ポリオ、アフリカで根絶宣言 残るは南アジアの2国
ナオミ・シャーベル=ボール、BBCニュース

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ポリオはワクチン接種によってのみ予防できる
アフリカで野生株のポリオが根絶されたと、アフリカ地域認定委員会(ARCC)が25日、宣言した。
ウイルス性の感染症であるポリオは通常、5歳未満の子どもに影響を及ぼし、回復不能なまひを引き起こす場合もある。呼吸器の筋肉が影響を受けると死に至ることもある。
25年前には、アフリカの何千人もの子どもたちにポリオウイルスによるまひが見られた。
アフリカで根絶されたことで、ポリオが残るのはアフガニスタンとパキスタンだけとなった。
ポリオの治療法はないが、ワクチンで予防することができる。
ナイジェリアから無くなる
アフリカで最後にポリオが確認されていたのはナイジェリアだった。10年ほど前までは、全世界で確認された感染者の半数以上を同国が占めていた。
ナイジェリアは大規模なワクチン接種運動を展開。遠隔地や、武装集団により危険地域となっている場所にも及び、スタッフが殺害されたこともあった。
ポリオとは
ポリオはヒトからヒトに伝染するウイルスで、汚染された水を通してうつることが多い。神経系を攻撃し、まひを引き起こす。
野生株のポリオ3つのうち、2つは全世界で根絶されている。アフリカが25日に根絶を宣言したのは、残りの1つだ。
アフリカでは人口の95%以上がワクチン接種により免疫を得ている。ARCCはこれを、野生株ポリオ根絶宣言の条件の1つにしていた。

過去1年間にポリオウイルスの感染が確認された国。青色はワクチン由来、赤色は野生株(アフガニスタンとパキスタンにはワクチン由来のウイルスの感染もある)出典:WHO

アフリカに残るのは、ワクチン由来のポリオウイルスだけとなった。今年、177人の感染者が確認されている。
それらのウイルスは経口ポリオワクチンから変異したまれなもので、免疫を持つ人が少ない地域で広がる恐れがある。
世界保健機関(WHO)は、こうした感染をナイジェリア、コンゴ(旧ザイール)、中央アフリカ、アンゴラで多数確認している。
アフリカはどうやって根絶した

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ポリオワクチンは1952年に開発された

ポリオワクチンは1952年に開発され、1961年には経口ワクチンができた。現在も世界で広く使われている。
1996年にはアフリカ大陸で計7万5000人以上に、ポリオによるまひが見られた。当時はアフリカのすべての国で、感染者が確認されていた。
同年、南アフリカのネルソン・マンデラ大統領(当時)が、「ポリオをアフリカから蹴り出せ」と名付けた運動を開始。何百万人もの保健スタッフが村々を訪ねて回り、ワクチンを手渡した。
この運動は、国際ロータリー(RI)などの団体でつくる連合体によって支援された。RIは1980年代から、ポリオワクチンの接種に力を入れていた。
1996年以降、数十億もの経口ポリオワクチンが供給され、推定180万人を野生株のポリオウイルスの感染から回避させたとされる。

ナイジェリアのポリオ生存者協会の会長はワクチンに懐疑的な親に対し、子どもにワクチンを接種するよう説得する活動を続けている

ポリオは再び流行する?
ポリオは感染が確認されていない国にも簡単に侵入する。ワクチン接種率が低い国では、急速に感染が広まる恐れがある。
それが起きたのがアンゴラだ。内戦にもかかわらず、2001年にポリオを根絶していた。
しばらく感染が確認されなかったが、2005年になって多くの感染者が見つかった。ウイルスが外国から持ち込まれたとみられる。
WHOは、世界的な根絶を達成するまでは、警戒を緩めないことが重要だとしている。
ワクチン接種を怠ってガードを下げれば、野生株のポリオが素早く広がる恐れがある。
ワクチン由来のものを含め、すべての種類のポリオを根絶させるには、調査とともにワクチン接種が欠かせない。