米国土安全保障省、ロシア疑惑で情報操作か 元高官が内部告発

US President Donald Trump shakes hands with acting U.S. Department of Homeland Security Secretary Chad Wolf

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内部告発された国土安全保障省のチャド・ウルフ長官代理(左)

アメリカ国土安全保障省の元情報部門高官が、ロシアの選挙介入の脅威を過小評価するよう同省トップから指示されていたと内部告発した。指示の理由は「米大統領の印象が悪くなる」からだったという。

内部告発を行ったブライアン・マーフィー氏は、ロシアの選挙介入だけでなく、白人至上主義などに対する報告についても内容を変更するよう求められたと説明。こうした指示に従わなかったため、降格させられたと話した。

その上で、一連の命令は違法だと訴えている。

ホワイトハウスと国土安全保障省は、共にマーフィー氏の主張を否定している。

マーフィー氏の告発は、野党・民主党が多数派の連邦議会下院の情報委員会が発表したもの。マーフィー氏は今月中にも議会で証言するよう求められている。

ロシア関連の疑惑とは

8日に提出された内部告発文では、国土安全保障省のキルステン・ニールセン元長官に加え、現職のチャド・ウルフ長官代理およびケン・クッチネリ副長官代理について数々の疑惑が示されている。

マーフィー氏によると、2018年3月~2020年8月に「権力の乱用や情報分析に対する検閲が繰り返された。アメリカの国益に影響と損害を与えようとするロシアのくわだてをめぐる情報プログラムも、不適切に管理されていた」という。

2020年5月半ばには、マーフィー氏はウルフ長官代理から「ロシアの介入の脅威をめぐる分析を停止し(中略)代わりにイランと中国からの介入について報告するよう」指示された。告発では、この命令はホワイトハウスのロバート・オブライエン国家安全保障顧問から直々に出たものだ主張している。

マーフィー氏は「アメリカを重大かつ特定の危険にさらすことになる」として、この命令に従わなかった。しかし7月には、「大統領の印象が悪くなる」ため、ロシアについての報告を「保留」するよう命じられたという。

内部告発文ではその後、マーフィー氏が会議から外され、7月には情報部門の首席副次官から、管理部門副次官の補佐官に実質的に降格させられたことが記されている。マーフィー氏は降格取り消しを求めている。

アメリカの情報機関は2016年の大統領選挙にロシアが介入した事実を確認している。しかし、ドナルド・トランプ大統領はかねて、この主張を否定。疑惑は政治的な動機による「でっちあげ」だと述べている。

元長官が「虚偽の重大情報を提供」

マーフィー氏はこのほか、2019年にメキシコ国境を越えてアメリカに入国する不法移民が増加した際にも、違法な命令があったと説明。ホワイトハウスから、移民の数を実際よりも多く報告し、テロ行為と結びつけるよう支持されたと述べた。

トランプ政権はこの時、メキシコ国境の壁を建設し、移民の親と子どもを引き離して収容するなど、査証(ビザ)のない移民に厳格な措置を施していた。

告発文には、「(マーフィー氏は)情報の検閲や操作を拒否した」と書かれている。

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告発文では、国土安全保障省のキルステン・ニールセン元長官が虚偽の議会証言を行ったと指摘した

また、ニールセン元長官が2018年12月と2019年3月の議会証言で、国境で逮捕された、当局がテロリストと認知、あるいはその疑惑を持っていた人物について、故意に「虚偽の重大情報」を提供した疑いがあると指摘した。

マーフィー氏によると、2019年3月の証言に含まれていた数は水増しされたものだったほか、「虚偽の重大情報を故意に報告していた」という。ニールセン氏はこの証言から1カ月後、トランプ氏に移民政策が不十分だと不満を言われ、長官職を辞任している。

告発文ではさらに、クッチネリ副長官代理が今年5月、白人至上主義者による脅威について、「影響が小さく見えるよう」報告書を書き換えるようマーフィー氏に指示したと指摘している。

ウルフ氏とクッチネリ氏は一方で、反ファシズム運動を展開する「Antifa(アンティファ)」などの左派組織について、「トランプ大統領の発言に沿うように」、「情報分析を修正するよう」求めていたという。

アンティファは「Anti-Fascist Action(反ファシスト活動)」の略語で、ネオナチやファシズム、白人至上主義者、差別主義などに強く反対する抗議活動を指す。指導者などはなく、ゆるやかに連携する活動家たちの集まりだと考えられている。

トランプ氏は、今年5月に黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害された事件を受けて始まった抗議活動が、アンティファのせいで暴動に発展したと繰り返し非難している。

告発文への反応は?

ホワイトハウスのサラ・マシューズ報道官は、「アメリカの選挙にまつわる脅威やその他の問題について、オブライエン氏が情報機関に命令を出そうとしたことは一度もない。これに反する主張、オブライエン氏が会ったことも話したこともないという、不満のある元職員からの主張は全てうそであり、中傷だ」と述べた。

国土安全保障省もマーフィー氏の主張を否定。アレクセイ・ウォルトーニス報道官は、「マーフィー氏の主張に真実が含まれていることを全面的に否定する」と述べた。

一方、議会情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党)は、「徹底的に調査し、あらゆり不正や汚職をアメリカ国民の前に提示し、情報当局の政治化を止める」と語った。