米政府、仏製品に追加関税検討 「不当な」デジタル税に報復と

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Image caption 米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は、ドナルド・トランプ大統領の指示でフランスのデジタルサービス税について調査したと述べた

米通商代表部(USTR)は2日、フランスが今年7月に導入したデジタルサービス税への対抗措置として、24億ドル(約2600億円)相当の仏製品に最大100%の追加関税を課す準備を進めていると発表した。

この追加関税が課された場合、対象となるのはチーズやスパークリングワイン、化粧品やハンドバッグなど

USTRのロバート・ライトハイザー代表は、フランスのデジタルサービス税が不当に米テクノロジー大手を標的にしていると主張。現在検討中の追加関税は、「米企業を差別したり、あるいは不当な負担を負わせたりするデジタル税制度に対し、アメリカが対応策を講じるだろうという明確な意思表示」だとし、他の国が同様の措置を講じることを抑止するためのものだと説明した。

保護貿易主義の拡大

USTRは今年7月、通商法301条に基づき、フランスのデジタルサービス税について調査を開始し、2日に調査報告書を公表。このデジタルサービス税は、利益ではなく売り上げ高に課税するなど国際的課税基準に反しており、米テクノロジー企業にとって「異常な重荷」になっていると結論付けた。

調査結果を踏まえ、ライトハイザー氏は追加関税を課す方針を発表した。今後、国民の意見を聞くパブリックコメント期間を設けることとなる。

ライトハイザー氏は、オーストリア、イタリア、トルコの同様のデジタル税についても調査を行うか検討中としている。イギリスもデジタル税への対策を講じている。

「USTRは、不当に米企業を標的にしている、欧州連合(EU)加盟国で拡大する保護貿易主義に対抗することに重点を置いている。デジタルサービス税あるいはほかのやり方で、米デジタルサービス企業が標的にされている」と、ライトハイザー氏は述べた。

フランス側はこれまで、同国のデジタルサービス税は、企業本社の所在地ではなく、デジタル活動に基づいて徴収されるべきだと主張している。

フランスのデジタルサービス税とは

デジタル税は、2019年1月からの仏国内での売り上げに対し3%課税するというもので、2019年に4億ユーロ(約500億円)の税収を見込んでいる。デジタルサービスによる年収が仏国内で少なくとも2500万ユーロ(約30億円)発生し、かつ全世界で7億5000万ユーロ(約900億円)以上の企業が対象となる。

約30の企業が納税することになるとみられ、その多くはアルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトなどの米企業だ。

これに対しアマゾンはすでに、仏企業を対象に利用手数料を3%値上げして対抗している。

米テクノロジー企業は、二重の納税を強いられると反発。税制の刷新には国際的努力が必要だとしている。しかし、こうした交渉はなかなか進んでいない。

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Image caption アメリカはチーズやスパークリングワイン、化粧品などの仏製品に対し追加関税を課すことを検討している

国際的合意あればデジタル税廃止も

仏政府は、EU全体での合意が滞った後にデジタル税の導入を発表した。国際的な合意が得られれば、国レベルでのデジタル税は廃止するだろうとしている。

一方、アメリカのドナルド・トランプ大統領は今年7月、フランス産ワインに対して追加関税を課すと警告。フランスの農業相は、「完全にばかげている」としてトランプ氏の考えを一蹴した。

追加関税によるリスクを懸念

一部の米ビジネス・ロビー団体は、フランスのデジタル税に反対の立場ではあるものの、新たな貿易戦争を激化する恐れがあるとして、追加関税をしないよう警告した。

たとえば、米商工会議所は、関税によって「米経済成長や雇用創出に相当なリスクを与えるような、さらなる報復措置を誘発する可能性がある」としている。

<解説>デイ・リー北米テクノロジー担当記者

アメリカが予定している報復措置は、イギリスの各党首にとって厄介な問題になるかもしれない。

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首が最も重要な選挙公約として掲げた、イギリスのブロードバンドサービスの民営化では、少なくとも部分的には「多国籍企業」に課す税金で資金を調達する予定だった。労働党が先月発表したプレスリリースでは、関係する企業として「アマゾン、フェイスブック、グーグル」の名前が具体的に挙げられていた。

ボリス・ジョンソン英首相も、フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、グーグルの頭文字をとった、「ファング(FAANG)」と呼ばれる米IT大手5社が「事実上何も」支払っていないとして、コービン氏の案を支持している。ジョンソン氏率いる保守党も公約で、デジタルサービス税の税収によってブロードバンド整備や他の分野を改善する資金調達すると約束している。

テクノロジー企業への課税は、アイルランドなど低税率地域を経由しがちな収益ベースではなく、各国国内の売上ベースにすべきだという、欧州の動きに乗って、両氏は主張している。

しかし、「グーグル税」は選挙公約としては聞こえが良いが、米政府にとっては大成功した自国企業が不当に標的にされていることになる。今回の米政府の発表は、反撃開始する準備ができたという表れだ。

次の展開はこうかもしれない。フランスは、欧州がまとまってEU全域で一貫性のある代替案を思いつくことができれば、デジタル税を撤回するとしている。その場合、アメリカにとっては相手がフランス一国ではなくEU全体となったら、その方が大変だ。

一方でイギリスは、ブレグジットの後にはEUから切り離される。それだけに、アメリカの機嫌を損ねず、気に入られ続ける必要がある。

(英語記事 US mulls retaliation to French tech tax

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