【弾劾裁判】 トランプ氏に無罪評決 罷免を回避

President Donald Trump at the US Capitol Building on 4 February 2020 Image copyright AFP

アメリカのドナルド・トランプ大統領に対する弾劾裁判で、議会上院は5日、権力乱用と議会妨害の弾劾条項2項目について、いずれも無罪評決を下した。

評決の投票があった上院は、53対47で与党・共和党が多数を占める。投票結果は、権力乱用が賛成52票、反対48票、議会妨害は賛成53票、反対47票だった。

野党・民主党が多数派の下院は昨年12月18日、トランプ氏を権力乱用で弾劾訴追した。トランプ氏が昨年7月にウクライナ大統領との電話で、軍事援助の凍結解除をちらつかせながら、今年の大統領選で対立候補になるかもしれないジョー・バイデン前副大統領の捜査を働きかけたとした。

また、ウクライナ疑惑をめぐる下院の調査を妨害したとして、議会妨害でも弾劾訴追した。

トランプ氏は、いずれかの弾劾条項で有罪評決が下った場合、罷免され政権をマイク・ペンス副大統領に引き継ぐ必要があったが、これを免れた。

今年11月、トランプ氏は弾劾裁判にかけられた大統領として初めて大統領選挙に臨む。

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弾劾裁判で何があった

共和党では、ミット・ロムニー上院議員(ユタ州選出)のみが、権力乱用について造反し、賛成票を投じた。

民主党の期待とは裏腹に、穏健派の共和党議員スーザン・コリンズ氏(メイン州選出)とリサ・マコウスキー議員(アラスカ州選出)の2人は造反しなかった。

一部の共和党上院議員はここ数日間、トランプ氏の言動を批判していたものの、弾劾するレベルまでは達していないと述べた。

一方、共和党は、中道派の民主党上院議員のキルステン・シネマ氏(アリゾナ州選出)、ジョー・マンチン氏(ウエストヴァージニア州選出)、ダグ・ジョーンズ氏(アラバマ州選出)の3人の造反を期待していた。

トランプ氏の罷免には上院(定数100)の3分の2以上の賛成が必要だった。共和党が多数を占めることから、罷免される確率は低かった。

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トランプ氏の弾劾裁判、無罪評決の瞬間

トランプ大統領の反応

11月の大統領選挙で2期目当選を狙うトランプ氏は、常に不正行為を否定してきた。

トランプ氏の選挙対策本部は声明で、「トランプ大統領は完全に汚名を晴らした。アメリカ国民のための仕事に戻る時がきた」、「何もやらない民主党は、大統領を打ち負かせないことを分かっている。だから大統領を弾劾する必要があった」と述べた。

さらに、「このひどく苦しい体験」や「ナンセンスさ」は、ただの民主党的選挙キャンペーンの戦術にすぎない」としたうえで、「この弾劾のでっちあげは、アメリカの政治史上最悪の誤算として残るだろう」と付け加えた。

調査会社ギャラップによると、今週、トランプ氏の支持率は49%と、過去最高を記録した。トランプ氏は無罪評決について、6日にコメントするとツイートした。

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【弾劾裁判】 トランプ氏の弾劾裁判になぜウクライナが関係するのか

民主党議員の反応

民主党議員は、トランプ氏を扇動政治家だとしており、今回の無罪評決がトランプ氏をさらに勢いづけるかもしれないと懸念を示した。

民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、トランプ氏は依然として「アメリカの民主主義を常に脅かす」存在だと批判。また、上院の民主党議員について、「無法ぶりを当たり前のものにした」と述べた。

チャック・シューマー上院院内総務は、「大統領は完全に疑惑を晴らしたと誇らしげに話すことは間違いないが(中略)私たちにはもっと分別がある」と述べた。

共和党議員の反応

ラマー・アレクサンダー上院議員(テネシー州選出)は、無罪に投票する前、有罪評決は「この国を引き裂く」だろうと警告した。

ミッチ・マコネル上院院内総務は、トランプ氏に対する弾劾裁判は全面的に「大騒ぎ」で「政治的な大間違い」だったと述べた。

リンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州選出)は、一連の手続きは大統領の地位を破壊するための「はったり」だったと述べた。

2012年の大統領選で大統領候補となったミット・ロムニー上院議員は、トランプ氏は「国民の信頼をひどく乱用」したり、「私たちの選挙権や国家安全保障、基本的価値観への明らかな攻撃」という罪を犯していると述べた。

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弾劾可決の瞬間、「歓声はダメ」 ペロシ下院議長がにらんで制止

ウクライナ疑惑とは

トランプ氏は昨年7月25日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に電話で、大統領選で民主党候補になる可能性のあるバイデン前副大統領と息子ハンター氏の汚職疑惑捜査について発表するよう求めていた。

トランプ氏は、バイデン氏が当時ウクライナ政策を担当していたことから、ハンター氏が不適切なかたちでウクライナのガス会社ブリスマの取締役に就いていたと主張している。不正行為があったという証拠は示していない。

民主党は、トランプ氏がゼレンスキー氏との電話の数日前にウクライナへの3億9100万ドル(約420億円)の軍事支援を延期し、バイデン親子の捜査を促したとして、権力乱用で弾劾決議した。

また、この問題について政府職員の議会証言を阻止するなど、下院の調査を妨害したとして、議会妨害でも弾劾決議された。

ウクライナ疑惑はこれで一件落着?

下院司法委員会のジェリー・ナドラー委員長(民主党)は5日、下院はジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に召喚状を送る「見込み」だと述べた。

共和党の上院議員は最終的に、弾劾裁判中のボルトン氏の証人尋問を拒否した。

報道によると、ボルトン氏は近く発刊する著書で、トランプ氏からウクライナ側に圧力をかけるのを手伝って欲しいと言われたなどと記述しているという。

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【弾劾裁判】 これまでの経緯を簡単に解説

史上3人目

トランプ氏は、1868年のアンドリュー・ジョンソン大統領と1998年のビル・クリントン大統領(ともに当時)につづき、アメリカ史上、下院に弾劾された3人目の大統領となった。

ジョンソン氏とクリントン氏は、上院の弾劾裁判が有罪を認めなかったため、いずれも解任はされていない。

リチャード・ニクソン第37代大統領は弾劾・解任される可能性が高まったため、下院司法委の弾劾調査開始から3カ月後に、下院本会議の採決を待たずに辞任した。

(英語記事 Trump acquitted by Senate in impeachment trial

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