アフガン戦争犯罪を捜査へ ICCが判断を一転、米国は反発

US troops in Kabul, 2016

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アメリカはICC加盟国ではないため、同国民にはICCの管轄権が及ばない

国際刑事裁判所(ICC)は5日、アフガニスタン戦争におけるアメリカなどの戦争犯罪の疑惑について、捜査を進める判断を出した。

戦争犯罪をめぐる捜査に対しては、ICCの予審判事部が19年4月、「正義にかなう」ものにはならないとして、進めるべきではないとの判断を示していた。

今回、上訴審がこれを覆した。

これにより、アフガニスタンの反政府勢力タリバンや同国政府、米軍による2003年5月以降の行動が捜査されることになる。

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ICCでは2017年から、ファトゥ・ベンスーダ主任検察官が、戦争犯罪に関する正式な捜査開始を求めてきた。

上訴審でピオター・ホフマンスキ判事は、ICCが管轄する犯罪行為がなされたと信じるのに十分な根拠を、検察官が示したと説明。予審判事たちは間違いを犯したと述べた。

「向こう見ずだ」

ICCの判断について、マイク・ポンペオ米国務長官は「向こう見ずだ」、「説明不可能な、法的機関を装った政治機関による、まさにあぜんとする行為だ」と述べ、捜査から米兵を守ると宣言した。

また、「アフガニスタンに和平をもたらす、ここ数十年で最大のチャンスである歴史的な和平合意にアメリカが署名した数日後にこの判断が出されたのは、ますます向こう見ずだ」と述べた。

アメリカとタリバンは18年以上にわたる戦闘の末、先月29日に和平に向けた合意に署名した

米国はICCに加盟せず

アメリカはICCに加盟していないため、ICCの権限は米国民には及ばない。

ドナルド・トランプ大統領の米政権は昨年、ICC関係者に対し、渡航制限などの制裁を発動した。

トランプ氏はまた、米国内でアフガニスタンでの戦争犯罪で起訴された米兵に恩赦を与えてきた。

一方、アフガニスタンはICCの加盟国だが、捜査には反対の意向を示している。

疑惑の内容

ICCは10年以上かけ、民間人への意図的な攻撃や拘束、裁判を経ない処刑などの犯罪について予備調査をした。

ICCの2016年の報告書では、米運が米中央情報局(CIA)の管理する秘密の拘束施設で、拷問をしていたと思われる根拠があるとした。

報告書はさらに、アフガニスタン政府が捕虜に拷問をし、タリバンも民間人虐殺などの戦争犯罪を実行したと考えられるとした。

<分析>重要な瞬間――ジョナサン・マーカス防衛外交担当編集委員

ICCは長い間、アフリカなどにおける小さな犯罪容疑に対して多大な時間を費やす一方、強大国がからむ事件には及び腰だと批判されてきた。

その意味で、今回、戦争犯罪の疑惑に関する捜査が行われることになったのは、重要な瞬間といえる。

ICCはタリバンとアフガニスタン政府軍、それにもちろんアメリカ人の行為について検討する。

しかし問題がある。アメリカはICCの加盟国ではないため、協力は望めない。アフガニスタンも友好的とは程遠い。

アフガニスタンでは、何らかの司法手続きによって悪事を行った者の責任を問うことが、和解には欠かせないと考える人が出てくるだろう。しかし、ICC派遣団が直面する現実的な問題は、克服不可能かもしれない。

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タリバンと平和は築けるのか? BBC記者がアフガニスタンで取材