「英国史上最悪」のレイプ犯に終身刑 「犯罪行為に相応」と父親

エンダン・ヌルディン、レベッカ・ヘンシュキ(BBCインドネシア語)

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Image caption レイナード・シナガ被告

イギリス・マンチェスターの裁判所は6日、同国史上最悪のレイプ犯、レイナード・シナガ被告(36)に終身刑を言い渡した。被告の父親は、「息子の犯罪行為に相応の刑罰」だとBBCに述べた。

インドネシア国籍のシナガ被告は、博士号取得のためにイギリスの大学院に在籍していた。シナガ被告は、男性48人に対する強姦罪など計159件の罪に問われていた。

被告は、マンチェスター市内のクラブの外で被害者に声をかけ、自宅に誘い込んでいた。薬物を使って被害者の意識を失わせ、暴行を加える様子を動画で撮影していた。

シナガ被告の家族や友人は、この現実を受け入れるため、被告が性犯罪者になる以前のインドネシアでの暮らしぶりをBBCに詳細に話してくれた。

被告の父親サイブン氏は、息子が収監されて以降初めて取材に応じ、BBCインドネシア語に電話で次のように語った。

「私たちは判決を受け入れます。息子が受ける刑罰は、息子の犯罪行為に相応のものです。この件についてこれ以上議論したくありません」

インドネシア大学時代の友人は、シナガ被告は派手で人気のある学生だったと話す。

「彼はすごく社交的でフレンドリーで、親しみやすいし、一緒に作業に取り組むのが楽しい人だった」

この女性は、シナガ被告が2007年にイギリスへ留学した際に、被告と連絡が取れなくなったと話した。

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Image caption シナガ被告はインドネシア大学建築学部を卒業後の2007年、イギリスへ渡った

留学先のマンチェスターを気に入ったシナガ被告は、イギリスで永遠に暮らしたいと家族に伝えたという。

マンチェスターのゲイ・ヴィレッジ近くで生活する中で、シナガ被告は性的指向をオープンにすることができた。ある意味、インドネシアでは不可能なことだった。

シナガ被告は1983年、保守的なキリスト教一家の、4人きょうだいの長男として生まれた。スマトラ島のバタク族の血を引いている。

父親は、複数の民間銀行の支店を所有する裕福な実業家だ。シナガ被告が2017年6月2日に逮捕されるまで、10年以上にわたり留学生活を支えていたのが父親だった。マンチェスター市中心部のプリンセス・ストリートに面したアパートの家賃も支払っていた。

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Image caption シナガ被告は男性を自宅に誘い込み、薬物を使って犯行に及んでいた

シナガ被告の家族で唯一、出廷したのは母親だった。母親は、最初の公判前審問に出席したものの、シナガ被告が無罪を主張したその後の4度の公判には姿を見せなかった。

しかし、母親による性格証人としての声明が法廷で読み上げられた。

在ロンドン・インドネシア大使館の職員、ガルファン・アフェロ氏は、「家族は被告について、いい子で、非常に聡明で、定期的に教会へ足を運ぶような信仰心のある男の子だと話している」と明かした。

裁判官のスザンヌ・ゴダード勅選弁護士は、この証言を引き合いに、シナガ被告の家族は「あなたの本性を何1つ知らない」と、シナガ被告に直接述べた。

警察は、シナガ被告の犯行による被害者は少なくとも190人いることを示す証拠があるとしている。他に被害に遭っている可能性がある人たちが、専用のヘルプラインを通じて名乗り出ているという。

インドネシアを「辱めた」

インドネシアでは、衝撃や怒りの声が巻き起こっている。シナガ被告に関する報道は拡散し、6日に終身刑が言い渡されると、シナガ容疑者の話はトレンドトピックになった。被告の実家には、メディアが押し寄せた。

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Image caption ある裁判官は、シナガ被告が「保釈できるほど安全な人物になることは決してないだろう」と述べた

多くのインドネシア人が、国際社会から見れば、シナガ被告が同国を辱めたことになるとソーシャルメディア上に書き込んだ。中には、死刑を求める人もいた(イギリスでは1965年に廃止されている)。

またほかの人たちは、シナガ被告の精神状態について疑問を投げかけた。しかし、被告と面会したことのあるアフェロ氏は、被告の精神状態は正常だったとしている。

「私はシナガ被告と3回、刑務所で面会した。被告は幸せそうで、健康で落ち着いているように見えた。(中略)被告は、どんな状況に置かれているかを理解していた。被告は無罪を主張しているので、反省している様子は見られなかった。つまり、心理的負担は感じていないということだ」

裁判官は、被害者がセックスに同意していたとするシナガ被告の主張を、「ばかげていて(中略)ナンセンス」だと退けた。

インドネシア人は、心理カウンセリングや、匿名報道といった、イギリスにおけるレイプ被害者保護の取り組みにも注目している。

「イングランドでは、被害者にカウンセリングやトラウマを克服する支援がなされていることに注目すべきだ。インドネシアではレイプ被害者は必ず非難され、辱められるのだから!」と、ある人物はソーシャルメディアに書いた。

別の人は、「ほら見なさい、被害者は『セクシーすぎる洋服』を着ていたなんて言われたりしない」と書いた。

反発への不安

インドネシアのLGBT(性的少数者)コミュニティにとっては、シナガ被告の事件は、最悪のタイミングで起きてしまったことになる。

インドネシアでは同性愛は違法ではないものの、近年、同性愛者に向けられる不寛容さや憎悪が増加している。ソーシャルメディアでは、シナガ被告の事件に関する報道に対し、同性愛嫌悪的な中傷を書き込んだとして複数の人が告訴されている。

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Image caption 公判で証拠として提示された監視カメラ映像

同性愛者の権利活動家のハルトヨ氏はBBCに対し、シナガ被告の事件を理由に、「同性愛に不寛容な団体が同性愛の違法化を推し進めたり、同性愛者コミュニティーを標的としたさらなる攻撃が起きるかもしれない」と不安を口にした。

「シナガ被告の件は、刑事事件だということは明らかだが、加害者の性的指向とは何ら関係がない。この事件は、邪悪な人物に関するものだ。私は、地元メディアがそれをはっきり示してくれることを願う」

ハルトヨ氏は、インドネシアやイギリス国内の多くの人と同様に、「なぜ(シナガ被告が)こんなことをしたのかを理解」するのに苦悩していると明かした。「この事件に深くショックを受けたし、恐怖を感じた」。

インドネシア当局は、シナガ被告がイギリスへ移り住む以前に性的暴行やレイプを犯していたことを示す証拠はないとしている。

(追加取材:ラジャ・エベン・ランバンラウ、BBCインドネシア語)

(英語記事 Dad of UK's worst rapist: He got what he deserved