新型ウイルス、世界は「警戒が必要」とWHO 死者170人に

Passengers arrive at Heathrow Airport in London after the last British Airways flight from China touched down in the UK on Wednesday 29 January, 2020.

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新型ウイルスは中国各地と少なくとも16カ国に感染が広がっている

「全世界が警戒しなくてはならない」。中国で発生し世界的に感染が拡大する新型コロナウイルスへの対応について、世界保健機関(WHO)健康危機管理プログラムのトップが29日、注意を呼びかけた。

中国国家衛生健康委員会は30日、新型ウイルスによる死者が170人に達し、感染者は7711人に上ったと発表した。

チベット自治区でも初めて感染者が確認され、中国国内全土に感染が拡大したことが明らかになった。

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WHO健康危機管理プログラム責任者のマイク・ライアン博士は、専門化を集めた国際チームの中国派遣を予定していると発表。現地の専門家と協力し、感染方法を探るとした。

中国の対応については、「大きな挑戦だが、対応は圧倒的な規模だ」として称賛した。

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WHOのマイク・ライアン博士は「伝染の連鎖はまだ止められると信じている」と述べた

ライアン氏はまた、「今回の出来事で、私たちはいま重要な岐路にある。伝染の連鎖はまだ止められると信じている」と述べた。

WHOは30日に会合を開き、新型ウイルスの感染が世界的な緊急事態に当たるか検討する。

危険度「高」にしなかったことを後悔

一方、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は今週、中国を訪問した。

事務局長は、新型ウイルスに感染した人の多くは「穏やかな症状」しか見られず、約2割が肺炎や呼吸器不全などの重大な影響を受けていると述べた。

また、中国は「世界各国の団結と支援を必要としている」とし、「世界はこの大流行を終わらせるために協力し、過去の大流行から学ぶ」と表明した。

テドロス氏は、WHOが先週、新型ウイルスが世界に及ぼす危険性について、3種類の報告書で「高い」とせず「中程度」としたことに言及。「深く後悔している」と述べた。

さらに、人から人への感染がドイツ、ヴェトナム、日本で確認されたことに懸念も示した。緊急事態宣言を出すか判断する30日の会合では、人から人への感染も考慮に入れると述べた。

16カ国で感染を確認

新型ウイルスは中国・武漢で発生。国内各地に感染が拡大しているほか、フランス、アメリカ、オーストラリアなど少なくとも16カ国にも広がっている。

新型ウイルスの特別な治療法やワクチンはない。ただ、診療後に回復した人も多い。

新型ウイルスについては、オーストラリアの科学者らが人工培養に成功。早期診断の検査の開発につながるとの期待が高まっている。

自国民を帰国させる動き

武漢からは、外国人が続々と避難している。

日本人206人は29日、チャーター機で東京・羽田空港に到着した。アメリカ人240人(現地の領事館職員を含む)も同日、航空機で武漢を出発。カリフォルニア州の軍基地に着陸すると、滑走路で緊急車両に迎えられた。

オーストラリアは避難した人々を、大陸から2000キロ離れたクリスマス島で隔離する計画。

欧州連合(EU)は、加盟国民の帰国に向けて旅客機2機の運航を予定している。最初の1機では、フランス人250人が帰国する予定。

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「がんばろう」と励まし合う声 封鎖状態の武漢で

韓国は今週、4機で約700人の市民を帰国させるとしている。

マレーシアとフィリピンも、武漢と周辺にいる自国民を避難させると表明した。

カナダは約160人の同国民を帰国させるため、チャーター機を準備した。しかし、武漢の近くに着陸する許可を得るのに数日かかる可能性があるとしている。

機内でのタオル提供を停止

香港自治政府は28日、自治区への越境を禁じる措置を発表した。

英航空会社ブリティッシュ・エアウェイズは中国本土の発着便の運航を停止。イギリス外務省は、必要不可欠な場合を除いて、中国に渡航しないよう勧告した。

米ユナイテッド・エアラインズ、香港キャセイ・パシフィックの両航空会社も、中国便を制限している。アジアで数多くの便を運航しているタイのライオン・エアは2月1日から、中国に向かう便の運航を中止する。

キャセイ・パシフィックでは、機内のワゴンサービスを停止。ウイルスの感染拡大を防止するためとして、機内食の一部を変更し、温めたタオルや枕、毛布、雑誌の提供を取り止めた。

<分析>致死率はなぜ明らかにされない?――ジェイムズ・ギャラガー、BBC健康・科学担当編集委員

今回のウイルスはどれほど致命的なのか? 基本的な疑問だが、答えは見えにくい。

患者6000人、死者130人だから致死率は2%だとするのは単純すぎる。

私たちはいま、大流行の渦中にいて、何千人もの患者が治療を受けている。

患者たちが生き延びるのか、死ぬのかはわからない。そのため、そうした患者たちを計算に含めることはできない。

それに、症状の穏やかな人や、発症未確認の感染者がどれだけいるのかもわからない。

「全体の致死率がどれくらいなのかを発表するには早すぎる」と、WHOのマリア・ヴァン・カーコヴ氏は警告している。

さらに、致死率はこの新型ウイルスの脅威の、ひとつの要素でしかない。

インフルエンザは毎年、何千人もの死者を出している。その理由は、致死率が非常に高いからではなく、感染力が非常に強いからだ。

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感染症のパンデミックとエピデミック、エンデミック……違いは?