トランプ氏、抗マラリア薬の使用を再び擁護　新型ウイルス治療に有効と

2020年7月29日

アメリカのドナルド･トランプ大統領（74）は28日、抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」について、新型コロナウイルスを撃退するのに有効だと再び主張した。有効性が確認できないとする米政権の公衆衛生当局者らの見解と、大統領の主張が矛盾する事態が続いている。

トランプ大統領はこの日、ヒドロキシクロロキンがCOVID-19治療薬として認められなかったのは、自分が勧めたからだと主張した。

「私が何かを薦めると、『使うな』と言いたがる」と、ホワイトハウスで記者団に述べた。

前日の27日には、トランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏がヒドロキシクロロキンを称賛する内容をツイートし、ツイッターがアカウントを一時制限した。

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トランプ氏は今年3月に初めて、ヒドロキシクロロキンの使用を強く勧めた。

有効性示す証拠なく

米食品医薬品局（FDA）は先月、ヒドロキシクロロキンについて、複数の臨床試験結果から、新型ウイルスによる感染症COVID-19治療に有効ではないと判断し、緊急使用許可を撤回していた。

ヒドロキシクロロキンをめぐっては、新型ウイルス治療での有効性を示す証拠はなく、規制当局は心臓に悪影響を及ぼす恐れがあると警告している。

5月に英医学誌ランセットに掲載されたアメリカやスイスの研究者たちの報告によると、ヒドロキシクロロキンを患者に投与しても治療効果はみられなかった。また、抗マラリア薬を使わなかった患者に比べ、使った患者は入院中に死亡する確率が高く、心拍異常がみられたという。この論文はその後、データの信用性への懸念を理由に撤回された。

世界保健機関（WHO）は、ヒドロキシクロロキンがCOVID-19治療あるいは予防に有効であると「現時点では証明されていない」としている。

14日間服用し「副作用なかった」

当時73歳だったトランプ大統領は今年5月、新型ウイルス予防のために未実証のヒドロキシクロロキンを服用し始めたと明かし、記者団を驚かせた。

さらにトランプ氏は今月28日、この薬を14日間服用したが副作用はなかったと述べ、新型ウイルス治療に有効だと再び主張した。

「自分の観点から言うと、そして多くの資料を読んだ上で、多くの知識をもとにすれば、こうとしか言いようがない。感染の初期段階では、とても良い効果があり得ると思う」とトランプ氏は述べた。

「政治的にはあまり人気がないようだが、それを除けば、これを使って損することがあるとは思えない」

「自分の主張ではない」

トランプ氏がリツイートし、現在は削除されている動画では、複数の医師がヒドロキシクロロキンは「COVID-19の治療法」であり、新型ウイルスの感染拡大を遅らせるために「マスクをする必要はない」と主張していた。この動画はトランプ氏のツイッターのフォロワー約8400万人にシェアされ、フェイスブックでは1700万回以上視聴された。

この動画について記者団から問われると、トランプ氏は動画に取り上げられていたグループを「とても尊敬されている医師たち」だと思ったと答えた。「見事な発言をしている女性がいた」。

この女性とは、テキサス州ヒューストンのステラ・イマニュエル医師のことと思われる。この医師は、自分がヒドロキシクロロキンで350人以上の新型ウイルス患者の治療に成功したと主張している。

米紙デイリー･ビーストによると、このイマニュエル医師はかつて、政府を動かしているのは「冷血のは虫類」で、不信心になるワクチン開発が進められているなど、極端な主張を繰り返していた。

トランプ氏の記者会見に先立ち、アメリカの感染症研究の第一人者、米国立アレルギー感染症研究所（NIAID）所長のアンソニー・ファウチ博士は28日、ヒドロキシクロロキンはCOVID-19の適切な治療法ではないと述べた。

ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策タスクフォースに参加するファウチ氏は米ABCニュースの朝の番組で、同薬は「新型コロナウイルス感染症に有効ではない」と述べた。