「イランは戦闘態勢から引く様子」とトランプ氏 追加制裁の方針示す

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Image caption トランプ大統領はイランが攻撃をやめるつもりのようだと述べた(8日午前、ホワイトハウス)

ドナルド・トランプ米大統領は8日午前11時半(日本時間9日午前1時半)、緊張が高まるイランとの関係についてホワイトハウスで記者団を前に声明を読み上げ、「イランは戦闘態勢から引く様子だ」と述べた。イランが同日未明にイラク国内2カ所の米軍基地をミサイル攻撃したことについては、アメリカ人やイラク人の人的被害はなく、わずかな損傷にとどまったと述べた。

トランプ氏はさらに、米政府としてただちにイランに経済・財政制裁を追加発動し、イランが「振る舞いを変える」まで継続すると述べた。

ホワイトハウスで、政権幹部や制服姿の軍幹部を従えて記者団の前に立ったトランプ氏は、「自分が大統領でいる限り、イランに決して核兵器を持たせない」と語り始めた。続けて、イランの攻撃による被害はなく、「イランは戦闘態勢から引く様子で、それは全ての当事者にとって、そして世界にとってとても良いことだ」と述べた。

トランプ氏は、米軍が3日にドローン攻撃でバグダッドで殺害したイラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ将軍のことを、テロ組織を支援し、中東各地で内戦を扇動し、多数の米兵を無残に殺害した、「最悪の残虐行為の責任者」だと非難。新しいアメリカ攻撃を計画していた「世界一のテロリスト」と呼び、「もっと前に終了させるべきだった」が、自分たちが「食い止めた」と述べた。

さらに、イランは「核兵器の野心を捨て、テロ支援をやめなくてはならない」と強調したほか、オバマ前政権などがイランと締結した核合意を「馬鹿げた」「欠陥だらけ」のものだと批判。オバマ前政権によるこの核合意のせいで、イランは今回の攻撃に使ったミサイルなどの資金を得たとも述べた。さらに、2018年5月に自らが一方的に離脱した核合意を、英・独・仏・露・中の各国はもう諦めるべきで、世界とイランのためにより良い合意を模索する必要があると強調した。

北大西洋条約機構(NATO)に、これまで以上に中東情勢に関わるよう求める方針も示した。

トランプ氏はさらに、自分の手腕により米経済がかつてなく強くなり、アメリカがエネルギー独立を実現したため、もはや中東の石油に依存していないと主張。また自分の政権によって米軍は刷新されて強力になり、今回の攻撃も被害を最小限に食い止めることができたと述べた。

その上でトランプ氏は、「アメリカの軍事力と経済力が最善の抑止力」だとして、「素晴らしい軍事力と装備を持つからと言って、その力を使う必要もないし、使いたいわけでもない」と強調した。

また、イランがいずれ世界の国々と協調して繁栄する、本来あるべき素晴らしい未来を実現するよう期待すると述べ、「合衆国は平和を求める全ての相手と、平和を受け入れる用意がある」と主張した。

「エスカレーションを望まない」とイラン側

米軍が3日未明にソレイマニ将軍を殺害すると、イランは「厳しい復讐(ふくしゅう)」を宣言。8日未明にイラクにある2つの米軍基地を弾道ミサイルで攻撃した。

これは「アメリカへの平手打ち」に過ぎないと、最高指導者アリ・ハメネイ師は言い、アメリカを中東から追い出すまで戦うと力説したものの、イランのジャヴィド・ザリフ外相は8日早朝にツイッターで、「イランは国連憲章第51条にのっとり、相応の手段で自衛権を行使した」と書いた。

外相はその上で、「我々はエスカレーション(事態悪化)や戦争を望んでいないが、あらゆる攻撃に対して自衛する」と主張。このツイートは、事態沈静化を呼びかけるイラン側のシグナルだと受け止められていた。

外相のツイートの後も、イランのハッサン・ロウハニ大統領がテレビ演説で「(アメリカが)賢明ならば、現時点でこれ以上の行動はとらないはずだ」と述べていた。

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一方で、ソレイマニ将軍の葬儀にはイラン各地で大群衆が押し寄せ、大勢が「アメリカに死を」と唱えた。それだけに、イランの強硬派が今回のトランプ発言をどう受け止めるかが注目されると、BBCのフランク・ガードナー安全保障担当編集委員は話した。

トランプ氏は4日の時点では、もしイランの反撃でアメリカ人やアメリカ資産が被害を受けるようなことがあれば、イランの文化を含む「52の標的」を攻撃するとツイートした。その後も、「不相応な」反撃の可能性を示唆していた。

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トランプ大統領の演説は奇妙な混合物だった。脅しと虚勢と、そして事態沈静化の意向が少々という。

とはいえ、イラン政府には追加経済制裁もピシャリと科した。「世界一のテロリスト」と呼ぶソレイマニ将軍の殺害は、自慢してみせた。

それでも要するにこの演説には、要点が3つあった。第一に、事態沈静化だ。イランのミサイル攻撃によるアメリカ人の犠牲者は出なかった。イランは「戦闘態勢から引く」ようだと言った。おそらく、配備されたミサイル発射部隊がそれぞれの基地に戻るという意味だろう。そしてトランプ氏は、米軍が即応するとは言わなかった。

二つ目は、核合意だ。米政府がとっくの昔に離脱した、2015年の「共同包括行動計画(JCPOA)」の締約各国に対して、あれはろくなものではないからもう諦めろと呼びかけた。

そして三つ目。アメリカがエネルギー独立を達成したと強調し、NATO諸国に「中東のプロセスにもっと関わる」よう呼びかけた。この発言は当然ながら、やはりアメリカは中東での役割にもうくたびれてしまったのだと、そういう意味だと受け止められる。そしてそれは、中東の同盟諸国もNATO加盟各国も、決して歓迎しない。

そういうわけで、この演説はいかにもトランプ的矛盾に満ちていた。イラン国民の明るい未来に多少触れたところで、新しい外交機軸の具体的展望などほとんど示していない。

つまり、米軍のドローン攻撃にイランのミサイル攻撃と立て続いた後のことの顛末(てんまつ)はどうやら、何もかも元通り……ということらしい。

(英語記事 Trump: Iran 'standing down' after missile strikes

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