【米大統領選2020】ブルームバーグ前NY市長、民主党候補者選びから撤退

画像提供, Reuters
米大統領選の民主党候補者を目指していたブルームバーグ前ニューヨーク市長が4日、選挙戦から離脱すると表明した。選挙活動に数億ドルもの自己資金をつぎ込んだことで注目を浴びていたが、結果は米領サモアでの1勝にとどまった。
ブルームバーグ氏は声明で、「私は3カ月前、ドナルド・トランプを倒すために選挙戦に参加した。そしてきょう、私は同じ理由で選挙戦から離脱する」と述べた。
同氏は今年1月末までに4億900万ドル(約440億円)の自己資金を今回の選挙活動に使ったが、2月には今月3日の「スーパー・チューズデー」に向けてさらに相当の額を投資したとみられている。
ブルームバーグ氏は、今後はジョー・バイデン前副大統領を応援すると述べている。
「ドナルド・トランプを倒すにはまず、その可能性が最も高い候補のもとで結束するのが先決だとずっと信じてきた。きのう(3日)の投票を受けて、その候補者とは私の友人で偉大なアメリカ国民のジョー・バイデンだとはっきりした」
大富豪のブルームバーグ氏は今年1月だけで2億2060万ドルを選挙活動に使うなど、献金に頼らないその資金力は他の民主党候補に比べて図抜けていた
「スーパー・チューズデー」ではバイデン氏が14州のうち10州で勝利し、先週までの劣勢から大々的なカムバックを果たした。
一方、左派バーニー・サンダース上院議員は3州で勝利したほか、最大票田カリフォルニア州でも勝つ見通しで、今後の民主党候補争いは両氏の一騎打ちとなる可能性が高くなってきた。
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今年7月の民主党全国党大会で党候補に指名されるには、候補は1991人の誓約代議員(予備選結果に忠実に党大会で投票する代議員、一般代議員)を獲得しなくてはならない。
代議員は夏の全国党大会に出席し、党候補を投票で決める。いま行われている予備選は、この代議員が党大会でどの候補に投票するかを、党支持者が決めるものだ。
各州の代議員は得票率15%以上の候補に、得票率に応じて割り振られる。
スーパー・チューズデーでは、1357人もの誓約代議員の配分先が決まる。
現時点ではバイデン氏がリードしているが、415人の代議員を抱えるカリフォルニア州の結果次第では、これが覆る可能性もある。
当初は予備選をリードしていたエリザベス・ウォーレン上院議員は3日、地元マサチューセッツ州でさえバイデン氏に敗れ、大打撃を受けた。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、スーパー・チューズデーの結果を受けて、バイデン氏は584人の代議員を獲得する見通し。サンダース氏は509人になるという。
今後はどうなる?
次の予備選は3月10日にミシガン州、ワシントン州、アイダホ州、ミシシッピ州、ミゾーリ州、ノースダコタ州で予定されており、352人の代議員の配分先が決まる。
民主党は岐路に立たされている。誰を選べば、今秋にトランプ氏の再選を阻止する可能性が一番高いか、支持者は選ばなくてはならない。
民主党の候補争いは一時、20人以上が出馬して実ににぎやかだった。大勢の女性や有色人の候補者が顔を並べ、民主党らしいと評判だった。しかし今後は、70代の白人男性2人の一騎打ちになりそうだ。
バラク・オバマ前政権の副大統領だった穏健派のバイデン氏と、燃えるリベラル活動家サンダース氏は、アメリカの未来について大きく異なるビジョンを提示している。
バイデン氏は、自分はアメリカに徐々に変化をもたらし、トランプ政権後の国の「品位」を回復すると主張。有権者の信頼を得やすい、現実的な候補だとアピールする。
しかし、バイデン氏の選挙運動は盛り上がりを欠き、あまりパッとしないという批判がある。ワシントン政界の実力者としての経歴も長いことから、よけいなお荷物もたくさん引きずっているとも言われている。
これに対してサンダース氏については、社会民主主義者を自認する候補ではホワイトハウス奪還に必要な浮動票を説得できないという批判がある。
78歳のサンダース氏は、数兆ドル分の増税によって国民皆保険や公立大学の無償化、学生ローンの帳消しなどを実現し、アメリカ経済を「革命的」に一変させる方針だ。
<解説> ブルームバーグ氏撤退、何が間違った? ――アンソニー・ザーカー北米記者
ブルームバーグ氏は典型的とは程遠い選挙戦略を選び、予備選序盤には参加せず、スーパー・チューズデーに集中して大金を注ぎ込んだ。だがその戦略は、冷たく容赦のない現実にぶち当たった。
主な注目ポイント
1) ほとんどの候補者は民主党支持者に好感されていたが、ブルームバーグ氏は例外だった。たとえばヴァージニア州では、予備選投票者の56%が、同氏を好ましく思っていなかった。手の込んだテレビCMやピカピカのダイレクトメールに何億ドルと使ったところで、有権者に信用されていなければ意味はない。
2) ブルームバーグ氏はアラバマ、ノースカロライナ、ヴァージニアの各州でテレビやラジオのCMに3400万ドルを使った。バイデン氏はその何分の1しか使わなかったが、それでもその3州で勝った。ブルームバーグ陣営は早くから、選挙事務所に誰もいないし支援者集会もガラガラだなど、問題が指摘されていたが、どれも今回の悲惨な結果の予兆だった。
3) それでも、ほんの数週間前には支持率が急上昇していたのだ。しかしそこへ来てラスヴェガスでの討論会があり、エリザベス・ウォーレン上院議員によってボロボロに論破された。討論会での出来不出来は今回の大統領選にあまり影響していないが、あの討論会には意味があった。