「ダイヤモンド・プリンセス」乗客2人死亡 政府の感染対策に批判も

A bus believed to be carrying passengers from the cruise ship Diamond Princess, leaves Daikoku Pier Cruise Terminal in Yokohama Image copyright Reuters
Image caption 「ダイヤモンド・プリンセス」を降りた乗客の一部はバスに乗って移動した(19日、横浜港)

複数の日本メディアは政府関係者の話として20日、「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた日本人の80歳代の男女2人が医療機関で死亡したと伝えた。同船の乗客で死亡が確認されたのは初めて。国内での感染者の死亡は、これで3人となった。NHKによると、2人には基礎疾患があり、それぞれ今月半ばに入院していたという。

新型コロナウイルスの集団感染が起きたダイヤモンド・プリンセスでは、日本政府の感染対策について批判が高まるなか、ウイルス検査で陰性となった乗客の下船と帰宅が続いている。

横浜港に停泊中のダイヤモンド・プリンセスに乗船した感染症対策の専門家は18日、船内の感染対策が混乱状態にあったと批判した。

米疾病対策センター(CDC)は同日、船内の感染拡大を防ぐための措置が「十分ではなかったかもしれない」とコメントを発表している。

ウイルス検査で陰性となり19日にダイヤモンド・プリンセスを降りた約500人の乗客は、待機していたバスやタクシーに乗ってその場を離れた。そのまま帰宅して通常の生活に戻ることが認められたが、数日中に政府が連絡を取り健康状態を確認すると、日本の厚生労働省は説明している。

この対応について日本政府は、船内感染の大半は今月5日に健康観察期間に入る前に起きたものだと説明している。

下船が許可された乗客は、ウイルス検査で感染が確認されず、症状の出ていない人たち。日本メディアによると、対象者全員が下船し終わるのは21日の見通し。ただし、検査で陽性となった人と同室にいた人たちは検査で陰性となっても、健康観察期間の終了日が延びるため、隔離期間が続く。

ダイヤモンド・プリンセスの乗客の出身地は50カ国以上で、世界的な感染拡大の発生源になる懸念が出ていると、横浜で取材するBBCのローラ・ビッカー記者は指摘する。

複数の国ではさらに14日隔離

ダイヤモンド・プリンセスから香港で降りた乗客の感染が確認された後、船は今月5日から横浜港で隔離状態に入った。その時点の乗客乗員3711人のうち、これまでに少なくとも621人が感染しており、20日には2人の死亡が確認されるなど、中国大陸以外で最大の集団感染の発生場所となっている。

アメリカをはじめ複数の政府が船内の自国民を退避させる方針。米政府は16日、市民数百人を政府チャーター機で帰国させた。米空軍基地に到着した人たちは、米軍施設で14日間にわたり隔離される。

英外務省は船内の自国民に、21日に予定される政府チャーター機での帰国の手はずが整うまで船内に留まるよう指示している。

フェイスブックなどソーシャルメディアを通じて状況を頻繁に報告していたイギリス人夫妻は19日、ウイルス検査で陽性判定が出たと確認した。感染が確認された他の乗客と同様、この夫妻も病院に搬送された。

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クルーズ船の乗客は「暗闇の中にいる」 英政府の対応を批判

米政府のほか、カナダ、オーストラリア、イギリス各国の政府も、ダイヤモンド・プリンセスから帰国した人たちは14日間にわたり隔離し、健康状態を観察する方針。韓国は、自国民以外はダイヤモンド・プリンセスの乗客の入国を禁止する方針を示している。

米CDCは18日の発表で、自国民を帰国後にさらに14日間、隔離することについて説明。「ダイヤモンド・プリンセス上で防疫措置を講じた日本政府のずば抜けた努力をたたえる」と切り出した上で、「防疫態勢は感染を遅らせるため、公衆衛生にとって多大な利益を与えただろうと考えられるが、CDCは船内の個人間の感染を防ぐに十分ではなかったかもしれないと判断した。CDCは、船内で新たな感染者が増えているペース、特に症状のない人たちの感染が増えているペースは、引き続きリスクだと考えている」と述べた。

その上でCDCは、「アメリカ市民の健康を守るため、船の乗客・乗務員全員の移動を制限し、ダイヤモンド・プリンセスを下船してから少なくとも14日間はアメリカに戻れないこととする」と明らかにした。

5日から2週間の観察期間で乗客乗員3711人のうち感染者が542人に達したことから、船内の感染対策を疑問視する専門家の声も出ている。

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感染症の専門家、客船内の感染対策を批判 BBCが独占取材

神戸大学医学研究科感染症内科の岩田健太郎教授は18日、ダイヤモンド・プリンセスに同日に乗船して見た状況についてYouTubeに投稿したビデオで報告した。岩田教授は、ウイルスがまったくない安全区域(グリーンゾーン)とウイルスがいるかもしれない区域(レッドゾーン)を、船内で明確に区別していないと指摘。船内の感染対策を批判した。

岩田教授はさらに、エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)の大流行の最中に現場にいた時よりも、客船内の方が怖かったと述べた。

この動画について教授は20日朝、ツイッターで「動画は削除しました」と報告したが、同日にはビデオ経由で東京の日本外国特派員協会で記者会見し、船内で汚染区域と非汚染区域の区分が不十分だったなど感染対策の不備を重ねて指摘した。動画削除の理由については、船内の状況が大きく改善したことで「私が投稿した動画の役割は達成された」ためだと説明した。

岩田教授の主張に対しては厚労省関係者から、船内のゾーン区分はできており、多様な組織が重層的に活動する極めて複雑な状況で現場の関係者はがんばっていると、反論する声も出ている。

イランでも死者

Image copyright EPA
Image caption 乗客乗員約3700人が船内隔離されていた大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」(16日撮影)

新型コロナウイルス大流行の中心地となった中国では、19日までに2004人が死亡した。

感染が確認された人の数は中国大陸で7万4185人に達し、それ以外の国・地域では700例以上が確認されている。

イラン保健省は、首都テヘラン南部のゴムで新型コロナウイルスの感染が確認された2人が、19日に死亡したと発表した。中東で新型コロナウイルスによる死者が報告されるのは初めて。

香港政府は19日、感染していた70歳男性が死亡したと発表した。香港での死者は2人目。中国大陸以外ではほかに、日本で3人、フランス、フィリピン、台湾でそれぞれ1人死亡している。

中国政府は17日、感染者4万4000人以上を調べた詳細な疫学調査の結果を発表した。それによると、感染者の8割は軽症で、40歳未満の致死率は0.2%。死亡する感染者の圧倒的多数は高齢者や、既往症のある人たちだという。

(英語記事 Coronavirus: Passengers leave Diamond Princess amid criticism of Japan

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