クマ襲撃が続発、1カ月で3人死亡 個体数が増加=ルーマニア

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Image caption クマの個体数増加を受け、趣味で行う狩猟の再開を求める声が高まっている

東欧ルーマニアで、人がクマに襲われ死亡する事案が1カ月余りで3件発生している。ヨーロッパで最も保護されている肉食動物の個体数が、人間が制御できないほど増加していることに、不安が広がっている。

ルーマニアはヨーロッパ大陸最大のヒグマの生息地で、約6000頭が暮らしている。ヒグマが関連する事案が起こりやすくなっているといい、今年10月にムレシュ県で漁師(61)、10月下旬にバカウ県で男性(46)が、11月にムレシュ県で羊飼い(63)がそれぞれクマに襲われ死亡した。

今年だけでこれまでに6人が死亡したほか、多数の負傷者が報告されている。一方、2000年~2015年にクマに襲われ死亡した人の数は合わせて11人だった。

野生動物の管理を担当するカロリー・パル氏は、「クマの個体数が増加しており、数を減らす必要がある」と警告している。

注意:記事中には死亡したクマの写真が含まれます

パル氏は、ネアワに所有する小さな農場の中庭に立ち、「この地域のどこへ行っても、人々はクマが多すぎると言っている。もう作物を作ることはできないと。人々は農業や自分たちの土地を手放すことを強いられている。皆、村の外に行くことを不安に思っている」と話す。

「この地域の人は皆、クマによる被害を訴えに私のところにやって来る」と、パル氏は付け加えた。

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Image caption ルーマニアには推定約6000頭のクマが生息しているという

クマの襲撃事案の増加

クマは農家の作物を荒らすほか、車両を壊し、家畜を殺すという。最近では車との衝突事故も多発している。

先月17日夜にはハルギタ県で、大きな雄のクマが車にはねられた。クマは手足を3本骨折し、苦しみながら路上に横たわっていた。

ルドヴィク・オルバン首相は、当局が義務を果たせなかったとして不満を口にし、環境省がクマの射殺要請を受けるまで15時間以上かかったと明かした。クマは同日午後に死亡した。

その後も、クマと車の事故が2件発生した。

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Image caption ルーマニアの人々は、クマが事故後、約4時間も路上に放置されて死亡したことに激怒した

ヒグマは冬に向けて、暖かい季節の間に1日最大2万カロリーを摂取するため、食料を探しに広範囲を移動する。人間の居住地や農作物、家畜や道路を避けて移動することは、野生動物にとっては難しい。

パル氏は、「(この地域で)先週一晩だけでクマを22頭目撃した。ネアワからギネシュティに続く舗装されていない道路を歩いていた」と話す。

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Image caption ネアワ近郊の地図。雄のクマ1頭が2年間で移動した範囲を示している(自然保護団体Milvus Groupが作成)

趣味的狩猟の再開は?

多くの人が、2016年に趣味的な狩猟が禁止されたことが、クマの急増の要因だと考えている。

一方で専門家は、ルーマニアの公式の個体数データは間違っている可能性があると指摘する。個体数を推定する作業は従来、野生動物の管理者によって行われてきた。

自然保護団体「Milvus Group」のクマ専門家、チャバ・ドモコシュ氏は、「趣味的な狩猟が禁止されてから、被害をなるべく多く報告しようという、狩猟家や野生生物管理者らの働きかけがあった。(中略)当局による管理というようなものはないに等しい。我々には、一体何頭のクマが生息しているのか本当に全くわからない」と話す。

ドモコシュ氏は、効果的な管理プログラムなしに、村人たちが自ら問題を解決しようとし始めることを不安視しているという。

「人々が毒や罠を使い始めるんじゃないかと懸念している」とドモコシュ氏は述べ、ルーマニアのヒグマの個体数に壊滅的な影響を与えることになると警告した。

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Image caption 間もなく冬眠シーズンがやって来る

ムレシュ県のマリウス・パスカン議員は、同地域はクマに「包囲」されていると述べた。

雌のクマが子グマ2頭を連れて住宅地を歩いているのが目撃された後、「さらに犠牲者が出る前に、我々は団結して対応しなければならない」と、パスカン議員はソーシャルメディアに投稿。子供たちが通学時に襲われる可能性があるのに、「クマ擁護派」は無責任だと述べた。

ルーマニアでは今年9月、ヒグマの狩猟を5年間認める法案が可決された。これが自然保護活動家の怒りを買い、法案に反対する請願書にはこれまでに10万人以上の署名が集まった。

これまでで最悪な状況に

ネアワから少し離れたギネシュティ周辺の丘で、羊を飼っているヤノス・シャボ氏(69)は「我々は大きなクマの問題を抱えている。クマは今年、私が飼っていた羊を4頭殺した」と話す。「すべての羊飼いが(クマの)問題を抱えている。状況はこれまでにないほど悪い」。

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Image caption ヤノス・シャボ氏は多くの羊飼い同様、クマに襲われて羊数頭を失った

長い間栄養を蓄えたあと、一部のクマは間もなく冬眠を開始することとなる。そうすれば、こうした緊張を解消することにつながるかもしれない。

ドモコシュ氏は、クマとの共存の状況は急速に悪化しており、「社会に理解され受け入れられなければ、この種にルーマニアでの未来はない」と述べ、解決策を見つける必要があると指摘する。

(英語記事 Deadly attacks in European home of the brown bear

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