米キリスト教保守派がトランプ氏罷免求め トランプ氏支持基盤に異変

President Trump prays with faith leaders in the Oval Office Image copyright Alex Wong/Getty Images
Image caption 宗教指導者とホワイトハウスの執務室で祈るトランプ氏

ドナルド・トランプ米大統領を強力に支持してきた「福音派」と呼ばれるキリスト教保守派の主要雑誌2でこのほど、トランプ氏に反発する動きが相次いでいる。

連邦下院に弾劾訴追された史上3人目の大統領となったトランプ氏について、福音派の主要な雑誌が罷免を求める社説を掲載したのに続き、別の雑誌ではトランプ氏に抗議する記者が辞任した。

トランプ氏にとって磐石な支持基盤だった福音派キリスト教徒の間では、こうした動きについて波紋が広がっている。

「政党への忠誠よりも創造主への忠誠」

連邦下院が18日にトランプ氏を権力乱用と議会妨害の2条項で弾劾訴追したのを受けて、福音派の大手誌「クリスチャニティー・トゥデイ」のマーク・ガリ編集長は翌19日、トランプ氏の罷免を求める社説を発表した。同誌は、かつてアメリカで絶大な影響力を持った伝道者ビリー・グレアム氏が創刊したもの。

ガリ編集長はトランプ氏の「人間性がひどく不道徳」だと非難し、その解任はキリスト教徒にとって絶対命題だと主張した。

「これは政党への忠誠の問題ではなく、十戒の創造主への忠誠の問題だ」と、ガリ氏は書いた。

さらにガリ氏は、トランプ氏が「自らの政治権力を使い、自分の政敵に嫌がらせをしてその評判を傷つけるよう、外国政府に強要しようとした」と書き、「これは憲法違反だというだけでなく、それより大事なことだが、これは甚だしく道徳にもとることだ」と非難した。

加えてガリ編集長は、トランプ氏が道徳的にひどく問題のある行動を重ねてきたにもかかわらず、熱烈に支持し続ける福音派の信者たちも批判。「自分が何者で、自分が誰に仕えるのか、思い出すように」と呼びかけた。

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Image caption マイク・ペンス副大統領は熱心な福音派キリスト教徒。トランプ氏は2016年大統領選でペンス氏を副大統領候補に選んだことで、キリスト教保守派からの支持を固めたとされる

「信者への侮辱」と反発も

クリスチャニティー・トゥデイ誌のこの痛烈な社説は、アメリカのキリスト教徒の間に激論を巻き起こした。

同誌の社説に沿ってトランプ氏の支持をやめると宣言する人もいれば、ガリ編集長を批判しトランプ氏の擁護をさらに強める人もいた。

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Image caption トランプ大統領は、教会の政治活動を制限する税法の規制を緩和した

22日には、トランプ氏を支持する福音派指導者など200人以上が、クリスチャニティー・トゥデイを非難する公開書簡に署名した。署名した中には、トランプ氏を強烈に支持するマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事(大統領選に2度出馬、前大統領報道官のサラ・ハッカビー・サンダース氏の父親)や、ミシェル・バックマン元下院議員(ミネソタ州選出、大統領選に1度出馬)もいた。

公開書簡はガリ編集長に対し、「あなたの社説は、自分の市民としての義務や道徳的義務を真剣に受け止めている、数千万人もの信者のキリスト教徒としての霊的な完全性を疑う、侮辱的なものだ」と書き、「私たちの大統領を標的にしただけでなく、あの人を支持し、これまであなたを支持してきた私たちをも標的にした」と責めた。

トランプ氏自身も社説に反応し、20日にはツイッターで、同誌を「極左もしくは非常に『進歩的』と呼ぶ人もいるかもしれない雑誌」と呼び、「最近の業績はおそまつなもので、ビリー・グレアムの家族とはもう何年も前から関係ない」と書いた。さらに同誌が「日常的な電話の完璧な通話記録を読むということを何も知らず、ドナルド・トランプより極左の不信心者、あなたがたの宗教や銃を取り上げようとするような者を大統領にしたいようだ」と批判した。

トランプ氏はさらに、「福音派の人たちに、自分ほど尽力した大統領はいない。近くにも及ばない。(討論会の)舞台上の民主党はあなたたちに何もしてくれない。僕はもうET(訳注・CTの間違いか)は読まない!」と書いた。

トランプ氏はこうして、同誌の業績が悪化していると書いたものの、米紙ワシントン・ポストによると、今回の社説によって同誌の登録読者は2000人減ったものの、新しく5000人が登録した。新しい読者は以前より若く、背景が多様な人が多いという。

22日には同誌の発行会社のティモシー・ダルリンプル社主が社説を支持し、「アメリカの福音派がこの大統領と同盟した」ことによる「とてつもない害悪」を非難した。

「クリスチャニティー・トゥデイは神学的に保守で、生命を支持し(訳注・人工中絶反対の意味)、家族を支持する」とダルリンプル社主は書いた上で、その主義主張を政策に反映するためにトランプ氏を擁護することの「代償は高すぎる。アメリカの福音主義は、共和党の資金集めをする政治行動団体ではない」と主張した。

別誌の記者が辞任

さらに23日には、別の福音派雑誌「クリスチャン・ポスト」のナップ・ナズワース記者が、辞任を余儀なくされたとツイッターで発表した。

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クリスチャン・ポスト誌で10年近く務めた政治編集者のナズワース氏は、同誌が「チーム・トランプへの参加を打ち出す社説を掲載することにした」ため、「そういう社説を掲げる媒体の編集者でいることはできない」と書いた。

ナズワース氏の決断とクリスチャニティー・トゥデイ誌の社説はともに、これまで磐石と思われてきたトランプ氏の支持基盤のひとつに、ひびが入った可能性を示している。

なぜ重要なのか

トランプ氏は大統領選で、熱心な福音派のマイク・ペンス氏を副大統領に選んだ。これはキリスト教保守の票固めのための人選だとされ、就任以降も、福音派の圧倒的な支持を得てきた。

米ピュー研究所の調査によると、2016年大統領選では、自分は白人で福音派だという人、もしくは最近になって信仰の道に戻ったと名乗る人の8割が、トランプ氏に投票したという。

トランプ氏のこの成功は、近年のアメリカ政治で一貫して続く傾向に沿ったものだ。2004年以降のすべての大統領選で、白人の熱心な保守派キリスト教徒の大半は共和党候補に投票してきた。

しかし、福音派の間のトランプ人気は、共和党か民主党かという党派性だけでは説明できない。歯に衣着せないトランプ氏に対する福音派の支持率は、共和党から2004年に当選したジョージ・W・ブッシュ元大統領への支持率を上回っている。2008年大統領選で共和党の大統領候補となったジョン・マケイン氏や、2012年のミット・ロムニー氏と比べても同様だ。

そしてトランプ氏はホワイトハウスの住人になってからというもの、キリスト教保守派への公約を守ってきた。

まず、連邦最高裁には、人工中絶に反対するなど保守派としての評価が高いニール・ゴーサッチ氏とブレット・キャヴァノー氏を判事として送り込んだ。

加えて、医療保険は避妊具を保険対象にしなくてはならないという政府の規則を、トランプ氏は緩和した。

トランプ氏はさらに、宗教団体による政治活動への規制を緩和した。また、家族計画や中絶カウンセリングを提供する国際団体への公的助成について、規制を強化した。

また、アメリカでは近年、宗教的多様性への配慮を念頭に、「メリー・クリスマス」よりも「ハッピー・ホリデーズ」などと挨拶する人が増えているが、保守派はこれを非公式の規制だと捉え、「リベラルがクリスマスを禁止している」などと主張してきた。トランプ氏はこれについて22日、「みんなまたメリー・クリスマスと言うようになった」と、自分たちの手柄として強調した。

トランプ政権が様々な形でキリスト教保守派の期待に応えてきた成果は、数字になって表れている。公共放送NPRとPBSが今月初めに発表した共同世論調査によると、アメリカの成人市民全般のトランプ氏支持率は42%だったが、白人福音派キリスト教徒の間の支持率は75%だった。

この層の支持は、2020年大統領においてトランプ氏に不可欠だ。トランプ氏は保守派キリスト教徒だけでなく、さまざまな社会的保守派の支持を必要としている。

一方で、福音派雑誌の社説や記者の辞任があったからといって、女性の人工中絶に反対する保守派キリスト教徒が、こぞって民主党支持に回るとは考えにくい。

ピュー研究所の10月調査によると、自分はキリスト教徒だという白人が共和党支持者の約3分の2を占めるものの、民主党支持者の中では25%にしかならない。

(英語記事 Christian magazine editor quits in row over Trump's evangelical support

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