スペースXの宇宙船、ISSにドッキング成功 米民間で史上初

ジョナサン・エイモスBBC科学担当編集委員

Astronauts

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ベンケン飛行士(前列左)とハーリー飛行士(同右)はISSの3人の搭乗員と合流した

米民間の宇宙船「クルードラゴン」は31日、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングし、飛行士のダグ・ハーリー氏とボブ・ベンケン氏がISSに入った。

宇宙開発企業スペースX(エックス)が製造し運航するクルードラゴンのカプセルは、中国の上空422キロで、周回軌道を回るISSの船首部分にドッキングした。

漏れの有無や圧力、温度などを確認した後、2飛行士はISSに入り込み、滞在中のロシアとアメリカの飛行士と対面した。

ハーリー氏とベンケン氏が乗った宇宙船は、30日にフロリダ州で打ち上げられた。

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アメリカで宇宙船が打ち上げられたのは、米航空宇宙局(NASA)がスペースシャトルの使用を9年前に終了してから初めてとなる。

NASAは、「NASAの飛行士が民間の宇宙船で宇宙ステーションに入るのは人類史上初となる。ベンケン飛行士とダグ飛行士はスペースXのドラゴン・エンデヴァー宇宙船でついに周回軌道を回る研究施設に到着した」とツイートし、その瞬間の動画を公開した。

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今回のミッションは、NASAが民間企業の移動サービスを有料で利用する時代に入ったことを意味する。NASAが今後、ISSを往復する宇宙船を所有し運航することはない。

ISSへの往復は今後、スペースXのような企業が独占的に手がけることになる。同社はカリフォルニア州ホーソーンに本社があり、テクノロジー関連で財を成したイーロン・マスク氏が率いている。

クルードラゴンとISSのドッキングは、グリニッジ標準時間31日午後2時16分(日本時間同11時16分)に確認された。スペースXが製造したロケット「ファルコン」に乗せ、ケネディ宇宙センターから打ち上げられてから19時間後のことだった。

ドッキングは完全に自動で行われ、ハーリー氏とベンケン氏は何もしなくてよかった。ただ、手動で接近する飛行も訓練はしていた。

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アメリカの宇宙飛行士がアメリカから打ち上げられた宇宙船に搭乗したのは9年ぶり

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クルードラゴンとISSのドアは、グリニッジ標準時間31日午後5時2分(日本時間6月1日午前2時2分)に開かれた。ハーリー氏とベンケン氏が浮きながらドアを通ると、ISS船長でNASAの同僚のクリス・キャシディ飛行士、ロシアのアナトリー・イワニシン飛行士、イワン・ワグネル飛行士に出迎えられた。

ハーリー氏は額にできたあざをなでながら、「ここに来て、クリスと仕事ができるのがうれしい。私たちもここになじんで、あまりへまをしないようにしたい」と述べた。

「7時間くらい」寝た

ベンケン氏は、2人とも十分に休養できたので、任務開始の準備は万端だと話した。

「おそらく7時間かそこらたっぷり(睡眠を)取った」と同氏は、テキサス州ヒューストンのミッションコントロールに音声回線で報告した。「初日の夜はいつもちょっとうまく寝られないが、ドラゴンは乗り心地がよく、空調も快適で、素晴らしい夜を過ごした。再び地球低軌道に戻ることができて興奮している」。

NASAのジム・ブライデンスタイン長官は、2人の任務が順調なことを祝福した。「世界中がこのミッションを見守った。あなたたちが私たちの国のため、そして世界を元気付けるためにしたことのすべてを、私たちは非常に誇りに思っている」。

Crew

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ハーリー飛行士(奥)とベンケン飛行士は全自動のドッキングに臨んだ

スペースXは昨年、新しい宇宙船の最初のデモ飛行を実施したが、乗船したのは人形だけだった。今回が、人を運ぶ初めての旅となる。

ハーリー氏とベンケン氏の任務は、宇宙船のすべてのシステムを試し、エンジニアに通知することだ。

スペースXとNASAは、有人飛行を順調に成功させ、26億ドル(約2800億円)規模の契約を結ぶ次の段階へと速やかに移りたい考えだ。その段階では、飛行士計6人を運ぶ「タクシー」としての航行が何回か予定されており、8月終わりにも最初の打ち上げが見込まれている。

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クルードラゴンの打ち上げ

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米国旗を持ち帰ることに

ハーリー氏とベンケン氏がISSに到着したことで、スペースシャトル計画最終年の2011年のメンバーによって設置された米国旗が回収されることになる。

スペースシャトル「アトランティス」の乗組員らは、後進を励ますためにこの国旗を残した。1981年の最初のスペースシャトルの飛行の際にも運び込まれたこの国旗は、地球に戻され、次の地球の軌道の外へと行く計画へと引き継がれる予定だ。

ハーリー氏とベンケン氏は米宇宙飛行士らの伝統に従って、宇宙船クルードラゴンに名前を付けた。2人は「エンデヴァー」と命名。NASAと民間パートナーによる新たな船出を祝う意味と、2人が2000年代後半に乗船したスペースシャトル「エンデヴァー」の米宇宙開発への貢献に感謝する気持ちを込めた。

Behnken and Hurley

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軌道に乗った「エンデヴァー」から通信するベンケン氏(奥)とハーリー氏(手前)

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ハーリー氏とベンケン氏がどれくらいISSに滞在するかは不明確だが、長くて4カ月ほどとみられる。

彼らはその間、現在のISSエクスペディション63(63次長期滞在)の一員となり、日々の科学的な調査やメンテナンスに従事する。

ISSのキャシディ船長は、新たな搭乗員が日曜日に到着したことから、通常は土曜日に行う掃除ができなかったと冗談を言った。「次の週末に埋め合わせをしよう」と船長は言った。

Elon Musk

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スペースXを率いるイーロン・マスク氏

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The ascent
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打ち上げ計画の概要。クルードラゴンは打ち上げロケットの上に搭載されており、途中で第1ステージと第2ステージの切り離しがある。第1ステージは切り離された後に制御された状態で着陸する。クルードラゴンは軌道に乗った後、国際宇宙ステーションへと向かう

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The capsule
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クルードラゴンの全体図。乗組員の生活する上部と、トランク・太陽光パネルのついた下部に分かれている

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