英高速鉄道「HS2」に首相がゴーサイン 費用など懸念も

Artist's impression of Birmingham Curzon St HS2 station Image copyright HS2
Image caption 高速鉄道HS2の駅の予想図

イギリスのボリス・ジョンソン首相は11日、イングランドの南北を結ぶ高速鉄道「ハイスピードツー(HS2)」の敷設計画を進めると明らかにした。

HS2は第1フェーズでロンドンとバーミンガムを結んだ後、第2フェーズではマンチェスターおよびリーズと接続する予定で、都市間移動で大幅な時間短縮が見込まれる。

一方で、プロジェクト費用をめぐってはすでに大きな批判を受けている。2015年の政府予算では560億ポンド(約8兆円)弱とされていたものの、ある独立調査では1060億ポンドにまで達するとの推計が出ている。

ジョンソン首相は、「議論を呼んだ難しい決断だった」と述べた。

また、HS2担当相を任命して計画を監督させることを明らかにした。一方で、HS2の開発・推進を担っているHS2リミテッド社を批判した。

Image caption HS2の敷設計画。フェーズ1(青色)ではロンドン(London)からバーミンガム(Birmingham)が開通予定。フェーズ2ではそこからクルー(Crewe)経由でマンチェスター(Manchester)までのルートと、イースト・ミッドランズ(East Midlands)を通ってリーズ(Leeds)までのルートが敷設される見込みだ

HS2推進派は、同鉄道によって移動時間が短縮できるだけでなく、輸送量の増加、雇用創出、南部に偏っているイギリス経済の均衡化などが見込めるとしている。

運輸省によると、ロンドンーバーミンガム間は現在1時間21分かかるが、これが52分に短縮される。

また、敷設工事中には数千人単位の雇用が見込めるほか、経済成長を刺激するとしている。

第1フェーズであるロンドンーバーミンガム間は当初、2026年末に開業する予定だったが、グラント・シャップス運輸省は昨年9月、これが2028~2031年になるだろうと述べた。

第2フェーズは2032~33年開通とされていたが、2035~40年になるとみられている。

「計画の基本的価値は損なわれない」

ジョンソン首相はこうした中、すぐに計画に取り掛かれば「2020年代の終わりには開通しているだろう」と意欲を示した。

またHS2リミテッドについては、「地域社会をうまく取り扱っているとは言えない」と批判。一方で、「推計費用は爆発的に増えているが、これまでのずさんな管理でも、計画の基本的な価値は損なわれていない」と述べた。

今後は「計画に規律を復活させる」対策をとるとともに、「再設計をせずにフェーズ1でコストを節約できるよう、調査を進める」としている。

これに対し最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、HS2による経済効果や効率化を支持すると述べた一方で、「保守党政権がコストの処理でひどい失敗をおかし、計画の未来を不透明にした」と批判した。

野党・自由民主党は、「気候変動に立ち向かい炭素排出量を削減するには、国内の航空便を減らして鉄道での移動を促進することが重要だ」として、現在進められているロンドン・ヒースロー空港の新滑走路計画よりもHS2を歓迎すると話した。

しかし緑の党のキャロライン・ルーカス下院議員は、HS2も「多くの重要な自然環境を破壊したり、ダメージを与えるだろう」と非難している。

「産業界は拍手喝采」

HS2の労働者を代表している全国都市一般労働組合(GMB)は、「数千人の熟練労働者が、このプロジェクトの建設やサプライチェーンに依存している」として、政府に計画進行を促した。

イギリス産業連盟(CBI)のマシュー・フェル氏は、HS2は「イギリス経済で景況感を上げるために必要な大胆で決定的な計画だ」と述べ、「この計画を通じて、イギリスはビジネスに門戸を開いていると世界に信号を送っている」と評価した。

製造業の業界団体メイクUKのスティーヴン・フィプソン会長も、「産業界はこの大胆で、理にかなっていて、現実的な決定に拍手喝采だ」と歓迎している。

家を失う人も

一方で、HS2敷設計画で不利益をこうむる人もいる。

イングランド南東部バッキンガムシャー州に住むロン・ライオールさんと妻のアンさんは、自宅がHS2の線路の敷かれる場所に建っているため、3月中に立ち退くよう命じられた。

BBCブレクファーストに出演したライオールさんは、「(HS2は)私たちの生活を台無しにした。誰かが人の人生に立ち入って破壊するようなことができるという事実を受け入れられない。私たち家族はこの通りに100年も住んできた。私はここで生まれたんだ」とコメントした。

Image caption ロン・ライオールさんと妻のアンさんは、3月中に自宅を立ち退くよう命じられた

イングランド中部ウォリックシャー州のバートン・グリーンは人口640人の村だが、HS2の線路によって2つに分断されることが決まった。

住民のロナ・テイラーさんは、「私たちは10年にわたってこの計画に反対してきた。きょうは不愉快な日だ」と語った。

一方、イングランド北西部チェシャー州クルーに住むケイト・ウォルターさんは、「ここ数年、周辺地域は再興しているのに、クルーはその対象になっていなかった」として、HS2敷設を歓迎していると話した。

「HS2によってもたらされる地域経済への投資は、この地域の発展にとって非常に重要だ」

(英語記事 HS2 go-ahead 'controversial and difficult'

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