イギリスの新型ウイルス感染者90人に 政府対策は第2段階に

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イギリスで新型コロナウイルスの感染者が増加している。4日には1日当たり最多となる36人の感染が確認されたほか、5日にはスコットランドでさらに3人増え、全体で90人となった。ロンドンでは入院患者の感染も確認された。

国内の感染者が90人に達したことを受け、英政府は新型ウイルス対策の4段階のうち、最初の「封じ込め」段階から、次の「エピデミック(感染流行)を遅らせる」段階に移行したという。

イングランド主任医務官(CMO)のクリス・ウィッティー教授は下院委員会で、国内で「市中感染」が起きている可能性は「きわめて高い」と説明した。ウイルス感染拡大の速度を抑制するための措置は、「社会のあり方の変化」を伴う可能性があるという。

英政府の新型ウイルス対策行動計画は、「封じ込め」「遅延」「研究」「鎮静」の4段階からなる。

感染拡大の速度を遅らせるための措置は決まっていないが、政府は大規模集会の禁止、学校の休校措置、公共交通機関を利用しないよう呼びかけることなどを検討しているという。

これまでに感染が確認された90人の内訳はイングランドで80人、スコットランドで6人、北アイルランドでそれぞれ3人ずつ、ウェールズで1人となっている。

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こうした中、ロンドン南部のキングス・コレッジ病院では、2人の患者が新型ウイルスによる感染症(COVID-19)にかかっていたことが判明した。

この病院に入院している高齢者の家族はBBCの取材に応じ、感染者がCOVID-19と診断されるまで、自分たちの身内と同室だったと話した。

病院側は、感染者がいた病棟への立ち入りを制限し、感染者と接触した可能性のある人たちを追跡しているという。

また、同じくロンドン南部のゴールドスミス大学では、学生寮への訪問者が新型ウイルスに感染していたことが明らかになった。

大学側は学生に送った電子メールで、この人物が「治療を受けて」おり、訪問された学生は「予防措置として自主隔離している」と説明している。

新型ウイルスの流行を受け、バッキンガム大学やロンドン大学は卒業式を延期している。

北アイルランドでは、イタリア北部からクイーンズ大学に戻ったばかりの大学院生がウイルスに陽性と判定された。他の学生たちと接触していたという。

スコットランドで新しく感染が確認された1人も、イタリア北部から帰国した人で、もう1人は感染者との接触があった。

スコットランドの感染者はいずれも病状は安定しているという。

イングランドではロンドンのほか、リヴァプール、ヨーク、カーライル、ニューカッスル、トーキー、マンチェスターなどで新しく感染者が確認された。

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最悪のシナリオでは人口の8割感染も

ウィッティー医務主任は4日には、イギリス国内でCOVID-19が流行する「可能性は高い」と延べ、「最悪のシナリオ」では人口の最大80%が感染することもありえると述べた。

一方で、国内で都市や町ごと封鎖するような措置に踏み切ることは「まずないだろう」と話した。

保健当局は、国民に繰り返し手を洗い、その都度少なくとも20秒はかけるよう呼びかける、大々的なキャンペーンを開始した。

動画説明,

病原体はどうやって体内に……正しく手を洗うには

マット・ハンコック保健相は、ひんぱんに手を洗うことこそ、各自ができる「最も重要なことだ」と強調している。

保健省の公衆衛生執行機関、パブリック・ヘルス・イングランド(PHE)は、水とせっけんが使えない場合は、アルコール含有率60%以上の消毒液を使うよう呼びかけている。とりわけ公共交通機関を使った後は、手洗いがきわめて重要だとしている。

傷病手当の前倒しへ

これに先立ち4日には、ボリス・ジョンソン英首相が新型ウイルス拡大を防ぐため、労働者が職場を休んだ4日目からではなく1日目から法定疾病手当(SSP)を取得できるよう、緊急法案を提出すると発表した。

ジョンソン首相は下院に対し、周囲にウイルスを広めないようにと自主隔離する人たちが「正しいことをしているのに罰を受けてはならない」と強調し、法案の速やかな成立を求めた。

イギリスの法定疾病手当とは、法で定められた額の傷病手当金が雇用主から労働者に支払われる仕組み。これまでは、傷病のため4日以上連続して欠勤していることなどが支給の条件だったが、英政府はこの条件の変更を求めている。法案が成立すれば、法定疾病手当てを受ける人は従来より40ポンド(約5600円)多く支給されることになる。

英政府は、イギリス国内で新型ウイルスの流行がピークに達した時点で、労働人口の最大2割が同時に病気で欠勤することになるかもしれないとみている。

新型コロナウイルスのアウトブレイク(大流行)が昨年12月に中国湖北省で始まって以来、50カ国以上で約9万人が感染し、3000人以上が死亡している。

イギリスでは先週、横浜港に隔離のため停泊していた客船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客だったイギリス人男性が日本国内の病院で死亡し、イギリス人初の死者となった。その後、イギリス国内では感染経路のたどれない感染者も複数出ている。

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<解説> 新しい感染者から分かることは――ニック・トリグルBBC健康担当編集委員

保健当局は以前から、感染者は増えると覚悟するように警告していた。

感染者の増加はピークに達するまで、2~3カ月は続くかもしれない。

新しい感染者のうち、感染経路が特定できない人が3人いることが、特に不安材料だ。そういう人はこれで5人に上り、それはつまり市中にウイルスが出回っているしるしなのかもしれない。

新しく確認された感染者の中には、自分が外国の感染地域にいたわけではなく、そういう場所にいた人たちとイギリス国内で接触した人たちが含まれる。つまり、国内にすでに感染者のクラスター(小規模な集団)が発生しつつあるというしるしで、保健当局には感染拡大防止の対策が求められる。

保健当局は新しい感染者がどこで確認されたのか、どれくらいの人数のクラスターなのか、詳細を公表していない。そのため重要な疑問が、解消されないまま残っている。