。

司会のアンドリュー・ニール氏が4度にわたって謝罪するつもりはあるかと質問したが、コービン氏は謝罪しなかった。

その上で、労働党が政権をとった場合には、「あらゆる信仰の人にとって安全な社会にする」、「あらゆるコミュニティーを虐待から守る」と強調した。

イギリス国教会やMCBも賛同

ミルヴィス師の寄稿には宗派を超えて、賛同が集まっている。

イギリス国教会のジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教は、首席ラビによる「前例のない」介入によって、「多くのイギリスのユダヤ教徒が、どれほど深い不安と恐怖を感じているか、気づかなくてはならない」と話した。

MCBの広報担当者も、「不偏不党の立場を守りつつも、自分たちが直面する人種差別について発言するのがいかに重要か」、ミルヴィス師の発言が強調してくれたと評価し、イギリスに住むムスリムは「首席ラビの言葉を受け止め、自分の良心に沿って投票することが大事だ」と同意すると述べた。

MCBはさらに、「保守党は反イスラム主義を許し、社会にはびこらせている。このことは、多くのムスリムにとって非常に明白だ」と批判した。

(英語記事 No apology from Corbyn over anti-Semitism claims / Chief rabbi in election attack on Labour / No apology from Corbyn over anti-Semitism claims)

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