ハリポタ作者、トランスジェンダーめぐる発言で物議 映画出演者も批判

JK Rowling in New York City

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「ハリー・ポッター」シリーズの作者J・K・ローリング氏(54)の、トランスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が異なる人)をめぐる発言が議論の的になっている。

今回のことの発端は、ローリング氏による7日のツイートだった。「月経のある人のためCOVID-19後にこれまでより平等な世界を作る」というタイトルの記事について、「月経のある人? そういう意味の言葉が、かつてあったんじゃない? 思い出すの、誰か助けて。ウンベンだっけ? ウインプン? ウーマド?」」とツイートした。

このツイートに対して、<女性(ウーマン)という言葉にはトランスジェンダーの女性が含まれる。ローリング氏の発言はそれを否定する、トランス差別だ>という批判が湧き起こった。

これまでに、ローリング氏原作の「ハリー・ポッター」シリーズや「ファンタスティック・ビースト」に出演した英俳優のダニエル・ラドクリフ氏やエディ・レッドメイン氏なども、ローリング氏の考えに異を唱えた。

これに対しローリング氏は10日、自身のブログであらためて意見を表明し、意見を撤回するつもりはないと説明している。

議論の発端は?

7日に最初のツイートが批判された後、ローリング氏は同日、続けてこう書いた。

「性別が現実でなければ同性愛はありえない。性別が現実でなければ、世界中の女性が生きている現実が消されてしまう。私はトランスの人たちを知っているし愛しているけど、性別という概念を消すことは、人生に関わる有意義な議論の機会を多くの人から奪ってしまう。真実を話すことはヘイトではない」と反論した。

さらにローリングさんは、「もう何十年もトランスの人たちに共感してきた私のような女性が、女性と同じように男性の暴力に対して弱い立場のトランスの人たちを仲間だと思ってきた私のような女性が、性別は現実のものだと考え、性別の影響を受けてきたからといって、私たちがトランスの人たちを『憎んでいる』と受け止めるなど、ナンセンスだ」と続けた。

「あなたがトランスだからと差別されれば、私は一緒に行進して抗議する。同時に私の人生は、自分が女性であることで形作られてきた。そう発言することはヘイトではないと思う」

ローリング氏は昨年12月にも、トランスジェンダーは生物学的性別を変えられるわけではないと発言して解雇された研究者を支持している。

「性別」と「ジェンダー(性自認)」は意味が異なり、前者は身体的なことがらを、後者は心理的・社会的なことがらを表す。

トランスジェンダーの人は、シスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が同じ人)と同じ権利が欲しいと訴えている。一方、トランスジェンダーで女性を自認する人の権利行使が、生まれつき女性の人の権利を侵食する場合もあると懸念する人たちもいる。

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ローリング氏は10日、自分のブログに長文を投稿し、意見を表明。長いことトランスジェンダーについて学んできた経緯を説明し、「教育すること、人を守ること」や「表現の自由」など、トランスジェンダーについて議論する必要があると考えた理由を5つに分けて説明した。

また、自分には家庭内暴力(DV)や性暴力の被害者になった個人的な経験があり、身体的性別によって区分けされた空間が必要なこともあると論じた。

「私は20年以上、世間の注目を浴びる立場にいるが、自分がDVや性暴力の被害者だということは公言してこなかった」

「自分にそういうことが起きたことを恥じているからではなく、思い出すことがトラウマだったからだ」

「また、最初の夫との間に生まれた娘を守りたいと思った。彼女のものでもある話を、自分のものにしたくなかった」

「でも少し前、当時のことについて世間に正直に話したらどう思うかと娘に聞いたら、娘は後押ししてくれた」

「私がこういうことを話すのは、同情を買いたいからではない。私と同じような経験をして、身体的性別で区切られた空間が欲しいと思うからといって、差別的な分からずやと罵られた大勢の女性と連帯したいからだ」

「女性蔑視の社会」

ローリング氏はまた、ツイッターでトランスジェンダーについて発言しようと思ったのは、世の中がますます女性蔑視的になっていると思ったからだと話した。

「私が経験した中で、今が一番、女性蔑視のひどい時期だ」とローリング氏は語っている。

「1980年代には、もし将来自分に娘ができたら、自分よりも格段に良い人生を送れるはずだと思っていた。しかしフェミニズム攻撃から、ポルノにあふれたインターネット文化に至るまで、世の中は少女たちにとって格段に悪いものになったと思っている」

「ここまで女性が名誉を傷つけられ、人間として扱われない状態を、私は見たことがない」

出演者からの批判

「ハリー・ポッター」の映画シリーズで主役を演じたラドクリフ氏は、性的マイノリティーの自殺防止をすすめている慈善団体「The Trevor Project」のウェブサイトで、ローリング氏の意見に反対した。

「トランスジェンダーの女性は女性だ」

「これに反する発言はすべて、トランスジェンダーの人々のアイデンティティーや尊厳を消し去っている」

一方で、ローリング氏のジェンダーに関する発言が、ファンにとっての「ハリー・ポッター」シリーズを「汚さない」ことを願うと述べた。

また、これは自分とローリング氏の「内輪もめ」ではないと説明。ローリング氏は「自分の人生の道筋を作った」人なので、「何か言わずにはいられなかった」と書いた。

「(ハリー・ポッターの)本から、宇宙で最も強い力は愛だと教わったなら(中略)何が純潔かという教条的な考えが、弱い立場の人たちの抑圧につながると本から教わったなら、どの登場人物がトランスでどの人がノンバイナリーだったり流動的な性別で、どの人がゲイでバイセクシャルだと思うなら、あの物語の中に何か自分に響いてこれまで自分をどんな形でもいいから助けてくれたものを見つけたなら……それはあなたと、あなたが読んだ本の間のことであって、それは神聖なことです」

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ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフ氏(左)とJ・K・ローリング氏

映画「ファンタスティック・ビースト」で主役のニュート・スキャマンダーを演じたレッドメイン氏は、「ジョー(ローリング氏)の発言には反対だ。トランス女性は女性、トランス男性は男性、ノンバイナリー(性自認が男性だけでも、女性だけでもない人)も存在する」と述べた。

雑誌「バラエティー」に掲載した声明でレッドメイン氏は、「トランスコミュニティーの代弁をしようなどとは決して思わないが、自分にとって大切なトランスジェンダーの友人や同僚たちは、アイデンティティーを疑問視され続けることにうんざりしている。そういう疑問はあまりにも多くの場合、暴力や虐待につながるからだ」と話した。

「トランスの人たちはただ単に穏やかに生きたいだけで、それが認められるべき時期に来ている」

レッドメイン氏は世界初の性別適合手術を受けたトランス女性をもとにした映画「リリーのすべて」に主演し、2016年米アカデミー賞の主演男優賞候補になった。

「ハリー・ポッター」シリーズでハーマイオニー・グレンジャーを演じたエマ・ワトソン氏も、「トランスジェンダーの人々は、その人たちがこうだと言ったままの人たちだ。そのアイデンティティーに疑問を持たれたり、そうじゃないと言われることなく生きる権利がある」と発言した。

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エディ・レッドメイン氏(中央上段右)は、映画「ファンタスティック・ビースト」で主役を務めた

トランスジェンダーをめぐる議論、なぜ活発に?

「性別」は身体的なことがらを、「ジェンダー」は心理的・社会的なことがらを表す。

ステファニー・デイヴィーズ=アライ氏は、子どもを持つ親がトランスジェンダーについて議論するプラットフォーム「Transgender Trend」を主催する。

そのデイヴィーズ=アライ氏はBBCラジオの番組で、「女性は性自認ではなく、生物学的性別によって抑圧される。ひとつの属性としての生物学的女性、そのための場所も必要だ」と説明した。

性別と性自認を区別するこうした主張に、反論する人もいる。トランスジェンダーの権利活動家ジュリア・セラノ氏は、互いに排他的な関係にある性別は2つだけではないと主張する。

セラノ氏によると、性別は染色体や生殖器といった複数の二形要素の組み合わせで構成される。女性の要素だけ、あるいは男性の要素だけと要素が揃う人もいれば、揃わない人もいるのだという。