香港の行政長官、国家安全法を擁護 「権利は損なわれない」

Carrie Lam

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林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は25日、中国政府が制定を目指している国家安全法を擁護し、他国に「介入する余地はない」と述べた。

国家安全法が成立すれば、香港では「反逆、分離独立、扇動、反政府」行為などが禁止されることになる。香港の活動家は、この法案が香港の自由を制限するものだと批判している。

林鄭行政長官はこの日、国家安全法について初めてコメントし、法に従っている大半の市民を守るための「責任ある」取り組みだと擁護した。

また、この法が香港市民の権利を制限することはないと述べた。

週末には国家安全法の導入に反対するデモがあり、警察は催涙ガスや放水車などを使用した。

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国家安全法制を整備する「決定案」には、香港が国家安全保障を「改善すべき」だと記されている。

また中国政府が自治政府とは別に、香港の法執行機関を独自に設置できる可能性が示唆されている。

中国の全人代は、5月28日の閉会前にこの決定案について採決を行う予定。その後、同国の最高立法機関である全人代の常務委員会に渡され、6月末には法として施行されることになる。

決定案は発表以来、国際的な強い批判にさらされている。しかし毎週行われている定例記者会見で林鄭行政長官は、「この法律について他国が介入する余地はない」と述べた。

また、国家安全保障に関する法律に欠点がある状態を看過できる国はなく、中国の一部である香港も同様だと話した。

一方、国家安全法に反対する人たちは、中国政府がこの法律を通じて、香港独自の自由を直接抑えようとしていると指摘している。

香港の憲法ともいえる「香港特別行政区基本法」は1997年、イギリスからの香港返還時に制定された。基本法では、中国にはない抗議活動の自由など、香港独自の権利が保障されている。

懸念には「まったく根拠がない」

林鄭行政長官は会見で、国家安全法の詳細は出ていないものの、中国政府の「決定案」は香港市民を安心させるもののはずだと話した。

長官によると、ここ数日で市民から「前向きな反応」が出ており、「外国の政治家が言っていることとは正反対」だという。

また、国家安全法はテロや反政府行為に関連している「一部の人」を標的にしており、内容に懸念がある人は詳細が出るまで待ってほしいと語った。

林鄭行政長官は、香港の自由や活気、中心的価値は「引き続きここに残る」と話した。一方で、「権利や自由は絶対的なものではない」とも述べている。

その上で、この法律によって世界的な金融の中心地としての香港の立場は打撃を受けるのではなく強まると述べ、一連の懸念は「まったく根拠がない」と一蹴した。

過去にさかのぼってデモ参加者を逮捕できるようになるのではないかという疑問も、「想像に過ぎない」と語っている。

これまでの経緯

香港では昨年、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案をめぐり、数百万人もの市民が7カ月にわたって街中で抗議。デモは民主化や独立を求める動きも加わって次第に暴力的になっていった。この法案は立法会(議会)での審議が中断された後、最終的に正式に撤回された。

その後、11月に行われた区議会選挙では民主派が地すべり的勝利を果たし、デモも次第に終息したものの、香港にはなお反中国的感情が残っている。

基本法では、香港政府は国家安全保障法の制定を義務づけられている。しかし2003年の国家安全条例案には約50万人が反対し、廃案となった。

そのため、今回の動きは中国政府が国家安全法を強行成立しようとする試みだと批判する声がある。

<解説>批判を抑えるのは困難 ――林祖偉、BBC中国語

林鄭月娥行政長官は、国家安全法は「ひとにぎりの違法な犯罪者たち」だけを標的にしていのだと市民を説得しようとしたが、詳細を尋ねられてもほとんど明かさなかった。

これは林鄭氏の防衛ラインでもある。会見で行政長官は、中国政府によるこの法案の精神は懸念の材料にはならない、実際の法律の詳細を待ってほしいと繰り返した。

しかし、批判を抑えるのは困難だろう。

香港大律師公会(弁護士会)はすでに、この法律が「市民的及び政治的権利に関する国際規約」にのっとったものである保障はないと警告している。

新型コロナウイルスの流行を受け、8人以上の集会が禁じられている中で行われた週末のデモは、ここ数カ月で最大規模のものだった。

国家安全法に「前向きな反応」をもらっているという林鄭長官の言葉とは裏腹に、さらなるデモを呼びかける声もある。その規模がどうなるかは誰も分からない。